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天使は襲わず、激しく愛でるだけにするべきだ

なんとか次の日に投稿できました

少年を撲殺されるピンチから救った犬耳少女は少年の胸に顔をうずめて擦り寄っていた。その姿はまるで犬がこれは自分の物だと示すために自分匂いをつけてマーキングをしているようにも見える。


「おにぃ〜さま〜」


「あぁ……もう俺、萌え死んでもいいかも……」


とても幸せそうな顔をしている少年。だかその顔は幸せすぎるせいか少し白目になっていて、本当に昇天寸前だった。


「兄さんから離れてください、レミ。このままでは兄さんが帰らぬ人に……」


「ぼうりょくするから、めっ、だよ〜」


雪芽からレミと呼ばれた少女はヒイラギ・レミ。その名字の通り少年と雪芽の家族関係にあるものの、血縁はない。深い理由は後に語るとして、簡単に言ってしまえば雪芽とはとても深い関係にある。この三人は小さい頃から時を共にし、仲はそれほど悪くない。むしろ、とても良い方だ。


「しませんよ……それに、レミ……これは暴力ではありません」


「そうなの〜?」


「はい、これは暴力ではなく調きょ……教育です」


「今一瞬、調教って言いかけなかったか?」


「気の所為です」


そう、仲は悪くない……はずなのだ。だがしかし、もう少しレミが助けてくれるのが遅かったら、少年は今頃雪芽の奴隷にされているところだったかもしれない……さらっとこういう会話が出来るのだから、仲は悪くないと無理そう思うことにする。まぁ、ニーソにすりすりしていいならそれもありかもしれないと少年は変わらず考えていた。


「っ……ま、また何かえっちなことを考えましたね、兄さん」


「ちょっと待ってくれ、正誤を確認する前に鈍器を振り上げるのはおかしくないか!?」


だんだん雪芽の察知能力が高くなりすぎてお兄ちゃんは悲しいと思うものの、これも成長してきた証なんだと思うと少し嬉しい気もしてくる。小さかった頃は……と昔が良かったと思う気持ちと、今の義妹も可愛い義妹だと思う気持ち。兄心は複雑なようだ。


「む〜……だから〜ぼうりょくは、めっ!」


「だからこれは暴力ではないと……」


「めっ!」


「で、ですから」


「め〜!」


「……わ、わかりました」


雪芽に顔を近づけて威圧するようにして無理やり丸め込めたレミ。雪芽もレミの力業には勝てなかったらしい……この三人のパワーバランスは基本、無邪気な押しに弱い雪芽を真ん中に無邪気パワーを全開にするレミが一番上。雪芽の暴力と圧力に屈する少年を一番下としている。兄の面目丸潰れなのはこの際気にしない。さらに付け足すとするならば、レミが一番上に君臨する理由は他にもある。雪芽と違い同い年にしては未発達な幼児体型、そしてその幼児体型に見合った純粋な精神。その姿は言いようによっては天使と言える……その天使力こそが何者にも侵されない天辺にいる理由だと、少年は思っている。



「うぅ……何故かレミには適いませんね」


「えへへ〜おにぃさま〜」


「おっと……ぶふっ!?」


少年に強く抱きついてすりすりと甘えるレミ。あまりの可愛さに鼻血が出そうになったが、ここで襲うと雪芽が怖いので撫でるだけで我慢しておく少年。ここでもやはりパワーバランスは健在である。少年も本当に襲いはしないにしても激しく愛でられないのは残念で仕方がない、と少年は悶々とした気持ちのままレミの頭を撫で続ける。気持ちよさそうに撫でられている姿を見ていると、まぁこれでもいいか……と思ってしまうから不思議なものだと思う。


「それにしても……レミはどこから入ってきたのですか? ドアが開いた気はしませんでしたが」


「んぅ〜? あそこの窓からだよ〜?」


キョトンとした表情で部屋についている窓を指さすレミ。何気ない一言のように聞こえる言葉に、雪芽は頭を抱え、少年は微笑ましいと言うかのような表情でレミを見ている。


「レミはドアから入室する癖をつけましょうよ……」


「というか、よく俺達がここにいるってわかったな」


「えっへへ〜それはもちろん、匂いだよ〜」


「さ、流石はレミですね」


えっへんと胸を張るレミ。匂いで人の居場所がわかるなんて、ありえないと思う人かほとんとだろう。実際、普通に考えれば無理だが……レミならそれが可能なのである。人間よりも嗅覚が優れているという犬型の獣人族であるレミならば。だから犬耳と犬尻尾がついているわけである。少年は昔、小さい頃から犬耳プレイとはまた斬新な……と思いウキウキしていたらしいが、取り外しの出来ない犬耳と尻尾によって獣人族であることを知り、ショックで寝込んでしまったのは実に少年らしい出来事だろう。


因みに獣人族についてはまたどこかで語ることもあるので、ここでは省くとする。今は人間にケモミミと尻尾があるという認識でいいだろう。少年の認識で言うならば、萌え要素の権化である。


「おにぃさま〜」


「ん、なんだ?」


レミが少年の制服の袖をくいくいっと引っ張り少年の名前を呼ぶ。身長差もあってか、上目遣いに見えてしまうため、その姿はとても愛らしい。それこそ上を見上げて甘える犬の如き姿に一体何人の男がノックアウトされることだろう。それから少年が返答すると、少し少年から離れて自分の脚、つまりは美しい縞ニーソを履いた脚を指さした。


「わたしのにーそ、どう?」


「素晴らしいと思うぞ、水色と白の縞ニーソはある意味貴重だし、その貴重かつ萌え要素の塊であるレミが履いた結果、さらに縞ニーソの萌えとレミのもともと萌えが重なって萌えの相乗効果を生み出している……ほんっと……ニーソは最高だぜ!」


「よくわからないけど……にあってるってこと?」


「あぁ、すっごく似合ってるぞ!」


「えへへ……よかったぁ」


ここまででわかるように少年はニーソが大好きなのである。大好きというより、愛してる……という発言の方がしっくり来るほどにニーソ依存症なのである。一日にニーソに触れない日があると次の日には唸されてしまうほどに……さらに少年の中にはニーソが好きな人のことをニーサーと呼んでいるらしく常時ニーサーを募集している。話は戻るが少年に褒められてとても嬉しそうに笑っているレミ。垂れている犬耳をぴこぴこ動かしながら尻尾を激しく振っている様は何度も言っているが、萌えの権化と言っても過言ではない。


「にぃさまにぃさま」


「なんだい、俺の天使よ」


「ちょっと待ってください、いつからレミは兄さんの天使になったんですか」


「もちろん、目と目が合った瞬間からだぞ」


「ひっとめっぼれ〜」


「何を言ってるんですか兄さんは……それにレミまで」


疲れた様子で溜め息をつく雪芽。雪芽曰く、レミと少年のコンボのボケは自分ひとりじゃ捌ききれないということを今までの人生で痛感したらしく、二人が絡んで言ってくる時は内容にもよるが無視するようにしているらしい。その方が疲れないから……と、優等生ながらに妥協点を持つようにしている。そのせいとも気づかずに疲れているということには気づいている少年は……真面目にすることも大事だが、体を壊したら元も子もないだろうに、と無駄に兄さんらしい心配をする。高校生活ではなるべく固くならずに楽しく過ごして欲しいものだ。と、兄心ではそう思っている……そう思える心があるのならもう少し真面目に生きようという、気は……もちろん存在しないのだが。まぁもし、本当に疲れてどうしようもなくなった時は……


「俺がベットの上で慰めてやるからな、雪芽」


「兄さんの脳内では先程の数十秒で何があったんですか……」


「あれ? 逆効果だったか?」


少年は相も変わらず言い回しがおかしい。実際にベットであれやこれやをするつもりなのかはこの際気にしないようにしようと思う雪芽であった。それでも疲れることは疲れるので、疲労の色を隠せずに項垂れる雪芽、少年は自分の判断が間違っていたんだろうか。う〜ん、やっぱり女の子はミステリアスだ、とミステリアスは少年の頭の中だということに気づかない変態である。少年は頭の中でさらに考える。義妹とはいえ流石に女の子、やっぱり慰めるなんて上から目線ではダメだったのかもしれない。今度は抱くくらいの男らしさをださなければ……とさらに変態思考が冴えている。



「なんだかまた兄さんがおかしな事を考えているような気がしてならないんですけど」


「おかしな事?」


「いえ……もう、なんでもないです」


「そ、そうか」


雪芽は既にここまで来ると諦めモードに入る。黙っていた方がこの際自分の精神安定にもいいと判断したからである。もしかしたらあの日なのかもしれないが、それを聞いたらまた怒られそうなので黙っておこう、俺だって怒られたくて変なことを言っているわけではないからな、と少年は配慮をしていた。確かに言っていたら鈍器で叩かれるのは容易に想像できるものの、そこまで気を利かせられるのならまず最初から変な発言をこと控えようとはしない。少年曰く、ただ俺は可愛いものを可愛いいと言って、好きなニーソを好きといっているだけなのだから。らしい、やはりただ欲望に正直な変態である。


「にぃさまってば〜」


「おっと、すまない。そういえばレミは俺に言いたいことがあったんだったな」


「そうだよ〜」


「言いたいことってなんだ?」


少年がそう聞くと、レミは少年の方をじっと見つめて顔を近づけてくる……なるほどキスか。出来れば雪芽がいないところでやりたいんだが……後が怖いから、と勝手に自己決定をする少年。でもレミがここでやりたいと言うのなら尊重してあげるのが男って物だろうかと男らしいかは別として少年は少年で心配をする……レミの一生の思い出になりかもしれないキスだし、ソフトな方がいいだろうか、それとも恋人がするような熱いものがいいのだろうか。


……やはりこの少年、ただの変態のようだ。


「にぃさまは〜」


「ん? お、おう」


潤った綺麗な唇だと判断できるほどの近さで話し始めるレミ。キスだと思ったが違うらしい……少しショックなような、ホッとしたような、そんな心境な少年。だが、ドキドキしているのは変わらない。いくら幼児体型とはいえ、ニーソを履いていて、且つ美少女に迫られればドキドキしない男はいないだろう、と自分の価値観の元に心臓がいつもよりも早く鼓動を打っていることを感じながらレミの言葉に耳を傾ける少年。


「わたしのこと〜あいしてるぅ?」


「は?」


「へ?」


まさかのエンディング目前のセリフを言うレミ。予想の斜め上の発言である。好き? と聞かれるのならまだ予想はできるかもしれないが、まさかの……愛してる? である。ギャルゲーなら間違いなくエンディング間近で、この後胸を熱くさせるキスが待っていることだろう。レミはここら辺は大胆な子のようだ。とはいえ、あまりの展開の早さに少年と雪芽。確かに少年とレミは小さい頃、小学生くらいからの付き合いで、告白をされるフラグを建てていたなら仕方が無いかもしれないと内心ドキドキしている少年……だが流石に雪芽がいる前で好きかどうかを尋ねてきたことには驚きを隠せないようだった。


「あいしてるぅ……?」


「え、えっと……」


これは本気の告白なのかといつも以上に真面目に考える少年。いつもの少年なら愛してるよっと軽く返しているところだが、女の子からの告白……つまりは少年からするのではなく、相手からはは初めてだから本気なのか、スキンシップのつもりの告白なのか、判断に困っていた。ここで助け舟を出してくれるのはいつも真面目な少年の義妹、雪芽なのだが……


「じ〜……」


すごく真剣な顔で少年を見つめていた。これはどういう意味なのだろうかと少年は頭の中で思考をフル回転させる。つまりこの雪芽からの視線は、レミのことを愛しているかどうか答えて欲しいという視線のように少年は感じていた。


とてつもなく長く感じられるような無言の時間が過ぎ去っていく。少年に真剣な眼差しを向ける二人の少女、そして冷や汗をかいている少年。いつもは軽くボケている少年もこういうシチュエーションは初めてなのか内心軽いパニック状態に陥っているようにも見える。こればっかりは少年に合掌を送りたい気分になってくる。


一体なんなのだろうか、と少年は思う。この状況を打破したいがその術を知らない少年はただひたすらこの状況に心の中でツッコムしかない。大抵こういう時は少年を懲らしめる時か笑いを取るパターンのはずだが、雪芽とレミの表情からすると本気で言っているように感じる。ここまで来ると少年は自分をむしろ辱める方向でも構わないとすら考えていた。物語が始まって数文字でヒロインの好感度MAXという状況に、少年の思考は追いつかなくなってきていた。


「お、俺は……っ!?」


突如、少年以外の全てが塗りつぶされたように真っ黒になる。そこは音もせず、風も吹かない。ただ無限に闇が広がっていた。


「雪芽っ! レミっ! どこに行ったんだ!?」


少年は必死に二人の名を叫びながら、ただ真っ黒な、道あるかどうかもわからない場所をひたすら走る。


「雪芽〜! レミ〜! おわっ!?」


走り続けていると少年の体が浮遊する。浮遊……というよりも落下という方が正しいかもしれないが、周りが黒一色のため本当に浮遊しているように見えてしまう。そして少年はそのまま闇の底の底まで落ちていった。



**



「うあぁぁぁぁぁぁ!? ………って……夢、か」


少年が目覚めるとそこは暗い一室だった。六畳間くらいのその空間には、ベットや机、少し小さめの本棚などが置いてった。


「それにしても……変な夢だったな。レミはともかく……雪芽はあんなにいい体してたっけか……」


少年の目の付け所はやはり変態じみているが、その雰囲気は先程のものとは違う。暗く、悲しげな雰囲気を纏っていた。そしてなにかに気づいたような顔をした後、自嘲気味な笑みを浮かべてベットから立ち上がる。


「なるほど……俺の願望が見せたIfの未来ってことか……」


少年は小さなテーブルに近づき、その上に置いてある一切れの紙を見る。そこにはとある学校のパンフレットの紙。そこの端っこにはとある少女の写真があった。


「天才少女現る……か」


その紙には大きく天才少女の文字が書かれ、一人の少女がまるで客引きパンダのごとく紹介されていた。


「まったく……あの老いぼれどもは何も考えているんだろうな」


苦虫をかみつぶしたような表情をした少年は、小さな冷蔵庫からおもむろに飲み物を取り出す。その飲み物は午後ティー……ある意味、少年にはいろいろと思い出深い飲み物だ。


「んっ…んっ……ふぅ、やっぱり午後ティーは最高だぜ」


午後ティーを飲みながら、少年はそっとカーテンと窓を開ける。すると外から月明かりが差し込み、少年の姿を照らす。少年の真っ黒な黒髪には寝癖がついていて、目は鋭い目つきをしていた。その瞳には光が少なく、まるでこの世の全てに期待をしていないようにも見える。


「さて、と……さぁ、世界を正義ニーソに染める時間の始まりだ」


少年は月を見上げながらさらに目を鋭くした。


この瞬間、今まで壊れたように止まっていた時計がまた動こうとしていた。そう、今まで枯れていた一輪の花がまた咲こうとしている。


ニーソ好き少年、ひいらぎこうの物語が、今……始まろうとしていた。


「おい、さっきからいろいろ言ってるけど、次回から視点は俺視点だからな」


…………


「おい、無視すんな三人称」


はい、なんでしょう。


「だから、次回からは俺視点で進むからな。そこんこと忘れんなよ?」


柊幸……この少年はやはり自分勝手の変態のようだ。仕方が無いので暫くの間は幸に視点を明け渡します。そう、暫くの間は……ね。




次回もなるべく、近いうちに投稿できるように頑張るよっ

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