第2話『鍬は折れても、信頼は折れない』
村の平穏な日常のはずが、筋肉で次々と村の道具を破壊するガルド。
今度こそ、ただの畑仕事――のはずだった。
「……三本目、か」
ぽきり。
乾いた音を立てて、鍬の柄が折れた。
ガルドはそれを無言で見つめ、隣にいた農夫のハンスじいさんがそっと顔を覆う。
「……あんたなあ、なんで毎回、柄のほうが負けるんだい」
「俺にも、わからん」
土は柔らかかった。むしろ絶好の畑日和だった。
だが、鍬を握ったガルドの筋力が、一般人の“全力の八倍”だということを、誰も考慮していなかった。
「これは鍬のほうに問題がある。強度が足りん」
「いや、普通の人間はそんな壊し方しないからね!?」
ハンスじいさんは頭を抱えた。
鍬は村の倉庫に残っていた最後の一本。もう補充が利かない。
「……なら、自分の手で掘る」
「え、ちょ、いや、さすがに手で畑を掘るのは……」
がっ。
ハンスの静止もむなしく、ガルドは両手で土を掘り始めた。
ゴリ、ザク、ゴリ、ザク。
まるでモグラのような勢いで地面がえぐられていく。
「速い……っていうか深いッ! それ畑じゃなくて穴になってるよぉ!?」
作業終了後。
ガルドが“畑”と呼んでいた場所は、もはや小さな地下倉庫のようになっていた。
「……どうだ、これで作物も守れるな。敵が来ても落ちる」
「いや戦闘想定しないで! ここ、戦場じゃなくてトマト畑なんですよ!」
それでも、村の若い衆は口を揃えて言った。
「でもさ、ガルドさんの本気作業って、ちょっと感動するよな」
「まじで地下要塞できてた……」「うちの畑もお願いしたいかも……」
不器用だけど真面目なその働きぶりが、少しずつ村に受け入れられ始めていた。
ガルドは少しだけ口元をゆるめ、今日の“戦果”を振り返る。
「……土、柔らかかったな」
「違う意味でな!!」
鍬3本を犠牲にし、最後は素手で畑を耕したガルドさん。
でも、どこか人望が育ってきてるような……?
次回は、村の子どもたちに“筋トレ”を教える回です。
果たして筋肉は教育になるのか!?お楽しみに!




