表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

夏祭り

「ほら、大地も。一緒に踊ろうよ」

「ああ……」


 俺も海の上に砂浜から乗っかる。

 海の上は、変な感触だった。

 海水は柔らかく。揺れ。足腰が不安定になる。 


「これは踊りには、うってつけだ!!」

「ああ、海の上で踊るの最高ーーー!」


 俺たちは海の上で、朧気な姿の踊る人々や神輿を担いでいる人々と、陽気に踊った。 最初、踊りなんて知らなかったけど、みんなの動きを真似した。鯛もそうだった。


 朧気なみんなの踊りと、祭囃子に合わせて、俺と鯛は踊った。


 高波、大波、荒波、つむじに、潮風に乗って、秋田竿燈まつり。鳥取しゃんしゃん祭。徳島阿波おどり。日向ひょっとこ夏祭り。馬関まつり。山形花笠まつり。博多祇園山笠。高知よさこい祭りなど、昔に一度は行ったことがある賑やかな景色が、俺の脳裏を順々に横切っていく。


 もう、小一時間経ったかな。


 少し疲れて。ふと、俺は踊りを止めて花火が気になった。見上げてみると、巨大な花火が打ち上げられたようだ。ヒュルヒュルと、空に昇っていく音がとても痛快だった。


「お! これは期待!」


 俺は空を見上げた。

 ドーーーンっと、特大の大きい音が空で鳴り響いた。


 そして、パラパラと色とりどりの火花が落ちていった。


「綺麗だなあー」

「お、花火か!」


 鯛も俺も踊りで少し疲れていたので、海の上にあるかき氷の屋台へ向かった。蜃気楼のように朧気な店員は、金を払うと、ニッカと気さくに笑った。

 

 屋台の傍に、竹でできたベンチがあって、そこへ鯛と座る。


 こんな厚い日だ。かき氷は、一気に食べると、頭がキーンっとするからいいんだなあ。


 しばらく、鯛と一緒にかき氷をバクバクと食べていると、声を掛けられた。


「隣。いいですか?」


 浴衣姿の綺麗なお姉さんだった。

 団扇片手で、かき氷を持っていた。


 何故かこの人だけ。姿が朧気じゃないんだな。

 俺は綺麗なお姉さんから、目を逸らしてそっぽを向いた。


「あ、いいッスよ」


 鯛がニッコリと竹のベンチで空きを作る。


 俺は綺麗なお姉さんを見て、鼻の下を伸ばしている鯛の頭を叩くと、かき氷を口いっぱいにかきこんだ。


「かき氷。美味しいね」

「ああ、美味しいッスね!」

「……」


 俺はそっぽを向いたまま、かき氷をひたすらにかきこんでいた。 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ