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わんこorにゃんこ





露姫「なんか神楽と那音って犬っぽいわよねぇ」




昼休み、いつもの五人で弁当をつついていた時だ。

唐突に露姫が神楽と那音を、箸で指しながらしみじみと呟いた。

当人達はキョトンと言い出した少女を見詰める。

梅松は成る程、と苦笑いの中にも同感した。

優弥にべったりで忠実なわんこ…幼なじみの柳瀬那音はそんな感じだ。

同じく、幼なじみの優弥も梅松からすると相当な忠犬だが…飼い主が誰、と聞かれるとこれまた那音かもしれない。

しかしなら、神楽が犬っぽいというのは何故か。

よくよく観察していると、那音がすっ転びかけたり物を落としたり、ぶつかりそうになるとさり気なくカバーする。

また二年の夏休みに壊した肩のために病院に行き、学校を休んだ次の日は必ず那音の分のノートを確保しておく。

…神楽は那音に、優弥とは違う方向で過保護であった。


梅松「まぁ、言われてみれば確かに…」

那音「そう? 俺、野球部のみんなには次の行動が全然分からないから猫みたいってよく言われたけど…」

優弥「…俺も那音は猫っぽいと思う」

露姫「(え、優弥が普通に食いついた!?)…ゆ、優弥の方が猫っぽいと思うわよ私は」

梅松「そうか? 俺は優弥は犬っぽいと思うが…」

優弥「そういう梅の方が犬っぽいと俺は思う」

露姫「あ〜、梅は犬よね!」

那音「うん、梅は犬だな!」

梅松「…………」



飼い主は露姫だろう、と…。

誰しも口にはしなかったが…。



神楽「…その、犬っぽいとか猫っぽいとか…何故人間をわざわざ犬猫に例えるのだ?」

露姫「え〜、ちょっと神楽、ようやく喋ったと思ったら話題全否定!? やめてよそういう空気読めない発言! あんた顔がいいからってなんでも許されると思ったら大間違いよ!?」

神楽「………すみません…」


多分そういう意味で聞いたわけではないのだろうが、露姫には誰も逆らえない。

素直に謝った神楽の肩を那音が叩く。

だがしかし、梅松も突然彼女がこんな話題を持ち出してきたのは疑問だった。

だから素直にその疑問を口に出して問うと…。


露姫「ほら、五時間目って文化祭のミーティングでしょ? 女装喫茶で那音にメイド服着せるのを前提で考えた時イヌミミとネコミミどっちがいいかなって!」

那音「俺メイド服着るの前提なの!?」

梅優神「・・・・・・」


あまりにも惨たらしい彼女の思考回路に、さすがの優弥ですら憐れみの眼差しを那音に向けた。

そして彼女がその思考回路に至った経緯に…絶対イヌミミ犬尻尾常備の生徒会長が居やがるに違いないと悟り、優弥が余計に脱力したのが見える。

梅松もあのイヌミミ生徒会長を思い出してなにかがっかりしたので、優弥の複雑な心境を察してやっぱり苦笑いした。









露姫「絶対似合うわよ! 那音ってお母さん似でしょ? 那音のお母さんマジ美人なんだもん女装したら優弥もイチコロよ!」

優弥「ちょっと待て! 俺が優理子さん好きみたいな言い方すんな!」

露姫「でも逆らえないんでしょ?」

優弥「それは…! …………って言うか…優理子さんに逆らえる奴なんか、居ないだろ…」

梅松「確かに…」

那音「露姫方向違うよー!」


那音の母、優理子さんを引き合いに出されると多分誰も逆らえない。

那音の母、柳瀬優理子さんは30代後半には見えない程若々しく愛らしくふわふわな超天然系。

身長も那音と変わらず173センチもあり、バストはEカップ…しかも90センチ以上。

男なら誰しも土下座したくなるグラビアアイドル級のナイスバディに、可憐な笑顔を絶やさない素敵なお母様なのである。

多少天然が過ぎて未だに那音を「ナオちゃん」優弥を「ゆーちゃん」梅松を「梅ちゃん」と呼んだり、出かける時に「車に気を付けるのよ〜」と言ってきたりとその辺り恥ずかしくなるお年頃の男子高校生に平気で言い放っちゃったりするけれど。


露姫「那音って女装させたら絶対優理子さん似の美人に仕上がると思うのよねぇ…フッフッフッ…」

那音「ヒィッ!」

神楽「成る程…確かに那音は母君似だったな…。だがわざわざ男の那音を母親に似せる必要があるのか?」

露姫「だって面白そうじゃない! これぞ親子ー! って感じで!」

神楽「そうか? …というか、なら何故さっき犬猫の例え話が出たのだ?」

露姫「萌よ!」

神楽「もえ…?」

梅優那(萌って…)


ほとほと…那音の事を変態だのなんだのと罵る割りに露姫も変なことをよく口走る。

その奇妙具合は那音すらたまに呆れ返る程だ。

だがしかし梅松にとってはこれが自身の彼女。

そんなちょっと暴走気味なところすら可愛らしいと思えた。

もちろんそんな暴走に、神楽は本気で理解出来ないと首を傾げる。

ある意味那音の母、優理子さんに引けを取らない天然の神楽に露姫の理屈は難解だろう。


露姫「仕方ないわ、那音! 神楽に萌を教えてやりなさいよ!」

那音「ええ!? …でも神楽何萌かわかんないし…」

露姫「それをなんとかするのがアンタのスキルでしょ」

那音「むちゃくちゃ過ぎっ…!」


と、露姫の無茶ぶりに困惑しつつ那音は真面目に悩み出す。

神楽や優弥にも、そして多分自分にも当てはまるのだがこのメンバーの男性陣はとりあえず全員根が極端に真面目なのだ。

なので露姫の無茶ぶりにも那音は本気で考えるし、神楽は神楽で那音の方を見て……律儀に待っている。

優弥が弁当を食べ終えて弁当箱を片付け始めた頃、那音が戸惑いつつ顔を上げて両手をグーにして…。









那音「…にゃ…にゃあ…」




猫の物真似と思われる。


を、神楽に向かって試してみた那音。

しかし、どうやら自分でやらかしてから相当恥ずかしくなったのか手を下ろし膝の上に乗せてから、もぞもぞと身体を揺らし俯いて顔を真っ赤にした。

その仕草はなんというか、同性の幼なじみだと分かっているのにこちらまで恥ずかしくなるというか。

居たたまれない気分になるというか。


梅松「……………」


そんな那音に確かに“萌”を梅松は感じてしまった。

可愛らしい。

女の子が今のをしたら威力は桁違いだろう。

だって男の那音でこの威力なのだ。

露姫にもやってほしい是非。

もちろん今の「にゃあ」の後のこの照れの部分を。

真っ赤な顔に恥辱の涙まで浮かべる辺り「何故やった?」と思う反面「よくやった」と誉めてやりたくなる。

そんな那音に神楽は残念ながら“萌”は感じなかったらしく首を傾げていた。

いやいやこれは間違いなく“萌”るところだろと、梅松は心の中で強く推す。

そしてその“萌”威力は与えるはずだった神楽よりその周囲…つまり梅松や露姫の方に圧倒的なダメージを与えたようだ。


露姫「ヤッベェ…那音可愛い…」

那音「……な…なに言ってんだよ…っ! 俺、男なんだから可愛いとか…嬉しくない…」

露姫「那音って本当に陵辱したくなる顔するわよねぇ…ああもっと苛めたい…!」

那音「ちょ…露姫顔怖いんですけど!?」


優弥「………」

梅松「? どうした優弥?」



弁当箱を包み終わった優弥が無言で俯いているので梅松は不審に思い彼を覗き込んだ。

するとものすごい眉間の皺。

いや、もう本当にどうした。

本気で心配になるとゆるゆる優弥が形のいい唇を開く。



優弥「………わん…」

梅松「………あ…ああ…」



リクエストだ、これは。

不器用で素直でないどうしょもない幼なじみの親友の、那音へのリクエスト。

仕方ない。

この素直ではない幼なじみで親友は、犬派だ。

果たしてこのリクエストにどんな意味があるのか本気で分からないが猫もやったなら犬もやってみろとかそういう意味なんだろう…。

と、無理やり納得する事にして。


梅松「那音、犬真似もやってみろよ」

那音「ええ〜!? なんなの梅まで! 俺の困ってるとこ見て楽しんでるだろ!?」

露姫「そうね、にゃあも可愛かったしわんも可愛いんじゃない!? やれやれ〜!」

那音「〜〜〜〜……」


露姫に強要されては那音も逆らえない。

また顔を赤くして俯いて、恐る恐る両手をグーにすると喉元まで持っていき…。



那音「…わ………わんっ…」


梅優神露「・・・・・・・」



すぐに手を膝に戻しより真っ赤になって俯く。

…普段の優弥への言動の方が遥かに恥ずかしいと思うんだが…。








神楽「…成る程、那音は犬の真似をした方が似合うな」

那音「え!?」

梅松「犬派か神楽!?」


真っ赤な那音の頭を撫で撫でする神楽は珍しく機嫌良さげに笑顔を浮かべている。

実にツボの分からない男だ。

で、那音に「わん」をリクエストした元凶はどうなっているのだろうと優弥を伺ってみるとどうした事だろう。

…先程より更に眉間に皺が深く刻まれているではないか…。

だが心なしか目元がほんのりピンク色に染まっているところを見ると、相当にツボったらしい。

……こっちもこっちでツボが本当に分からない。


露姫「やっぱり那音はメイド服にイヌミミ決定ね」

優神『駄目だ』

露姫「え!?」


驚いた事に露姫がうんうんと一人結論付けた事を優弥と神楽が真顔で否定してきた。

お前等相当那音の「わん」にツボっていたじゃないか。

どういう事だと見守っていると。



神楽「…犯罪が起きる気がする」

優弥「……………」

那音「…犯罪…?」



神楽の言葉に無言で目を逸らす優弥に首を傾げる那音。

梅松と露姫の脳裏によぎる鼻血男と那音信者達の姿…そして全校の腐女子達の邪悪な笑み。



露姫「………そうね…」



こうして一つの軽犯罪が未然に防がれた事実を知る者は少ない。









神央郷「では我がクラスの出し物を決めたいと思うのだな! なにか意見のある者は挙手して欲しいのだな!」

露姫「はい!」

神央郷「はい、眞田嬢!」

露姫「女装メイド喫茶以外」

神央郷「……え…以外ってそれ以外…って事なのだな?」

露姫「そう。よくよく考えると優弥や梅や神楽の女装とか気持ち悪すぎて絶対させらんねぇなぁと思ってさ~…」

那音「はいはい! 俺、優弥の執事姿が見たいです!!」

優弥「あほかっ!?」

神央郷「執事喫茶採用なのだな! 反対意見ある人ー」

全女子「ありませーん!!」

優弥「!?」



決定



神楽「ひつじ…? 今度はめぇー、か?」

梅松「し・つ・じ」

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