3 三人目
僕の名前は峰 隆起。そんな僕の学校生活は地獄だ。
登校して初めに起こることと言えば黒板けしを僕に投げつけてくることだ。
周りからの挨拶は飛んでこない。寧ろ笑い声が殆どだ。
学校なんて行きたくない。
でも、それでも僕は行かないといけないんだ。
「何でアンタ毎日来てるのよ……。アンタの顔を見るだけでホントに吐き気がする。私以上に生きてる価値がないわよ」
そう言って僕に向かっていろいろと放り投げる。
彼女の名は美月さん。
顔が整っており、クラスの男子からは人気者だった。
だからだろうか。我がままになってこのクラスの女王様になり好き放題するようになった。僕を虐めるのもただ自分が快楽を得たいだけだろう。
口の端は吊り上がっている。
暴言の嵐も収まることも知らない。
どうせ何も考えずに言葉を発しているんだろうと思う。
言葉のナイフの切れ味も知らない子供じゃないか。
「あ~、あんたを虐めてるとすっきりするw。そう思わない?裕也?」
そう言って自分の隣にいた男に同意を求めた。
そいつは美月さんの彼氏だった。校則なんてまったく気にしない男で、先生に毎日反抗している。先生も思うように動けなくなった今の時代、彼を止めるすべは少ない。
「確かにw。気持ち悪い顔してるもんな。俺らが整形してあげないといけないレベルだ」
僕は悔しくなる。当然だ。虐められる自分と、何も変われない自分が余りにも情けないから。
いつか自分の力で復讐してやりたい。そう思ってる。
なぜこんな必要ないプライドがあるのか。
それは僕の過去に兄がいたことが原因だ。
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僕の兄はとてもすごかった。
常に弱者であった僕をどんな時でも守ってくれたからだ。
姿は裕也という男に似ていたが、正義感のある憧れのような存在だった。
いつかあんな風になりたいと思っていたんだ。
僕も弱い人を守れるように……と。
そしていつか兄が困ったときは僕が助けて恩返ししてあげるんだと思っていた。
しかしそんな兄は突然死んでしまった。
原因は交通事故。兄が無免許運転していたことがいけなかったんだ。
僕は泣いた。すべてを失った気がした。生きる気力さえも。
だけど兄が僕に残してくれていたものがあったおかげで今も生きていける。
それはただの写真だ。
僕が泣いているときに後ろからよしよしと慰めてくれていた、一枚の写真だった。
何気ない写真だと思えるが、僕には大きな生きる活力になってくれた。
僕みたいな人はこの世の中にたくさんいる。
兄が与えてくれたものを僕が泣いている子に与えないと、それでは兄がかわいそうだろうと。
あの時、幼いながらも考えた。
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「明日から学校こないでよ~」
美月さんは僕に向かってそう言う。
それでも僕は、毎日学校に行く。
だって僕が学校に行かなかったら多分次のターゲットが生まれるから。
僕が受けている醜態は僕が受けるだけで十分なのだ。
我慢するんだ。
兄とは方法は全く違うけど、人を守りたい。
心のうちで青い炎を燃やす。
完結です