ニーソは愛するもの義妹汁は飲むべきだと少年は語る
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夜、墓地がたくさん集まっている所の中心に一本の桜が咲いていた。その桜は一本、ただ孤独に咲いていた。風によって聞こえる木の囁きは寂しく聞こえ、月明かりが墓地と桜を照らしていた。
「君は……」
少年は桜の幹に手を当てている少女を見つめて、無意識に呟く。
「……」
少女は少年を見つめ返す。その少女は寂しそうな瞳で少年を見つめていた。そしてその少女は特殊な姿をしている。
その少女には、獣のような耳と尻尾がついていて、風とともに瞳と呼応しているかのように寂しそうに揺れた。
**
そこは豪華な品々が揃う一室……
そこには長机を挟んで二人の少年と少女がただならぬ雰囲気で椅子に座っていた……
部屋には緊張感が走る。
少年はゆっくりと立ち上がり……そして
「ニーソはこの世で一番素晴らしい物である!」
少年は机を両手で叩きながら、少し興奮した様子で血走った目のまま語る。
「なるほど……取り敢えず警察に連絡しましょうか」
「なんでそうなるんだ!?」
徐にスマートフォンを取り出して操作をはじめる少女。慣れた手つきで電話をする。その番号は言うまでもなく百当番……その行動に一切の迷いがなく、少年のことを本当に警察送りにするつもりらしい。
「もしもし……警察ですか? 実はここに変態が」
「ちょっと待てぇぇぇぇ!!」
少女からスマートフォンをひったくるようにして奪う少年。その表情からは必死さが滲み出ている。
「すみません間違えましたっ!」
スマートフォンに向かって大声で叫んだ後、勢い良く通話を切りスマートフォンを机にそっと置く。その眉間には皺が寄っていて、眉毛はぴくぴくと上下に震えていた。そして少女の方をジト目で見る。
「……何か俺にいうことはないか?」
少女はスマートフォンをポケットにしまい、少年の方に体を向けた。そして溜息をつき、少年を見る。
「残念です。もうちょっとで兄さんを警察署に連れて行くという名目で抹殺し、この世から一人……変態を除去出来そうだったのに……」
ものすごく残念そうに語る少女。
「は、謀ったな!?」
「なんのことでしょう」
悪びれることなく視線を逸らす少女。だがその口元は少しニヤけており目は笑っている。その表情はとても楽しそうだ。
「くっ……まぁいい、俺のニーソ愛はこんなことでは揺るがない」
拳を握り締めて力強く宣言をする少年。その志を曲げない心は素晴らしいが、その志の内容のせいで色々と台無しになっている。この少年、色々と残念だ。
「はぁ……仕方ありませんね、そうなってしまったら何を言っても聞く耳を持たないと思いますし……いいですよ、特別に聞いてあげます」
「聞いてくれるのは嬉しいが、その偉そうなのはどうにかならないのか?」
少女が足を組んでいるのを見て少年が聞くと、少女はキョトンとした顔をした後……にっこり笑った。
「私が兄さんのような変態の話を聞くんですから、これくらいはあって然るべきだと思います」
こんな言葉を真剣に言える少女はある意味質が悪い。相手を罵ることを目的とせずにただ自分の思ったこと、それ事態が相手を打ちのめす言葉なのだ。それこそが真性のSというものなのかもしれない。潜在的S……自分がSであることを自覚することなく相手を罵る。だから少年は少女のことを昔から危険人物と認定しているのだ。
「わ、わかった……取り敢えずは納得することにする。だが……これからは俺のターンだっ!」
高々に拳を振り上げた後、席に座る。一呼吸おきながら目を閉じ、そして勢い良く見開いた。
「ニーソ……それは即ちオーバーニーソックス、又はサイハイソックスのことを指す言葉であり、女性の太ももまでを覆い素肌と違う色のニーソを履くことによって美脚が強調され、わずかに腰に近い部分の太ももが見えること……つまりは絶対領域により自然にそこに目がいく。そこがとても色っぽくて男の心をくすぐるんだ。そして履き口のゴム部分による太ももの圧迫がありその圧迫具合もとても魅力的だ……それから」
「ちょ、ちょっと待ってください……まだ続くんですか?」
少年が話している途中で少女が止めに入る。その表情には既に疲れの色が見て取れる。
「何を言ってるんだ? まだこれからニーソの種類とか魅力をさらに語るんだから、後五時間は楽に超えるぞ?」
何を言ってるのかと言わんばかりの表情をしながら言う少年。愛もここまで来れば過剰もいいところである。
「すみません、私が悪かったです……出来れば続きはまたいつかにしてもらえないでしょうか」
少女は少年に頭を下げる。口調も先程よりも丁寧になっていることから、もう既に限界が近いことを示している。確かに、一般の……しかも女性がニーソの魅力を淡々と語られているのだから、心労はかなりの物だろう。この少女、真性……そして潜在的Sではあるものの少し打たれ弱いようだ。
「そこまで言うなら……仕方ないな」
体の力を抜いて脱力する少年。どうやらお願いは聞いてあげるようだ。少年はなんだかんだ言って優しいようだ……だが変態である。
「ほっ……」
ほっとした少女はゆっくりと席を立ち、お湯をティーポットに入れる。その動作は慣れたもので、その姿も凛々しく美しいと少年は眼福と言わんばかりの表情をしていた。そして何を思ったのか、少年は手を挙げる。
「俺にも紅茶入れてくれないか?」
「えっ……?」
少女の手からカップが落ちていく。その落ちていくティーカップはとても高級そうなカップで、実際、一つ三万円もするようなものなのだ。
「ダ、ダイビングキャァァッチィィ!」
少年は滑り込み、ティーカップを間一髪手のひらでキャッチする。そして一回転して勢いを殺しティーカップを傷つけることなく無事に起き上がる。だがその表情は必死な形相で息も荒くなっている。
「あ、危なかった……危機一髪だったぞ」
「あ、ありがとうございます、兄さん」
未だに驚きを隠せないというような表情のまま、少年にお礼を言う少女。少年は疑問に思ったのか、ティーカップをテーブルに置いて少女の方を向いた。
「そんなに驚いて一体どうしたんだ?」
「え、えっと……兄さんは昔から、午後ティー以外認めないって言って普通の茶葉から淹れる紅茶を飲もうとしなかったので、少し驚きまして」
「あぁ……俺だって普通の紅茶を飲みたい時だってあるさ」
「そうなんですか……」
少女の顔が驚いた表情から少し変わり、どこか見直したような表情に変わる。その表情は穏やかで先程からの表情とはまた違うが、それも少女らしい一面の一つである。
「あぁ、だって……合法的に義妹汁を飲むことが出来るんだからな!!」
「少しでも見直した私の気持ちを返してください、この変態」
「あっはっは! それは酷いぞ、マイシスター」
「それから、さっきから息が荒いですね。意味もなく発情する現代の若者ですか、イヤらしい……」
「それは本格的に酷くないか!? 誰かさんがティーカップ落とすからだろ!?」
「に、兄さんが紅茶を飲みたいなんていうからです」
「り、理不尽すぎる……」
現実とは常に理不尽なものである。
ちなみに、ジト目で少年を見ながら慣れた様子で罵倒する少女。この少女は何を隠そう少年の義妹、柊雪芽である。少年の言葉を付け加えるのであれば愛しい妹……だそうだ。雪芽は言い終わって満足したのか、目の前に置いてあるカップを行儀よくに持ち上げ、部屋全体に香っている香りを放つ紅茶を飲む。その姿を見ながら少年はふと考える、ちなみに血は繋がっていないから結婚はできるのか……ふむ、いいなそれ。
見境ない変態である。
因みに雪芽は美少女だ。銀髪の髪を黒いリボンでツーサイドアップにしているのと、整った顔立ちはきっと誰もが美少女と賞賛し、崇め奉るだろう。それに加えてもっとも評価するべきなのは雪芽が履いているレースの付いた白いニーソだ。銀髪と合わさって高貴な輝きを放っているニーソ。それに包まれている脚はもう神の領域に達している、と少年は思っている。
はぁ……雪芽の脚にすりすりしたい。と少年は心の中で煩悩を全開で暴れさせる。
「うっ……何故か悪寒が」
そういいながら雪芽は自分の手で自分を抱きしめるように手を交差させ自分の二の腕を掴み、少し上下にさする。寒さが和らぐかは別として、気分的にこうした方が楽になるかと考えていた。
「風邪か? よし、俺が人肌で暖めてやろう。さぁ……服を脱ぐんだ」
少年は両手を広げ、優しい声で囁く。その少年の方を見ながらそっと優しく微笑む雪芽。その微笑みは天使のように美しく、人を魅了する要素で溢れていた。しかし、その内側には微笑みとは裏腹の感情が身を隠している。
「なるほど、兄さんはそんなに三途の川に行きたいんですね」
先程の天使の表情のまま、どこからか分厚い本を取り出し自分の頭よりも高く振りかぶって今にも少年に叩き付けようとしていた。
「待ってくれ、雪芽。どこかで見たことあるような分厚い某ライトノベルを振りかぶるのをやめるんだ。それは読み物じゃなくて鈍器なんだから」
「わかっててやってますから」
雪芽はニッコリと微笑みながら、どこかで見たことあるような某ライトノベルをゆらゆらと揺らす。それはやばい、分厚すぎる。流石の俺も読むのを途中で諦めたくらいのボリューミーな品物なのに。と少年も心の中でかなりの生命の危機を感じていた。
「だめだよますた〜」
少年が命の危機を感じていると、横から可愛いい声ととも少年に抱きついて雪芽を咎める垂れ犬耳と尻尾を揺らした桜色のボブカットの髪をした幼い少女。そして脚には水色と白の縞ニーソ……ふむ、いいセンスだ、と少年は心の中で頷く。
そして、その幼い少女は少年を見ると無邪気な表情で微笑んだ。
それは天使のような微笑みだったと、少年は後に語った。
平均文字数をなるべく五千文字くらいにしていきたいと思います。次回は早く投稿できるように頑張ります