第十三話:華麗なる剣技
今日の体育の授業は、剣術だそうだ。
剣術と聞くと優雅な雰囲気がして、何だかワクワクしてくるのは、男の性みたいなもんだな。
例えばほら、歴史物の映画みたいなものが思い浮かぶからね。
今日は俺のクラスと、プリエルのクラスとの合同で行われる。つまり母さんもいるわけだ。
……余計な事をしなきゃ良いんだけど。
◇
俺達は体育館でクラス毎に別れて、先生が来るのを体育座りで待っていた。
ガラッ!!
廊下に繋がる扉が開かれて、一人の男性が現れた。俺達は立ち上がる。
「やぁ皆、おはよう」
爽やかな笑顔で男性は親達に挨拶をしてくれた。
「おはようございまーす」
「さて、まずは僕の自己紹介からさせてもらうよ。私はミカエル、天使長ミカエルです」
天使長ミカエル?
また凄い天使が現れたぞ。
「今日は皆に、剣術を教える事になったので宜しく。練習用の剣を用意しているので、これから一人一人に配ります」
何処からともなく天使達が現れて、俺達に剣を配ってくれた。
「皆さんに配ったのは練習用なので、切れる事はありません。ですが当たるとタンコブは出来るし痛いので、怪我には十分注意して下さい。もしもの時は、ラファエル君に立ち会って貰うので、タンコブが出来た人は直ぐに治療して貰って下さい」
ミカエル先生の軽快な話で皆が笑う。
ミカエル先生が手で示す所には、艶々とした長髪にたおやかな笑顔を湛えながら、手を振っているラファエル先生がいた。
ラファエル先生って女性なのかな?あれ、そもそも天使に性別は無かったんだっけ?
「怪我の手当は任せてください。でも出来るだけ怪我しないように、気をつけて下さいね」
見た目だけじゃなく、声も透き通った女性の様だ。
何だか手当されてみたい気持ちが出てきてしまう。
配られた剣は西洋式で、束には金色の豪華な装飾が施されていて、刃は鋭く光っていてとても軽い。
どう見ても本物にしか見えないんだが、本当に練習用なのだろうか?
恐る恐る刃に触れてみると、確かに切れる事はなさそうだ。
一体どういう作りなんだろう。
「まずは……、そうだな、剣術を知らない人もいるだろうから、一つ披露させて貰おうか。ジャンヌ君」
「はい」
突然、ミカエル先生の前に膝をついた女性が現れた。
「紹介します、彼女はジャンヌ。ジャンヌ・ダルクです」
ジャンヌは静かに頭を下げた。
わぁぁぁぁーーという声が、特に女子達から上がった。
伝説の聖女が現れたんだから当然だ。
しかもカッコいい登場ときた。
「一つ私の相手をしてくれるかな」
「畏まりました」
二人が剣を構える。
二人が構えてるだけで様になっている。
服装はジャージなんだが。
二人が少しだけ腰を落とした途端、距離を詰めて激しい打ち合いが始まった。早い!!
ミカエル先生がジャンヌの攻撃を受け、弾き、打ち返す。
ジャンヌも負けじと、ミカエル先生の攻撃を素早くかわし、反撃を行う。
距離を話した後に再び詰め寄り、鍔迫り合いが始まり、そして互いの剣を弾いた所で終わった。
「まぁこんな所かな」
「ありがとうございました」
生徒達から歓声と拍手が贈られた。
「いきなりこれをやれというのは難しいから、君達にはまず私とジャンヌで基礎を教えていくからね」
良かった、あんなスーパーバトルをするのは絶対に無理だと思ってたので一安心だ。
その後はミカエル先生とジャンヌ先生の指導を受け、基本的な剣の扱い方を教えて貰った。
「ふいー、結構疲れるもんだね。腕が怠くなっちゃったよ」
「構えるだけでも腕の筋肉を使いますからね」
「やっぱりエリエルは、ミカエル先生から指導を受けたりしたの?」
「えぇ、一通り教わりました。でもやはり天使長は凄いですよ。太刀打ち出来る者は一人もいませんから」
「やっぱりそうなんだね。ミカエルっていうと、先陣を切って敵に立ち向かう勇敢なイメージがあるもんね」
「そうですね。正に一騎当千の如くですよ」
「悪魔も尻尾を巻いて逃げるだろうな」
「はははっ、上手い事言いますね伊佐也さん」
隣で黄色い歓声が上がったので見てみると、プリエルがジャンヌ先生に手合わせをして貰っている。
「へぇ、プリエルもなかなかやるもんだね。さすが天使」
「あの子も剣術の指導を受けた事がありますからね。力は余り無いのですが、その代わり手数で補う戦い方が得意なんです」
やだ華麗でカッコいい。
女子がキャーと言ってしまう気持ちが分かるわ。
「うん、言いセンスですよプリエル。これからも鍛練を忘れないようにね」
「ありがとうございますジャンヌ先生」
俺も鍛練を積めば、キャーと言われる事はないだろうが、いつかは様になるんだろうか?
「ギャーーーーーーーー!!」
体育館に男の悲鳴が響き渡った。
もしやサタニエルの母さんの時のように、悪魔がやって来たのか!?
……犯人は母さんであった。
恐らく手合わせをした相手をコテンパンにしたんだろう。相手は目を回し、大の字で倒れている。
「もー張り合いがないわね、他に相手してくれる人はいないの?」
「おい母さん、少しは手加減しないとダメじゃないか。これ以上犠牲者を増やすなよ」
「あら伊佐也が相手してくれるの?なんて親孝行なのかしら」
そう言い剣を投げ渡された。
「え……?いやそうじゃなくてだな」
「よーし行くわよー!!」
「は?いやいやいやいやいやいやいやぁーーーー!!」
パッコーーーーーーン!!
バットの様に豪快に吹っ飛ばされた。
剣の使い方、間違ってません…?
「情けないわねえ、もっとしっかりしなさいよ」
「む、無理だっ……て」
俺は力尽きた。
「やれやれ。ラファエル君、プリエル君。すまないが彼らの手当てを頼むよ」
ミカエル先生が呆れ顔で言った。




