第3話『筋肉は一日にしてならず、だが三日で筋肉痛』
村に溶け込むガルド。今度は、子どもたちからのお願い――「強くなりたい!」
筋肉は裏切らないが、教育にはちょっとコツがいるらしい。
「ガルドさん、オレたちに筋トレ教えてくれよ!」
村の広場で遊ぶ少年たちが、キラキラした目でそう叫んだ。
どうやら村の子どもたちは、ガルドの“鍬を折る握力”や“素手で耕す筋力”に心を奪われたらしい。
「筋肉は、一朝一夕で得られるものではない」
「うんうん、知ってる! でもオレたち、夏までに腹筋割りたい!」
「お、おれは“背中で語る”男になりたいっす!」
なぜか筋肉に夢を見始めた子どもたち。
その情熱に押され、ガルドは静かにうなずいた。
「……よし。ついてこい」
そして始まった、“ガルド式筋肉錬成塾”。
まずは基本のスクワット。
「――百回」
「ひゃっ!? ガルドさん、何かの間違いでは……?」
「いいや。筋肉に妥協はない」
少年たちは震えながらスクワットを始める。
3回目で悲鳴、10回目で白目、30回で一名が消えた。
「ガルドさん、トレーニングって、楽しいものじゃないんですか!?」
「楽しいかどうかは、筋肉が決める」
少年たちは何も言えなくなった。
その後も続く腕立て、体幹トレーニング、背負い投げ(?)など。
最終的に彼らは、草むらで魂を抜かれたように転がっていた。
「……ガルドさん、これは……鍛錬じゃなくて修行です……」
「いい筋肉痛になる。明日も、同じ時間に集合だ」
「え、えぇ~~!?」
しかし――三日後。
彼らの背中はほんの少しだけ、たくましくなっていた。
「ねぇガルドさん……オレさ、昨日、妹の荷物持ってあげたら『かっこいい!』って言われた」
「オレも! 鍬がちょっと軽く感じた!」
「……それが筋肉の力だ」
ほんの少しの変化が、少年たちの顔を自信に変えていく。
「また、やるぞ」
「うん!」
笑顔で答える少年たち。
ガルドは小さく頷きながら、ふと空を見上げた。
かつて、自分が鍛えられたあの日々。
今はもう、守るためじゃなく、繋げるための筋肉なのかもしれない。
「……次は、持ち上げ訓練だ」
「それはやだぁぁぁ!!」
村の子どもたちにも筋肉が伝播していく――それは希望か、地獄か。
ガルド式トレーニングは厳しさ満点。でもその厳しさには、優しさがある。
次回は、ガルドと村の“料理大会”!
ついに筋肉以外の戦場が始まる!?お楽しみに!




