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『第3回 下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞』シリーズ

今宵も時計が10時を指す〜ベランダでキミとランデブー〜

作者: 佐藤そら
掲載日:2021/12/02

 4月から大学生になる僕は、アパートに越してきた。

 人生初めての一人暮らしだ。

 僕の部屋は205号室で、一方にお隣さんがいる。

 昼間チャイムを鳴らしたが、返答はなかった。

 

 『隣に引っ越してきました、時澤朔ときざわさくです。よろしくお願いします』

 メッセージカードとタオルをポストに入れた。

 

 ひと段落した時には、時計の針は10時を回っていた。

 僕はベランダに出た。夜空に月が出ている。

 ふと、ベランダの仕切り板越しに人の気配を感じた。

 いつの間にかお隣さんが帰宅していたようだ。

 

「あ、あの……」

 

 僕は思わず、仕切り板越しに声をかけてしまった。

 

「はい」

 

 小さな女性の返事が聞こえた。

 

「あっ、あの、今日から隣に引っ越してきた、時澤朔です!」

 

「キミは、大学生?」

 

「はい! あ、4月から!」

 

「同じだ。わたしは204の青羽(あおば)こころ。よろしく」

 

 ここはラッキーな引越し先だった。

 僕の鼓動は高鳴った。

 

 

 今夜も時計の針が10時を指した。

 僕はベランダへ飛び出す。

 彼女の足音がした。

 

「やぁ、こころちゃん」

 

「何?」

 

「大学で、どんなことしたい?」

 

「そうだなぁ、恋がしたい」

 

「ちょ、こころちゃん!」

 

「ねぇ、キミ。今夜も月が綺麗だよ」

 

 彼女に惹かれるのに時間はかからなかった。

 僕は今日も、時計を見つめている。

 別に約束をしているわけじゃない。

 でも彼女は、毎晩同じ時間にベランダに現れる。

 たわいもない会話を僕としてくれる。

 彼女はいつも、僕のことを「キミ」と呼ぶ。

 それがどこか心地よくて、何故だかそれは、僕だけを呼んでくれている気がしていた。

 

 

 大学が始まり、忙しない毎日が始まった。

 僕は大学での出来事を彼女に話した。

 でも、彼女は僕の話を聞くばかりで、自分のことは口にしなかった。

 そして、僕はまだ、彼女の姿を見たことがない。

 

 

 そして、その瞬間は突然やって来た。

 隣の玄関の扉がガチャッと音を立てた。

 彼女が、彼女が出てくる!

 僕は息を呑んだ。

 

 扉が開くと、想像とは全く違うおじさんが姿を現した。

 おじさんは僕に会釈をし、立ち去った。

 首には僕がポストに入れたタオルが巻かれていた。

 僕はその場に立ち尽くした。

 

 おじさんが現れた理由を考えた。

 まさか、彼氏!?

 だとしたら年上すぎる!

 なら、彼女のお父さん!?

 

 

 扉には203とある。

 あれ?

 彼女は確か204と……。

 

 

 204号室は存在しなかった。

 

 


 今日も時計の針が10時を指す。

 僕は声だけのキミに今日も話しかけた。

 

「月が綺麗だね」

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― 新着の感想 ―
[一言] 時計のお題ですね いいですね “イケボ”に読まれるのにピッタリ!!(*^。^*)
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