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1-1

「お、おう!」

「まずは、旅館から出ようぜ!」

「お、ああ。大地は踊らないのか?」

「はあ、お前寝ボケてんだろ!!」


 鯛の奴を連れて、この部屋のドアを開ける。

 廊下はとても暗くて静かだった。


 祭囃子は、階下から聞こえる。

 廊下を二、三歩歩いて、気が付いた。

 階下からでないと、出入り口がないんだっけ。


「とりあえずは……うーん……祭り見てみようか?」

「お、おう」


 俺は鯛を連れて、階下へと向かった。 

 

 ドーン……と、打ち上げ花火の大玉が空で弾ける音がした。

 それから、ザワザワと火花が落下する音がしている。

 

 きっと、外は色とりどりの火花が落ちているのだろう。

 そういえば、俺たち以外の人がいない。

 同じ部屋にいるはずの戸田や酒井や深川もいない。


「ちょっと、怖いけどこれは夢だと思おう。さあ、外へ行くぞ! 祭りだ! 祭りだ!」

「いや、大地? 外は海だったぞ。どこで祭りなんかやってるんだ?」

「……あ。確かにだなあ……」

「なんか、マズくないか? これ。俺は夢じゃないような気がしてくるんだ」

「確かにだなあ……まあ、深く考えるな。きっと、夢の中だよ」

「お、おう」


 俺たちは広い階段を降りて、玄関を目指した。

 土産店や自動販売機を横切ると、正面に靴が雑多に脱ぎ捨てられた玄関がある。


 玄関の外は、祭りでごった返している音だ。

 音響のあるスピーカーからの祭囃子で、鼓膜と心臓が振動するかのようだ。


「俺も踊ろうかな?」


 鯛がぼそりと言った。


「あ、俺も……」


 玄関を開けると、そこには海の上に屋台に、神輿に、浴衣姿の人々がいた。みんな踊っているみたいだった。


 いや、でも変だ。

 みんな蜃気楼のように姿が朧気だぞ?


「これなんだ?」

「やっぱり、夢かー。なんだよ、夢なんだよこれは」


 玄関先は砂浜だった。

 広々とした海の上は、祭りで輝いていた。 


「踊ろう」

 

 鯛の奴が開き直って、海の上を歩き出した。


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