わんこの皮をかぶった狼
えーと。続き書いちゃいました。
今回は京谷氏視点です。
・同性愛者が登場します。
・性描写を匂わす単語あり。
これらがダメな方はご遠慮ください。
ではどうぞ!
久々に楽しい。
大学に入学して三年目、まあそれなりにやってきた。
俺はちょっとした秘密を持ってた。苦しくて苦して自暴自棄になっていたときあの人に出会ったんだ。
『おい、ボーズ。まだまだ人生楽しいことばっかりだぜ?へばってんじゃねーよ』
この言葉をくれたあの人は、ただ何気ない一言だったんだろう。
この言葉にすがりつくようにして生きた。
まさか、あんなところで出会えるなんて。しかも、あの人の妹だなんて本当人生はわからないことだらけだ。
俺が、自分の性癖に気付いたのは高校の時だ。もちろん信じられなかったし悩んだ。
今思えば恥ずかしい話だが、荒れに荒れた。
ま、今まっとうに生きているのはあの言葉があったからだ。俺の周りにいる人たちのことに気付かせてくれた。それでもカミングアウトしたあとはショックだったようだけど。
大学に入って、特に隠さなくなった。別にべらべらとしゃべるわけではないが、聞かれたら答えるその程度までなった。
恋人といえる奴はいつもいるわけじゃあない。やっぱりいろいろと難しいもんだ。
なんで俺はあのバカとつきあってたのかよくわからない。ただ、まああの子と会うためだったのかと思えば感謝してもいいかな。
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「別れてくれねーかな。やっぱもういいや」
長かった。このセリフを引き出すまでにどれほどの労力をかけたと思ってるんだ。
さて、ここでぼろを出すわけにはいかないな。
「は!?いきなりなんだよっ昨日はンな様子なかっただろ」
俺も最低だとは思うけど、こいつもとことん最低野郎だな。
昨日の夜も一方的だったけど、熱い夜ってーの?(ま、察してくれ)を過ごしておいて。翌日言われるとはさずがの俺も思ってなかった。
「おいっ!何とかいえよ!!」
「だからさーもう別れよって言ってんジャン?」
「なんでだよっ!!」
「本当にわかんないわけ?馬鹿だね」
「なんだとっ!!!」
反論にバリエーションがなくなってきた…。わかってるから早く言っちまえってーの。
「俺、彼女できたんだよね」
「な」
「お前、美形だし。どんな感じかなと思ってさ。いろいろイイ経験させてもらったよ、じゃあな」
「っ」
おわったーーーーー。ほんと疲れた。てかなんで別れ話に大学を選んだのかね。俺はいいけど。たしかあいつは男もいけるのは隠してたはずだろ。
しかもベンチの上に目を丸くしたお嬢さんがいるじゃないか。
はーーーー仕方ない、少し話してみるか。
さすがに警戒されるとあれなので一つ席を空けて彼女の隣に座った。
「変なもん見せてごめんね?」
「いえ」
うーん。びっくりしてるみたいだけど嫌悪してる感じはないかな。
さすがの俺も少し疲れていたのかいらんことまでぽろぽろっと出た。
「あーやっと別れ話までいったよ。あいつ無駄にプライド高くてさ。こっちからフると面倒くさそうだったから、あいつに気がある女子を近づかせたりして…」
「うわ」
顔に最低、と書いてあるのがありありと見える。なんだか楽しくなってきていろいろ話してしまった。
「だってさーあいつ、ベッドの中でも横暴なんだぜ?まったくもってヨくない」
でもま、こんなところまで話さなくてもよかったはずであるが。
「で、君の名前は?」
何やら遠い目をしている目の前の子に畳み掛けるように質問していく。
「は」
「俺はね、経済学部経済学科の京谷正輝。ちなみに三年な」
「文学部日文、鈴原葉月。二年」
「後輩かー」
鈴原、という苗字にあの人の顔が浮かぶ。
その間に去ろうとしている姿を見てあわてた。もっと話がしたかった。
「えと、じゃあ失礼します」
「あ、また来る?」
また、会いたいと思った。
「?」
「ここに」
「さぁ?気が向けばですね」
「そっか」
「では」
「またね、葉月ちゃん」
俺は結構見た目から、そうは見られない。けど気に入った子には押していくほうだ。
きっと、しばらくは来ないかな。でも会いに行くから。
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「おはよ、となり座るね」
次の日、俺はとあるルートを使って(企業秘密、な)葉月ちゃんがとってる授業にもぐりこんだ。
結構流されるタイプかなと思ったのでぐいぐいいく。
「葉月ちゃんもこれ取ってたんだ」
「まぁ」
「ていうか葉月ちゃん、鈴原さんの妹だったんだね」
「…兄をご存じで?」
「そりゃあね、有名だし。いろいろお世話になったし」
「さようでございますか」
だから昨日の場面にも嫌悪をもってなかったのかと納得したんだけど。
けどちょっとこの感じだとまるで『あの』鈴原サンと関係があったみたいだ。ありえない。確かにいい男ではあったけど、いろんな意味でありえない。
「あ、でも俺にとっても兄貴みたいな感じだよ。そういう関係じゃないからね」
「ぷくくくく…わかってますよ。兄は結構おせっかい焼きなんです。ちなみに兄のタイプは昨日の別れ話をしていた彼のようなガテン系なんで」
きょとん、とした顔をしたあと、意味が分かったのか笑った。
少し、見とれた。いや正直に言おう。かなり、だ。
「…葉月ちゃんとお友達になりたいんだけど」
そしたらもうあとは押すのみ。
「いいですけど?」
ただ少し気になった。この時の葉月ちゃんの顔が落胆したように見えたのは俺の気のせいだっただろうか。
「メアド、番号教えて」
「はぁ」
さっきまでの笑顔はもうなく少し他人行儀のような、雰囲気だった。
「というか、別に私とわざわざ友達にならなくても、兄と会えるようにしてあげますけど」
「は」
「違うんですか?」
わかった。葉月ちゃんは俺が鈴原さんとコンタクトとりたいと勘違いしてるのか。
たしかに恩人だ。直接お礼も言いたいが、
「違う。葉月ちゃんだから、俺は友達になりたいと思ったんだ。確かに鈴原さんにはお礼も言いたいけど、あの人には会いたいと思えば会える」
まだ出会って一日程度だけど、葉月ちゃんだから知りたいと思ったんだ。
「だから、教えて?」
「はい」
照れくさそうに頬を染めた葉月ちゃんは顔をそむけた。
そんな姿に俺もうれしくなった。
「連絡する」
「よろしくお願いします」
そうして始まった俺と葉月ちゃんの友達づきあい。
「なぁなぁはーちゃん」
「なんでしょう」
「これ見に行きたい」
「ふむ、かまいません。あ、ここ行きたいんですけど」
「はーちゃんて、なかなかに渋いよね。盆栽展って…」
慣れてからはーちゃんと呼ぶようになった。まだはーちゃんからは苗字呼びで少しおもしろくない。
いろいろ話をするようになってわかったのは、面白いくらいに趣味や空気が合うこと。
「いーんですよ。行きたくなければそれで。一人でも行こうと思ってたのでっ」
「はいはい拗ねないの。行かないとは言ってないでしょうに」
「む」
普段は大人っぽいけど、気を許した相手には甘えること。
だんだんと、おれは友達とは違う感情を彼女に抱くようになった。なんだろうな、俺女の子はそういう対象ではなかったんだけど。
確かに俺はもともと女の人が恋愛対象でなかったわけではない。好きだったこともある。ただ、女を恋人にするにはちょっと俺の黒歴史が邪魔をする。男のほうが楽だったんだ。
「じゃ今週の土曜でいいかな」
「はい。あ、あの」
「んー」
そう、俺はきっとゲイていうわけじゃあないんだろうな。はーちゃんと一緒にいるようになってそう思うようになった。
だから、ちょっとこの質問には見透かされたかと思ってビビった。
「恋人はいいんでしょうか?」
「あれ?俺今フリーだけど」
意味は分かって、内心バックバックなのを気付かれないようにごまかした。
「まったく優しいねはーちゃんは。今はいいんだ別に。好きな人ができたらちゃんというから」
「はぁ」
「おれよりはーちゃんはどうなのよ」
「どうでしょう?」
「ふーん。そういうこというんだー」
言って初めて、想像した。はーちゃんの横に俺以外の男がいるところを。だんだんとむかむかしてきて、言動が意地悪になってるのがわかる。
その証拠にじょじょにはーちゃんの顔が怯えたものになっていく。違う。そんな顔をさせたいわけじゃあない。
「や、だってよくわからないですし。そういうの」
「くくく。ま、相談にならのるからね」
しかしま、本当にそんな相談された日にはどうなるか分からないな。
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持て余した自分の気持ちをどうしようかと思いながらも、怖がらせるのも嫌で離れるのも嫌でいつも通りの毎日を過ごしていた。そんな時、はーちゃんと盆栽展に行った帰りだった。
前から、はーちゃんと出会うことになった要因が歩いてくる。
わざわざからまなくてもいいところを、喧嘩を売ってるようにしか見えない。
なるほどこいつ、ふられたな。
「よ〜う。正輝ジャン。彼女連れ?なーんだお前も女イケたんだ」
「何の用だ?」
彼女を嘗め回すような視線に耐えかねて前に出ると、標的を俺に定めてきた。
「べつに〜最近お前がさ、女とよくいるって聞いてさ。こいつさ、ゲイだって知ってた?気を付けたほうがいいよ?男に取られちゃうから」
知ってたけど、こいつは馬鹿なのか?あきれて言葉が出ない。
別れ話をしてた目の前にいたんだから知っているし、俺は別に隠してない。というかお前はもっと周りを見たほうがいい。
「ホント、ありえねぇよな。君もそんなにかわいいんだからこんなヘンタイ野郎とじゃなくてもっといいやつと付き合えるよ?」
たしかにはーちゃんはかわいい。派手さはないし目立たないけど、肩まで伸びた黒いまっすぐな髪、まあるい小動物のような目、薄桃色のほっぺなんて食べてしまいたいくらいである。
なんて、脳内で彼女を愛でていると後ろから低い声が聞こえた。
「分かってる?べつに、ゲイ=たらしとか変態っていう意味じゃあないんですよ?ゲイにだってタイプがある。当ったり前!!ま、たとえ私が男でゲイだったとしても、アンタだけはお断り!!そもそも男女だって男女二人ってだけですぐカップルができたら、婚活だのなんだのいってないっつーの!っだいたいねっ、たらしやら変態やらっつーのは貴様のような男でも女でも自分の欲を満たそうとする下半身ゆるゆるのヤツを言うんだよっ!!!覚えとけ!」
すごい。直接言われてない俺までぽかんとしてしまった。
かなり女の子にあるまじき単語がはいってるけど。
「いーい?次に性癖なんかくだらないことででバカになんかしたら、あんたも男がイケるってこと大学にばらして、股の間に付いてるモノ、ちょんぎってやるから!!」
ちらと彼女を見ると毛を逆立てている猫のようにフーフーしていた。
「ちっのアマ!!おぼえとけよ!」
しかし、情けない。そんな雑魚キャラのような捨て台詞しか出ないのか。
しかも声は震えてるし、腰は引けてる。あっちゅうまに逃げて行った。
「ふんっよわっちいヤツめ」
そして葉月さん…それ悪役の台詞だからね。
俺ははーちゃんを怒らすのはやめようと誓った。さすがあの鈴原さんの妹なだけある。
「………………なんですか」
「い、いや………なんでも?」
にしても、だ。さっきからある衝動を気合で押さえつけていたのだがあっさりばれた。
「………笑うなら笑ってください」
「じゃ、じゃあ遠慮なく………っぷくっはははははは!!!まさかまさか、あそこまで言うなんて…っくくく。し、しかもちょんぎる、とか…もうおかしすぎるっ…確かにあそこまで言われたら、しばらく使い物にならないかもっ…ははは!!!!あー笑った…。久々にこんなに笑ったよ…」
「…よーございました」
「拗ねないでよ。とっても嬉しかったんだから」
「?」
「ゲイだってカミングアウトしてから、いなくなったダチも残ったダチもいる。それでもやっぱり男のダチは『構える』んだよなぁ」
ちゃんと俺だけのために行ったセリフだってわかったから。本当にこの兄妹はどれくらい俺を喜ばせたら気が済むんだろう。
「だから、ちゃんと分かってくれる人がいてくれてホント嬉しい。ありがとう」
「べ、別に…私がただムカついただけで」
「照れてる?かわいー!」
「べつに京谷さんじゃなくてもおんなじこと言ったと思うし……」
「ふーん?」
その言葉はいただけないかな。ちょっとどころかかなりむかついた。
そんな不機嫌な空気が伝わったように、さっきまでの勢いをなくして青い顔になっている。
「ななななんでしょうっ」
「いや〜はーちゃんはやさしいなぁと思って」
「そうですね。私は京谷さんよりは優しいかもですね」
「そーだよね、そんな優しいはーちゃんだったら、俺のささやかな頼みごとも聞いてくれるよね??」
「…」
もう決めた。逃がさない。
「初めて女の子好きになれそうなんだけど協力、してくれる?」
これは嘘。でも知らなくていい。
本当に好きになったという意味では嘘ではないわけだし。
「今まで絶対無理だと思ってたんだけどね〜。ただの友達じゃあ、俺ちょっと我慢できなさそう」
「な」
俺が何を『我慢』できないのか分かったのだろう。青を通り越して白くなってる。
かわいいなぁ。
「うんうん、そういう顔もいいね………ソソられる」
「〜〜〜☆◎◇□○△★!?!?!?」
「俺って両刀だったんだな。自分でもびっくりだ」
「!?」
「うんだから、さ」
「覚悟しとけ?」
きっと明日からもっと楽しくなるのだろう。
逃がさない。ぜったいに手に入れる。
だから、さ。
覚悟しといて?葉月。
読んでいただいてありがとうございました!!
いかがだったでしょうか。
しかし、京谷氏若干ヤンデレに片足突っ込んでますね。
その後も書きたいと思ってます!
よろしくお願いします。