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第1話




今日、会社をクビになった。


どうやら私は会社の金を横領した挙句部下の手柄を横取りして自分の手柄にしていたらしい。もちろん、そのようなことは誓ってやっていない。おそらく私の昇進を快く思わない勢力が仕組んだことなのだろう。


私がいくら否定しても聞く耳を持たなかったことから、案外みんなグルなのかもしれない。


ふと、比較的仲良くしていた部下達の顔が思い浮かんだ。あいつらも加担していたのだろうか、私はあいつらにまで裏切ら・・・


「もう考えるのはやめよう・・・」


小さくそう呟く。


これ以上この件について考えていると頭がどうにかなってしまいそうだった。しかし、心とは裏腹に自分の中で黒い考えがプスプスと存在しているのも事実だった。


そこからのことはあまり覚えていない。気がつくと公園のブランコに1人揺られていた。顔を上げると、雲の隙間から一番星が顔を覗かせている。


思えば、これが初めての挫折というやつなのかもしれない。私、米田よねだ 米助よねすけは生まれてから33年間ずっと一番だった。いや、幼い頃に父、母が死に、祖父母の家に預けられてから、というべきか。


祖父母は良くも悪くも「古風な人」で、剣道道場を開いていた。そこに半強制的に入会させられてた私は小、中、高、大学生で日本一になったし、勉強も、「何事も一番では無いと意味が無い」という祖父の教えにより学校では絶対誰にも負けなかった。


就職してからもそうなるとばかり思っていたが・・・


とりあえず帰ろう。ブランコを降りて軽く砂を払う。


私はどこで、何を間違えたのだろうか。そんなことを考えながらゆっくり歩いていると


「危ないっ!」


突然、叫び声が聞こえたので何事かと思って振り返ると声の主は若い女性だった。明らかに私を見ている。何故だろうと不思議に思い周りを見渡すと、なるほど。私は信号を無視してしまったらしい。まったく、いつまで悩んでんだ私。早く戻らないと。一歩足を踏み出す。そこから急に世界がスローモーションになった。さっきの女性だけでなく皆が私の方を見ている。もう一歩足を踏み出す。そこで横からトラックが向かって来てることに気がついた。急がねば、そう思ってもう一歩踏み出そうとしたその瞬間、私の身体は吹き飛ばされていた。そこで私の思考は途絶えた。







◇ ◇ ◇





ん・・・?


ここはどこだ?身体が軽い。ここは、病院?私は助かったのか?


"誰かいませんか〜!"


声が出ない!?これではお医者さんが来るのを待つしかないか。


そうして5分ほど待っていると医者と言うにはやけにくたびれたおじいさんが入ってきた。


ああ、良かった。お医者さん!私、目が覚めましたよ!


おじいさんはどんどん近付いて来る。


あれ?このおじいさん中々大きい人だな・・:


おじいさんはどんどん近付いて来る。


え?ちょっと待ってめちゃくちゃでかい!顔だけで10メートルはあるぞ!


たしかに、改めて周りを見渡すと山のように高いちゃぶ台に水族館の大水槽のようなコップ、さらには私よりも遥かに大きい箸が一膳と規格外のものばかりだ。


私の前に座った彼は「いただきます。」と一声掛けて目の前の巨大な箸を持ち上げた。


…箸?いただきます?


!?


こいつ、私のことを食べるつもりだ!逃げなきゃ!ちくしょう身体が動かない!クソっ!離せ!離せよ!


そんな私の(心の)叫びも虚しく、私を摘んだ箸は無慈悲にもこの巨人の口に運ばれていった。


目の前が真っ暗になった





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