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第1話 依頼


暗闇の中、小さな虫たちが一斉に羽を震わせる。

一匹、また一匹と地面に落ちていく。


その羽ばたきが止まる瞬間、地面一体が青く光る。


虫たちから放たれた光は、誰の目にも止まることなく、夜の空に散らばっていった。



~♪

「厚生労働省によりますと、去年一年間の小学生から高校生の自殺者の数が過去最多だったと発表しました。」



「最近多いですね、自殺する若者。」


琉生がニュースを見ながらため息をつく。


「先の見えない未来に希望を抱けるほうがおかしいと思うけどな。」


善がぼそりと言った。


「善さんはそうかも知れませんけど…」


琉生が呆れた目を向けた、そのとき、


「なんの話してんの?」


買い出しに行っていた恭子とあいらが笑いながら入ってきた。


「善さんが、先の見えない未来に希望は抱けないって言ってるんですよ。」


「ふーん。私は先が見えないからこそ楽しいって思うけどね。」

と恭子は軽く肩をすくめた。


「私は善さんと同意見です」

あいらが小さく呟く。


「恭子さんと琉生さんは、暗闇にいたとしても、自分から光を作り出せる人なんです。そうでない人は、光を探しても見つからなくて諦めて、そのまま息絶えるだけ……」


「そんなことないだろ。」

琉生はすぐに反論する。

誰だって光を見つけられる、と、くどくどと説明を始める。


善は腕を組んだまま、小さく息を吐いた。


琉生が「聞いてます?」と善に言おうとした、

そのとき――


テーブルの上のノートパソコンが、短く音を鳴らした。


「依頼ですね。」

あいらが画面を覗き込む。


恭子が椅子を引いて座った。


「内容は?」


あいらは少し眉を寄せる。


「……村の調査依頼です。」


「村?」

琉生が聞き返す。


「はい。最近、住民がおかしくなっているって」


善が顔を上げた。


「おかしいって?」


あいらが届いたメールを読む。


「幻覚を見ている人が増えているそうです。」


「幻覚ねぇ」


「最初は一人だったそうですが、今は二人、三人と……」


部屋の空気が少しだけ重くなる。


恭子が軽く指を鳴らした。


「つまり、原因不明の集団幻覚ってこと?」


「依頼主はそう言っています。」


善が小さく笑う。


「面白いな」


琉生が首を傾げる。


「面白い?」


「普通、幻覚は個人だ。広がるのは珍しい。」

善は腕を組んだまま、興味深そうに言った。


あいらが続ける。


「しかも、見えているものが同じらしいです。決まって何かの言葉を言っているそうですが、なんの言葉かまでは分からないそうです。」


恭子が笑う。


「それは確かに変だね」


琉生はふと窓の外を見る。


夜の地面。

虫が一匹、落ちた。


その瞬間、青い光が弾ける。

でも、誰も気づかない。


恭子が立ち上がった。


「よし、決まり。その村へ行こう!」


――そのとき外では、また一匹、虫が地面へ落ちた。


青い光が、静かに夜へ溶けていく。

まるで、誰かの命が消える瞬間のように。


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