これから始まる兄妹ストーリー
プロローグ
あの日の出会いを思い出す。
俺は、幼稚園の年中になったばかりだった。
俺にたった一人だけの妹が産まれたのだ。
「妹にやさしくしてあげてね」
母がとても優しく言った。
「もちろん。僕、妹となかよくする」
そう答えた。
母は、笑顔を見せた。
これが、最後に見た母の笑顔だった。
母は、妹が産れて数日後に亡くなってしまった。
父も、俺が中学二年の時になくなってしまった。
その後、妹と二人で暮らすことになった。
でも、それから一言も話していない。
第一章 「気持ち」
高校二年になった、四月のある日。
リビングで、テレビをみていたら、
ガチャ
リビングのドアが開いた。そこには、妹が立っていた。俺は、妹に目を向けた。
妹と目が合った。でも、「おはよう」の一言もない。笑顔も見せてはくれない。それどころか、睨みつけてきたのだ。
これが、三年も続いている。妹と俺の二人の状態なのだ。
兄の俺は、高校二年の十六歳の、
山内 祐一
俺は、別に目立って何かができるわけでもない。平凡な男。でも、ひとつ周りとはちがう。俺は、自分の妹が大好きだ。シスコンなのだ。
妹は、中学一年の十二歳の、
山内 小鳥
ルックスは完璧。絵に描いたような美少女だ。でも、俺は今の彼女の性格はわからない。
仲が良かったときは、とても性格もよくて文句なしのパーフェクト美少女だった。
今は、この兄妹の二人で暮らしている。
俺は、妹のことがいつも気になっているが話しかけるのが怖くて声をかけることができないのだ。
妹は俺のこと、どう思っているのか知りたい。
でも、いつも話しかけるか考えているうちに妹が冷蔵庫から食べ物と飲み物を持って出て行ってしまう。そして今日もだ。
こんな事を考えながら三年間同じ家で暮らしているのだ。
明日こそ……明日こそ……と思っているが、なかなか話しかけることができない。
どうしたら、話しかけていいのかわからない。
「おはよう、今日は何をするんだ」
いや、こんなんでいいのか…
「普通すぎるだろー! 」
いや、これでいいのか?
「わかんねぇーー」
いくら考えたって仕方ないか。
今日は、友達と遊びに行く日だから、とりあえず今日は妹のことは考えないで楽しむとしよう。いや、無理だ。やっぱり妹のことが気になる。なぜなら、俺は妹を愛しているのだから。
そんな事を考えながらも、友達との待ち合わせ場所に向かった。
考えながら歩いてたからか時間ちょうどに着いたのだ。
それから、十五分は待った。
今日も、待ち合わせに遅れるのか。あいつの人を待たせるクセどうにかしてくれないかな。
「よう! 待ったか? 」
こいつは、
俺の中学からの同い年の友達で、
海崎 晃大
中学の時から、遅刻の常習犯で有名だ。
「相変わらずだな、お前」
「うっ・・・」
「まあ、いいや。行こうぜ! 」
「おう」
二人でいつも行くファミレスに向かった。
「なあ、晃大。お前は妹と何を話してるの? 」
晃大にも、妹がいて仲良し兄妹と有名だ。
あと、俺の妹と晃大の妹は親友だそうだ。
「うーん。何を話すって、考えたことないな。普通に、日常会話すればいいんだよ」
「難しい事を簡単に言うなよ! 」
晃大は、笑った。
日常会話か・・・。妹と。
頑張ってやってみるか。
「雄一・・・。おーい雄一~」
「あっ、悪い。考え事してた」
「雄一って、どんだけ妹のことが好きなんだよ」
「お前には、言われたくないな」
二人して笑った。
こんな話をしながらいろいろな事をした。
「じゃあな、晃大」
「おう、じゃあな雄一」
ガチャ
「ただいま」
いつものことながら返事はない。
やっぱり、話しかけるとか無理じゃね。
と思いながらリビングに入った。
リビングに、入ると妹がいた。
テレビを見ていた。
このタイミングで話しかけないで、いつ話しかけるんだ!
「よう、ただいま」
妹は、俺のことを睨んだ。
「ちっ...…」
そんな、アドバイス通りにしたはずなんだけどな。
「いきなり話しかけるとか、何なの?やめて!!」
「えっ。そんな……」
「キモイ、氏ね」
そんなことを言ってリビングから出て行った。
結局、こうなってしまう。
これが、三年ぶりの会話になってしまった。
会話といえるのか微妙だが。
やっぱ、こうなってしまうのだ。
妹に、話しかけることはできたが会話として成り立ったとは言えないだろう。
「日常会話って言われても、挨拶しただけであの仕打ちだからな」
俺は、妹と会話がしたいから、いろいろ考えてみた。でも、俺は妹の趣味や最近好きな食べ物も知らない。ようするに、何も知らないのだ。だから、話す内容が見当たらない。
「どうしたらいいかもうわからないよ」
そんな独り言を言っていたら、
ブーブーブー
電話がなったのだ、
相手は、晃大だった。
「小鳥ちゃんとは、話せたか? 」
「ダメだったよ。ただいま、って言っただけなのに、氏ねって言われたよ」
「それは、話せたって言う? 」
「一葉、言葉を交わすことはできたよ」
「正直、話せたとはいえないな。俺の妹から聞いたんだが、実は小鳥ちゃんがお前に対して氏ねって言ったことを後悔しているらしいぞ」
・・・・・・
俺の妹が、そんな事を言ったのか……
そんな事があるのか、俺の妹が……
事実だとすれば話すチャンスはあるかもしれないぞ!!
「おーい、聞いてんのか雄一」
「すまん、すまん。俺の妹に限ってそんな事があるのかと思ってな」
「本当だよ。さっき、SNSでの会話をこの目でしっかりと見た」
「そ、そうか。ありがとな晃大」
「おう、またな」
「またな……」
まだ、俺は半信半疑だった。晃大が俺の事を気にかけて言ってくれただけなのではないか。いや、もし今の話が本当だったら妹と話す機会が来るかもしれない。
そんな事を、期待していた。
そんな時だった。
ギィィィ
ゆっくりとリビングのドアが開いた。
そこには、妹が立っていた。だが、いつもと少し様子が違った。いつもだったら、このタイミングで睨んでくるはずだが、目が合っても睨んでこなかった。
おかしい……。明らかに、おかしい。
俺は、深呼吸をした。そして、勇気を振り絞って「どうしたんだ?お前らしくないじゃないか。」
「何よ。いきなり、いい兄貴ずらしちゃってさ。気持ち悪い」
「なんなんだよ。俺は、お前のことを考えて言ってあげたのによ」
「私のことを考えて? 馬鹿じゃないの」
「そうだよ。俺は、馬鹿だよ。いつも、小鳥のことを考えてるよ。気がおかしくなりそうなくらい。それくらい、妹のお前がすきなんだよ」
妹は、赤面した。そして、そのまましばらく黙り込んでしまった。
どうしたことか、ほんとにいつもの小鳥らしくない。
「小鳥? 」
小鳥は、やっと話し出した。
「ほんとばかだね。お兄ちゃんは」
その言葉を、残してリビングから出て行った。
俺には、今何が起こったかわからないのだ。
お兄ちゃんって、言ったのか?俺は、しばらく何もできなかった。
小鳥が、俺の事をお兄ちゃんと呼んだのはいつぶりだ。
そんな事を考えていたら、翌日の朝になっていた。 「やべー、朝かよ。一睡も出来てない」
そんな事を言っていたら、妹がリビングに入ってきた。
「ばかだね。お兄ちゃんは。妹の事を考えてたら寝れなかったとか、どんだけシスコンなの? 」
俺には、その質問に答える余裕がなかった。
小鳥が、自分から声をかけてきただと……。ありえない、これは夢だ。そう思った俺は、頬をつねった。
「痛い……」
どうやら、現実らしい。
「お兄ちゃんって、そういう趣味なの? 」
「ちがうよ……」
いつもの切れのあるツッコミをする余裕もなっかた。
だが、俺は小鳥に聞きたいことがあった。
その質問は、自然と声に出ていた。
「俺に、自分から話かけてきたのは何で? 」
小鳥は、笑った。
「今まで、お兄ちゃんと向き合ってこなっかたけど、これからは向き合っていこうと思うんだ。お兄ちゃんが、そうしてくれたようにさ」
俺は、泣いていた。うれしかったんだ。
妹と、こうして話ができて、お兄ちゃんと呼んでくれることが。
「なんで泣いてるのよ」
「うれしいんだよ。こうして、小鳥と話ができて」
小鳥は、笑った。
そして、俺も笑った。
こうして、山内家の新しい生活が始まった。
はじめまして、森林 翔大です。今回は私の作品を読んでいただきありがとうございます。初作品なので、ダメなところもたくさんあると思います。そのときは、どんどんダメ出ししてください。皆さんの、コメントで作品がどんどん良くなっていくと思うので。これからもよろしくおねがいします。
第二章もお楽しみに!!!