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投資の変神  作者: アケブタケブ
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第五話「ファンタジー世界における芸能業界の舞台裏 その1~ 低価格魔法少女 ~」

芸能界。


この一種独特の世界は、一般人を狂わせる空気がある。

たった一人の女の子が、全国民を熱狂させるアイドルに変身、というサクセス・ストーリーは、世の夢見る少女達に希望を与える。


夢も希望も無い不況の世の中、夢見る少女達をプロデュースすべく、銀幕の世界に殴り込みを仕掛ける投資家ケルナー。


芸能界に戦いを挑むには、先ずはアイドル候補生を探す事が急務となる。

だが、立ち上げたばかりで会社財政が火の車である弱小芸能事務所 『ケルナー・プロダクション』では、アイドル候補の選択は限られていた。



【低予算で、無名で地味な少女をトップアイドルに】



〝歌って踊れるカリスマ美少女〟が、安月給で牛馬の如く働く派遣社員の様な存在であれば、話は簡単だ。

しかし、現実問題として、アイドルをそんな扱いで雇えば、ブラック企業の誹りは免れないだろう。

第一、そんな逸材が居れば大手芸能プロダクションが目を付けているので、スカウトしようとするだけ金と時間が無駄になる。


となると、大手芸能プロダクションが眼中に入れていない、そこら辺の近所の少女を安値で雇って、何とかファンを騙すしか方法は無い。


地味で平凡な少女を、粉飾決算の如く厚化粧で偽装して売り出せば、低コストでアイドルを輩出できるという訳だ。


このデフレ経済の中では、ハイスペックな高額商品よりも、低予算でリーズナブルな商品の方が、消費者に喜ばれる。

故に、低価格で地味な少女を売り出した方が消費者には市況に合ったデフレ・アイドルとして喜ばれるだろう。


地味なところは、【親近感のある庶民派アイドル】というキャッチフレーズでも付けておけば、庶民は勝手に勘違いしてくれる。

早速、近所の少女を詐欺の如く釣って契約し、アイドルに仕立て上げる計画を実行に移す投資家ケルナー。



「しかし、このアイドルは庶民的すぎないか?」



特徴のない顔と体型、そして非個性な髪型に服装。

素人目で見ても〝まるで華の無いアイドル〟だと、ハッキリ判る。

この容姿では、ファンを獲得するどころかアイドルとして世間に認知させる事すら難しいだろう。


ならば、売れるアイドルにするには 何をすれば良いのか?


そこでケルナーが考えたのは、アイドルの王道路線『魔法少女』のストーリーを、そのまま流用する事であった。



【平凡で内気な少女が、魔法少女になってトップアイドルに】



『魔法少女』とは、平凡な少女が ふとしたキッカケで魔法の力 《マジカル・パワー》に目覚め、《魔法のステッキ》を駆使して超売れっ子アイドルに変身するという眉唾モノのストーリーだ。


しかし、幸いにして ここはファンタジー世界である。

《魔法のステッキ》など、吐いて捨てるほど存在する。


安く買い叩いた《魔法のステッキ》を使って、安月給で雇った近所の小娘を、妖艶で淫靡なアイドルに仕立て上げる。

そして、そんな少女達を大量生産して大掛かりなグループとして芸能業界にばら撒く経営方針を打ち立てる投資家ケルナー。


後は、【会いに行ける魔法少女アイドル】をコンセプトに、握手会やら路上ゲリラ・ライブを日夜敢行して、どこにでも居る身近なアイドルとして消費者に周知徹底させれば良いのだ。


ケルナーの目論見は当たり、ファンと称するモテない男共を篭絡する活動で、信者の数を爆発的に増やす事に成功した。

そして、ファン達の多額のお布施により、火の車だったケルナー・プロダクションの財務事情は劇的な改善を果たした。


しかし、好事魔多し。


低コストの模造品を大量生産すれば、その分、深刻な不良も多発する。

安物の《魔法のステッキ》は、価格通りの効果しか発揮せず、魔力の暴発や不具合といったトラブルを連発したのだ。


要は『魔法少女』とは、幻術や肉体変形魔法を使ってファンを騙す、整形手術やフォト○ョップの様な技術なのである。

公演で熱唱している途中で「幻覚魔法」の効果が切れてファンに容姿の加工技術がバレたり、「肉体変形魔法」が失敗して、握手会でファンの手を握力で握り潰してしまうなどの事故が多発し、その都度、芸能雑誌の一面を賑わせた。


こうした事故の究明で、真実が白日の下にさらされると、ファンを自称するモテない男共は、地味で平凡な少女達に見切りをつけて他のアイドル達にシフトして行った。

こうして低価格魔法少女はファンに見捨てられて、銀幕の世界からのフェードアウトを余儀なくされた。


〝安物買いのゼニ失い〟を地で行く経営で、苦境に立たされるケルナー・プロダクション。



「やはり、『魔法少女』などという胡散臭いシロモノで商売をしようとした事に無理があったか・・・」



安物商品を高値で売りつける詐欺のような経営方針よりも、あくまでも商品アイドルのコンセプトに問題があると現実逃避する投資家ケルナー。


だが、ここで諦めて事業撤退となると、投資した金が無駄になる。

一流の投資家に、「損切り」という文字は存在しないのだ。



「やはり、ファンを納得させて金をむしり取るには、 ハイスペックなアイドルをもって篭絡するしか無い」



新たなる決意を下に、投資家ケルナーの本格的アイドルプロデュースが、ここに開幕する。



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