第7話『言葉にできない、でも届けたい』
剣ではなく、言葉で。
ガルドが村で頼まれたのは「手紙の配達」。
だが、寡黙な彼にとって、それはちょっと難易度の高い任務だった。
「……ガルドさん、これ、お願いできますか?」
ミーナが差し出したのは、一通の封筒。
淡い桃色の紙に、小さな花のシールが貼られている。
「村の奥の農家に住んでる、ローザさんって人に渡してほしいんです。わたしが行けない日だから……」
「……了解した」
そう言って受け取ったものの――
ガルドは封筒を持ったまま、5分間その場に立ち尽くしていた。
(……この薄さで、投げたら風に飛ぶな)
(……ポケットに入れると、曲がるか)
(……握力で潰す可能性、あり)
慎重に両手で持ち、まるで魔法の巻物のように運ぶことになった。
目的地は、村のはずれの小道を抜けた先。
しかし、そこまでの道のりには――
「お、ガルドじゃねえか!その手紙、誰宛だ?」
「読んでみろよ!」
――という、悪ノリ村人(通称:ヒマ人たち)の妨害が待っていた。
「……これは、他人の心だ。俺の手では、開けない」
「わー……なんか名言っぽいけど、地味に感動する……」
そうして村人たちの茶々をかいくぐり、ようやく農家に到着。
「ローザさん、いますか」
「あら、ガルドさん?ミーナちゃんの代わりかい?」
老婦人は手紙を受け取り、小さくほほえんだ。
「……この字、昔の私にそっくり。きっと恋文ではないけど、大切なものね」
ガルドはうなずき、静かにその場を後にした。
帰り道。ふと、自分が誰かに手紙を書いたことがあったかを思い出す。
――答えは、否。
(……言葉は、口よりも、重い)
夜。
珍しく、ガルドは小さな紙切れを前にしていた。
手には鉛筆。ぎこちなく文字を書く。
『いつもありがとう。料理の味、少しずつ慣れてきた。ガルド』
翌朝、ミーナの枕元に、そっと置かれたその手紙。
彼女は読みながら、少しだけ顔を赤らめた。
「……こういうの、反則だってば」
言葉少なき男が、手紙で語る。
今回のガルドは、まさに“静かな優しさ”を届ける回でした。
次回は、まさかの“文化祭準備騒動”!
演劇、大道具、衣装作り……筋肉が活躍するのはどこ!? お楽しみに!




