第14話『おかゆと看病と、最強に不器用なやさしさ』
ある朝、ミーナが倒れた――
慌てる村人たちの中、
看病を任されたのは、最も不器用な優しさを持つ男・ガルドだった。
「ミーナが……熱を出して倒れたんだ!」
村の子どもが駆け込んできたのは、まだ朝日が登りきらぬ時間。
昨夜の冷え込みで風邪をひいたらしい。
「しばらく動けないらしくて……ミーナの代わりに宿のこと、見てくれる?」
「……了解した」
ガルドはうなずくと、まずミーナの部屋を訪れた。
「……入るぞ」
「ガルドさん……? えっ、なんで……?」
ミーナは顔を真っ赤にして布団にくるまっていた。
「……頼まれた。看病を」
「な、なんでよりによって……あっ、でもありがとう……」
(この人、看病とかできるのかな……)
ミーナの不安は的中した。
──第一の挑戦:体温測定。
ガルド「……この金属棒(体温計)は、どこに刺す?」
ミーナ「刺さないで! 脇に挟むの! 挟むだけ!」
──第二の挑戦:おかゆ作り。
鍋の中、米と水をじっくり煮込むはずが――
「時間がかかる。火力、上げる」
「上げすぎィィィ!! それおかゆじゃなくて餅粥の刑!!」
鍋が吹きこぼれ、部屋に立ち込める焦げた匂い。
だがそれでも、なんとか食べられるものを完成させた。
(※食感は“粘土寄り”、でも味はわりとマシ)
「……食べろ」
「……うん、ありがとう。……がんばってくれたの、わかるよ……」
──第三の挑戦:看病の時間。
ガルドは、ベッドの横で椅子に座り、ただじっと、じっとミーナの様子を見ていた。
「……ガルドさん、そんな見つめなくていいから、寝てていいですよ……?」
「……寝るのはお前だ」
「わ、わかってるけど、その真顔で言われるとプレッシャーが……」
数時間後。
ミーナがうつらうつらとまどろむころ、ふと毛布の重さが変わった。
目を開けると、そこには――
そっと折りたたまれた“あの毛糸マフラー”が、かけられていた。
「……ありがと」
声は届かなくても、その行動で伝わる。
ガルド流の、静かで不器用なやさしさだった。
戦いより難しい“看病”。
ガルドの手からはみ出す優しさが、少しずつ形になってきました。
次回は、“村のバレンタイン騒動”!
ガルド、まさかのチョコレートづくりに挑戦!?どうぞお楽しみに!




