魔王様は、ずっと気になっていたようです?
やっと、魔王様の登場です。
魔王様視点ですよ。
この生き物は、なんなのだ???
神達は、「母親」と言っていたか…。
私には理解できない存在だ。
この「母親」という者は、自分の「子」という者に
何度となく屠られているにもかかわらず
その「子」を恐れる事も憎む事もなく
変わらず愛し、己の身を犠牲にする事を厭わない。
ふとした拍子に「子」に腕を引きちぎられた事もあったか…。
また、突如襲って来た魔物から、咄嗟に「子」を庇い命をおとす所も目撃した。
「子」の方が、魔物よりも遥かに強いと言うのに、
この「母親」にとって、「子」の存在は異世界へ来る前と少しも変わっていないのだろう。
無条件に愛し、守るべき唯一無二の存在…か。
ふと、興味が湧いた。
そして思った。
この「母親」ならば私を愛してくれるのではないか?
と…。
基本的に魔族には、産みの母と言うモノが存在しない。
時折、魔力が集約されて生成されるのだ。
それは、一瞬で終わる時もあれば、何年もかけて
行われる時もある。
稀に異種・異性同士が交配し、子をなす事もあるが
総じてでき難いので、そうして生まれる者は、
極めて数が少ないのだ。
数が少ないが故なのかその個体は、皆とてつもなく強い事で知られている。
斯く言う私も先日、生成したばかりだ。
前任の魔王は、先日、
大規模な魔術実験に失敗して、
その結果とんでもない事を引き起こしたらしく、
神達にその責任を問われて、力を封印されたうえ
期限なしの幽閉になっている。
魔族に神はいないので、その統治、管理は魔王が行なう事になっている。
そして前任の後を継いだのが、私と言う訳だ。
私の出自は少々変わっているので、ここでは
語るまい…。
話しを戻そう。
何故か解らないが、あの「母親」の事が気がかりでならない。
守られるべきなのは、あの「母親」の方だろう?
あれ程までに儚く、傷つきながらも「子」を守る姿は
庇護欲をそそる。
側に居たい。あの髪に口付けたい。肌に触れたい。
柔らかな身体を抱きしめ、これ以上
傷つく事がないように。
彼女の心が疲弊し、壊れてしまわぬように。
真綿でくるむように…守りたい。
何故かそんな事ばかりが頭をよぎる。
どうしたと言うのだ、私は…。
精霊達と同様に、彼女の持つ空気のようなものに
惹きつけられているのか?
彼女の周りの空気は独特だ。
側にいるだけで温かい何かに包まれているようで
不思議と癒される。
私は、彼女の側に居よう。
いや、彼女の側に、居たいのだ。
愛がどういうものかは、わからぬが
私の持てる全てを使い、
全身全霊をかけて、守る。
その為には、『会議』とやらに
参加しなければなるまい。
あぁ、もうすぐ側に行ける。
私が守るから
私が側にいるから
だから…
どうか壊れないで。
お読みくださり有り難うございます。
遅筆で申し訳有りません。
お楽しみ頂けますように。