103話 アイヌの宴と熊騒動
天文13年(1544年秋)――13歳
俺たち、敵じゃないからね。交易に来ただけ!
しかもちゃんと“適正価格”でやりますからご安心を。
しかも、初回特典付きでお得な取引、今だけですよ〜!
たしかアイヌの皆さんって、狩りが得意なんだよね?
なら、弓の腕なんか超一流のはず。……だからこそ言うけど、毒矢だけはナシでお願いします!
こっちは完全に友好モードですから! アイヌが平和の民だと信じてるよ!
ただ、心配もあるんだ。
渡島半島では、蠣崎のやつがアイヌさんに戦しかけて、日ノ本の評判ガタ落ちしてるからなぁ……うちと蠣崎は違うって分かってもらえるといいけど。
それに、俺たちの“日本丸”は、あいつらの乗ってるオンボロ船とは違う!
外見からしてもう違う! 中身も違う! 品も違う!
……あ、乗ってるメンツはちょっと怪しいけど、気にしないでほしい!
オヤジたちが現地の若者と、やけに馴れ馴れしく肩なんか抱いちゃってるけど……言葉、通じてるのか?
まあ、アイヌの人が大らかでよかったわ。こっちのノリにも笑って応じてくれる。なんか、俺もウキウキしてきた。
異文化交流っていいよね。旅の醍醐味だよ。
今回はご挨拶だけのつもりだし、難しい交渉もなし。だって、そもそも言葉が通じないしね。まずは仲良くなることが大事。でもさ……このままだと、交易の話に進めないよな。
なので申し訳ないけど、忍者数名は現地に“語学留学”してもらおう。
アイヌ語をマスターして帰ってきてほしい。
オヤジたちから手旗信号で「安全の確認が取れたので、お土産を持って上陸されたし」との連絡が届く。
よし、上陸だ。なんだかウキウキしてきたぞ。
こういうの、旅してる感があって楽しいな。
護衛の兵300人と、特殊部隊の半分――100人は船に残ってもらう。何があるか分からないからね。退屈かもしれないけど、観光じゃないからね、そこは我慢してほしい。
お土産は現地の人たちが笑顔で運んでくれている。俺たちはそのあとをついて、彼らの村まで森を抜けて歩いて移動。
木々の間から差し込む日差しが柔らかくて、思わずキョロキョロ。完全に旅行気分だ。
村に到着してびっくり。思っていたよりずっと広いし、しっかりした造りの家がたくさんある。
主に木と樹皮を使っていて、屋根は傾斜のある形で雨や雪に強そうだ。
丸太を組んだ家は質素ながらもどこか温かみがある。
広場のような場所もあって、薪が積まれていたり、干した魚が並んでいたりする。
生活感があるし、整理もされていて、正直ちょっと感心する。多くの村民が歓迎してくれているような気がする。村のみんなが笑顔だから、きっと歓迎されているよね。そういうことにしよう。
北国なので女性の皆さんは色白で美人さんが多いな。
歓迎の宴が始まる。こちらから持って行った焼酎は大人気だ。
お湯割りを教えると、持参した梅干しを入れて皆さん満足そうに飲んでいる。
お酒コミュニケーションは万国共通だ。
言葉がまったく分からなくても、身振り手振りでなんとかなりそう。
昆布とか鮭とか、どうやって説明すれば良いのかな。
まあ良いや、優秀な忍者さんたちに任せよう。
長老さんもニコニコして満足そうだから、大丈夫だよね。
昆布は絶対ゲットしたい。
我々のつまみには、燻製肉や鮭の干した物を提供してもらっている。
少し炙ってから食べると、すごく美味かった。
オヤジたちはムシャムシャガブガブ状態だよ。
長綱さんと小太郎さんも、俺の横でムシャムシャガブガブだ。
俺の横にはアイヌの美少女が座っている。
役得だけどお互い子供だし、言葉も分からないので進展はないのだ。
ところでオヤジたち。商売でここに来ているのを忘れてないよな?
手ぶらでは帰れないのだぞ。
宴もたけなわの頃、何だか村のみんなが騒ぎ始める。
オヤジたちと特殊部隊は「こりゃマズイ」と俺の守備体制をとる。
どうも俺たちを襲うのではないようだ。
話が理解らないながら、だんだんと状況が掴めてくる。
どうやらクマが4頭、こちらに向かっているようだ。
非常に危険な大型クマのようだ。
でもね、こちらには城も簡単に制圧できる特殊部隊がいるのだよ。
ライフルも拳銃も爆弾も持っている。
クマ20頭でも40頭でも、あっという間に制圧できるぞ。
しかも伝説級の忍者が4名もいる。
この4名だけでもいける気がする。
あれ。特殊部隊さん、もういない。動きが早いわ。
半数の特殊部隊に守られて半刻ぐらい待っていたが、
オヤジたちがニコニコ顔で、クマ4頭を担いで村に戻ってきた。
銃弾の音とか爆発音も何も聞こえなかったけど……どうやったのかな?
オヤジたち、風魔に良いところを見せたくて無理してないだろうな?




