プロローグ
そして少女は、世界を眠らせた。
≪プロローグ≫
じゃらり、じゃらりと耳障りな金属音が石壁にぶつかって反響する。僕はもう聞きなれてしまった音だが、前を行く衛士たちは違うらしい。
「さっきからうるせえなあ。ちょっとは静かにしろ」
「無茶言うな。こいつ手足に枷はめてんだぜ?」
「わかってるよ…。でもお前、鍵渡されてるよな?逃がしてやれよ」
「嫌だね。なんたって獣人にはこの姿がお似合いだからな」
そして、二人そろって下卑た笑い声をあげた。僕はうつむいたまま耳を伏せ、不快な声に耐えながら衛士の後に続く。
こんな仕打ちにも慣れている。が、それでも沸々と湧き上がってくる激情を抑えこみ、僕はどうにか理性を保ちながら自分の手元をじっと見つめた。
鈍色の鎖。
僕らを束縛するために作られたこの鎖は、そこらのものより何十倍も頑丈らしい。これで手足の自由を奪っているから、目の前の衛士たちは呑気に笑っていられるのだ。
(……でも、こんなもの)
壊そうと思えばいつでも壊せる。力の限り引っ張れば、鎖は木端微塵に砕け散るだろう。僕にはその確信があった。
なぜなら、僕は、
「おい、獣人。着いたぞ」
突然目の前の衛士が立ち止り、僕を振り返った。
「俺たちはここから先への立ち入りを許されていない。お前だけ入れ」
そう顎でしゃくられた扉に、僕は無言で歩み寄った。ひきずられた鎖が鈍い音を立てた。
王の城。王の庭。その奥にある、古びた塔。
その天辺の、小さな扉。
それがどこへ繋がる扉なのかも知らず、僕は取っ手に手をかける。
ぐっと力をこめると、扉は軋みながらゆっくりと開いていく。
隙間から差し込んだ淡い光は、僕の姿を柔らかに照らし出した。
真っ赤に燃える、狼の姿を。
ここまで読んでくださってありがとうございます(*`・ω・´)
近いうちに本編に入りたいと考えていますので、その時にまたお付き合いいただけると幸いです。




