第6話『イノシシは友か敵か、それとも晩メシか』
ガルド、ついに自然とぶつかる。
畑を荒らす巨大イノシシの出現に、村は大騒ぎ。
果たして彼は、獣と理解し合えるのか、それとも――焼くのか。
「ガルドさん、出たんです! また、あのイノシシが……!」
ミーナが血相を変えて宿屋へ駆け込んできた。
その後ろからは、畑を守るために必死な農民たちの声。
「やつは“鉄の鼻”って呼ばれててな……村の畑を根こそぎやってくヤツなんだ……」
「昨日はカボチャ畑が消えた……今朝は、にんじんが……ッ!」
「……それは由々しき事態だ」
ガルドは立ち上がった。
腰には剣――ではなく、巨大なスコップ。農民モードだ。
森の縁、にんじん畑の前。
確かに、地面には無数の引っかき跡と、ずんぐりした足跡が残っている。
そして――
「……来た」
ぶおん、と唸るような息づかいとともに、現れたのは――
明らかに人間サイズを超えた、モフモフの巨体。
「う、うわあ!でかい!」「あれ……鍋に入るのか……?」
「ガルドさん、どうするの!? 捕まえる? 追い払う? 肉にする?」
「話してみる」
「は!?」
ガルドは、そっとイノシシの前に立った。
「俺は……敵ではない。だが、にんじんを返せ」
「ぶぅ……?」
イノシシは、ピクリと耳を動かす。
――1分後。
「……なにこの光景……」
畑のど真ん中。
ガルドが無言でイノシシの背に乗り、にんじん畑を巡回していた。
「……敵意はなかった。どうやら、ただ腹が減っていたらしい」
「いやそうかもしれないけど、なぜ飼いならしたのか説明して……!」
「名前は……ムク」
「もう名前つけてるゥーーー!?」
ガルドとムクは、奇妙な信頼関係を築いた。
そしてその日から、畑の番はムクの仕事になった。
「ぶぅ!(見回り完了)」
「おお、ムク、にんじんが1本減ってるぞ」
「ぶぅ……(し、知らない顔)」
「……明日、筋トレな」
まさかのイノシシ、仲間入り。
ガルドにかかれば、野生も従う。筋肉と静かなカリスマの勝利です。
次回は、村の“手紙配達”を頼まれるガルド。
言葉少なき彼が綴る、不器用であたたかな“手紙回”をお楽しみに!




