表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

海へ行こう! 後






那音露姫「海だぁ〜!」


優弥「はしゃぐな!!」



バスを乗り継いで辿り着いた南区海岸。

パラソルを建て、陣地を確保し、水着に着替えた面々の中で那音と露姫は早くも海に向かって駆け出す。

優弥が一喝しても聞きゃしねぇ。


梅松「…夏も終わりなのに暑いなぁ〜…」

神楽「…テレビでやっていた異常気象というやつか…どちらかというと神の力が弱まっているせいのように感じるが…」

梅松「は? なんだって?」

神楽「いや、こちらの話………大丈夫か?」

玄太「………」

梅松「あ〜…ボックスティッシュ…持参か…」


梅松と神楽が後ろで膝を付く同級生に…気が付いた時は既に噴射後だった。

宇都宮玄太…隣のクラスな彼は本日サーフィンをする為に同行して来たのだが…。

パーカーを着ている水着姿の那音ですらこの様らしい。

神楽がえらい真剣に「出血が激しいのに海に入るのは危険ではないか?」と心配しているが、宇都宮は横に首を振る。

大丈夫と言いたいらしいが全然大丈夫に見えない(生命的な意味とは別に)


那音「宇都宮、また貧血?」

梅松「(貧血!?)…え、あれ、もう上がってきたのか? 那音…」

神楽「(貧血…?)…そういえば露姫はスクール水着じゃないんだな」

露姫「(貧血なんて那音騙されたのかしら? バカねぇ…)やーねー神楽、学校じゃないのに本当に着るわけないじゃない。そんな鼻血野郎ほっといて早く遊ぶわよ! 梅!」

梅松「うっ…わっ」


と、連行されていく梅松。

まあ、あの二人は恋人同士…引き留めるのは野暮というものだ。

そうなると残されたのは泳げるけど泳ぐの禁止な那音と不機嫌な優弥、不謹慎な宇都宮と海での遊泳が初めてな神楽…というちぐはぐな四人。

那音の生足に目線を釘付けにされた鼻血野郎こと宇都宮に気付いた優弥がブチ、と青筋を立てて刀を取り出す。

…一体いつも、どこに隠し持っているのだろうか。

ギョッとしたのは那音だ。

慌てて野球友達を守ろうと優弥の前に立ちふさがるが、それがまた腹立たしく感じる優弥にとっては逆効果。

いつもなら梅松が優弥を宥めるので傍観放置していた神楽が、今ばかりは仕方ないかと優弥を止める。


神楽「とりあえずサーフィンというので決着をつけたらどうだ?」

那音「決着ってなんの!? え!? 優弥と宇都宮なにか勝負してたの!?」


…やはり慣れない事をさせるものではない。

そもそもそんな大事に発展していなかったのに、決着をつけるなんて言われればその気になるのが男という生き物である。

無言でサーフボードをレンタルしに行く二人。

そんな二人を見送る焚き付け役と自覚のない景品。








那音「…優弥サーフィンやったことあるのかな…」

神楽「宇都宮も今日初めてなのだろう? フェアで良いのではないだろうか」



全然良くない。



というかなにを以て勝ちとするのか。

初心者に恐ろしい事をさせるものである。



神楽「…ところで那音、あれはなんだ? 今日は夏祭りではないんだろう…?」

那音「え? あぁ、あれは海の家」

神楽「海の家? …住んでいるのか?」

那音「違う違う。夏の間だけああして海で遊ぶ人をもてなす商売をやってるんだよ。行ってみる?」

神楽「……ああ、それじゃあ…」


熱々のカップルと熱々の宿敵勝負をスルーして、那音と神楽はのほほんと海の家巡りに行く事に。

9月に入っているとはいえ連日の残暑で海の家はまだまだ最盛期と言った様子だった。

夏休みが終わっていても本日は土曜日休みという事で若者も多い。


那音「優弥にジュース買ってこう!」

神楽「露姫たちにも買って行ってやらないとうるさいんじゃないか?」

那音「あ…うん…。そだ、じゃあ焼きそばとたこ焼きも…あ、ラーメン! ああ、ソフトクリーム美味そう…っ」

神楽「…成る程、海の家というのは休憩所の役割も担っているのだな」

那音「あはは、うん! そうだな」

神楽「………ところで気のせいか…?」

那音「いや、気のせいじゃないと思うけど」

神楽「……早く戻ろう」

那音「そだね」


東雲学院高等部五本指に入るイケメンが二人並んでいればそりゃ人目も引くだろう。

ここに優弥が居ないだけマシか。

しかし二人でも十分な注目度。

那音的には神楽が優弥並に格好いいからだろうなぁと、他人事に考えているが断じてそんな事はない。

まさか逆ナンはされないだろうと楽観的に考えて那音も神楽もとりあえず飲み物と食べ物を人数分、数種類買って建ち並ぶ海の家を後にしようとした。


「ね〜、君たち高校生?」

「二人で来たの? 一緒に遊ばない?」

那音「友達が待ってるんで。すみません」


焼けた肌にビキニの女子大生風。


「ねぇねぇ、あたしたちとビーチバレーしない? 人数足りなくてぇ」

那音「すみません、友達待たせてるんで」


いや、絶対人数足りてんだろ。

と言いたくなるような六人組女子高生風。


「地元の子? 私たち旅行で来てるんだけどさ~」

那音「すみません、急いでるんで…」


浮ついたOL風四人組。

…立て続けの逆ナン。

四回目ぐらいになると大分面倒くさくなってくる。

それ程距離はないはずなのに非常に遠く感じる陣地。

荷物番そっちのけで来てしまったので、早く帰らなければならないのだが。








「兄さんたちモテるね〜、どーよ俺らとナンパ巡りしない? 入れ食い状態になっと思うんだよねぇ」

那音「荷物番あるんで…」


まさか男にまで声をかけられるとは思わず心底げんなりした顔で那音が断りを入れる。

そりゃ神楽のような長身美形が同行してたら女の子なんかいくらでも釣れそうだ。

ガタイはいいが随分チャラけた風の男四人から早々に立ち去ろうとしたが、道を阻まれる。


「…じゃあさっさと帰ってくれねぇかなぁ? ライバルが多いのも困るんだよね〜」

那音「………」


そんな事を言われても、神楽も自分も女子をナンパしたくて歩いていたわけではない。

喧嘩は嫌いだし、肩の治りきっていない那音は神楽を困惑気味に見上げた。

無表情の中に明らかな嫌悪感。

見下したような色を帯びた瞳に「あ、ヤバいなこれは」と困り果てる。


那音「…神楽、暴力は…俺…」

神楽「ん? …ああ、分かっている。加減を間違えると殺しかねないからな…」

「はぁ? なんか聞こえたか?」

「ああ、なんかすげぇ余裕聞こえたなぁオイ」

「やんのか? てめぇ」

神楽「……」


止めておいた方がいいよ、と那音は心の中で男等に言う。

口に出すとただの挑発にしか取られないからだ。

だがそれは挑発などでなく心からの警告。

梅松の家は剣道道場。

神楽がそんな梅松の家に居候するようになってから発覚した、神楽の武術レベルは優弥や梅松を遥かに越えていた。

一度見た技は即会得してしまい、ものの数ヶ月で免許皆伝になってしまったのは最近落ち込んだ梅松から聞いたばかり。

それでも武器の扱いはあまり得意ではなく、彼が一番得手としているのは―――。



神楽「―――…那音、下がれ」

那音「? …みぎゃ!?」


次の瞬間、神楽にガンつけていた男の真横で爆発でもあったかのような衝撃が起きた。

砂が飛び散り、降ってくる。

しかし何故か那音と神楽には一切降りかからなかった。

何が起きたか分からない男等と、男の背後に阿修羅顔の妖刀装備者一名を見て顔をひきつらせる那音。


「ぎゃー!?」

「!?」


そして那音の右側を塞いでいたチャラ男が吹っ飛ぶ。

宇都宮のサーフボードがその男の居た場所に鎮座していて血の気が引いた。


玄太「貴様等…柳瀬に…柳瀬にナニをしようとしてやがる…っ」

「うわあああっ!? な、なんだコイツ!? 鼻血!?」

「…ヒッ!?」

優弥「…切り刻まれたくなければ今すぐ失せろカスども…」

「…………ひ…ひいぃぃぃぃ…!」

「お助け〜〜〜〜っ」


神楽那音「・・・・・・・・・」


哀れな…。

そんな神楽の感想が那音の耳に届いた。








那音「ありがとうゆーやっ」

優弥「黙れグズ! なんで野郎にナンパされてんだてめぇ!」

那音「え!? ち、違うよ!? アイツ等が神楽をナンパするのに利用しようと…」

優弥「………」

神楽「すまん、そうらしい」


しかし殴るのも那音が嫌がるし困っていた、と素直に謝って礼も言ってくる神楽に優弥が深々溜め息を吐く。


那音「ってゆうか優弥はなんで俺がナンパされてると思ったの? 俺、男なのに……。…神楽も一緒に居たのに……」

優弥「!? ………」

那音「なんで眼逸らすの…?」

神楽「しかしよく囲まれていたのが俺と那音だとわかったな」

玄太「丁度高波だった」

那音「…あ…乗れるようになったんだ二人とも? すごいね、今日始めたばっかなんだろ?」

優弥「別に!」


それは勿論対抗心という最強の練習効果の賜物である。

那音に褒められて、ブハッと鼻から多量出血する宇都宮。

ボックスティッシュ持参なので大丈夫だ(?)

そしてそこへ、大手を振って駆け寄ってきた露姫と顔色の悪い梅松。




露姫「あ、居た居たアンタ達探したじゃない! なにしてんの受付始まってんのよ!?」


神楽「? 露姫」

那音「…受付?」

優弥「(嫌な予感…)」


露姫「そ! 水着イケメンコンテスト、始まるわよ」にこり


全「・・・・・・・」





逃げられないようです。












露姫「ふっふっふっ…神楽と優弥と那音で1・2・3位は頂きね…。ネズミーシー一泊二日フリーチケットとDVDプレーヤーと商品券一万円分は…なにに使おうかなぁ〜」


司会「次はNo.5! 柳瀬那音〜! …あれ? 柳瀬く〜ん、パーカーは脱いで下さ〜い」

那音「へ!? え…あの、いやでも…」

優弥「コイツ辞退します」

那音「!?」

司会「!?」


露姫「なんだとぉぉぉぉ!?」

梅松「…………」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ