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フォーフーム戦機  作者: 女又心
第一章 蒼空のオーランド

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オーランド攻略戦

 低軌道上にあるラストパラダイスからオーランド内部到達までの所要時間は、結果として物の数分とかからなかった。


 あっという間に三色に移り変わる次元断層に肉薄したかと思えば、数瞬後には難なく障壁を突破し、続く厚い雲海を抜けた先には、シミュレーターで見たのと同じ、一面の青の空間が漠然と広がっていた。


 一仕事終えた後にもかかわらず、何事もなかったかのように涼しげな表情でセシルが口を開く。


「アライバルアットオーランド。ユーハブコントロール」


「アイハブコントロール、っと。で、この先が時間との勝負なんだっけか?」


 振り返らず前を向いたままの光一の問いかけに、セシルは「はい」と頷く。


「現在展開している通常出力のバリアフィールドであれば、生体エネルギー源である光一がこの機体に搭乗している限り、半永久的に連続稼働が可能です。他方、対コア戦用のHDCE(高密度圧縮展開)を行うとなると、システムにかかる負荷が膨大なため、流石に無制限とはいきません」


 念を押すように、一言一句はっきりとセシルは告げる。


「連続稼働可能時間は最大で五分。これを超過すると、フィールドは消失し、機体は自爆します」


「戦闘モードに移行してから三分で警告アラート。四分で自爆装置作動。だから、実質三分間が、交戦可能時間の目安。それ以上戦闘を継続した場合、ラストパラダイスへの生還は極めて困難、って話だったな」


「その通りです。よって、オーランド・コアに接敵するまでは通常出力のまま回避行動に専念し、攻撃を仕掛けるぎりぎりのタイミングでHDCEを発動するのが理想です」


「了解。詰まる所、どこぞの光の巨人みたいに此処(ここ)一番で颯爽と現れ、一ラウンドで目標をKOして速やかに戦場を離脱しろってことだろ? やってやんよ!」


 啖呵を切って、光一は索敵を開始する。


「で、肝心のターゲットはどっちだ?」


「三時方向にコアの反応有り。同方角より、おそらく私たちの侵入に気付いた攻撃端末が多数接近中」


 セシルの言葉通り、無数の紅い光が光一にも視認できた。光の正体は、カメラアイ兼破壊光線発射口となっている、敵機の光学レンズの輝きだ。


「突っ込む前に、まずは道を切り拓く……!」


 光一は、レイルバインのバックパックに折り畳まれて収納されている射撃兵装ブラスターに機体の手を伸ばす。


 取り出したブラスターの銃身を展開すると、すぐさま彼は銃口を敵方向へと差し向けた。


「最大出力……発射ッ!」


 ブラスターの先端から大口径のレーザーが迸り、遠く衆敵中央目掛けて直進する。


 程なく、遠方で爆発の光が連鎖的に発生するのを見届けると、光一は自身が砲撃した際の射線上に沿ってレイルバインを発進させた。


「さて、今のでどれだけ時間を稼げるか」


「次元断層内には特殊な(ことわり)が働いており、コアを破壊するまで敵総数に変化はありません。敵一体を無力化する度に、新たな敵個体が近くで発生します。敵防衛網に、一時的に穴が()いた程度と見るべきかと」


「うへ。シミュレーターで薄々分かっちゃいたが、やっぱ現実もそんな感じなのか」


「はい。シーラが豪語していたように、彼女の調整したシミュレーターは忠実です。敵が減らない中、必然的に集中砲火に晒されるため、本来機動性重視の空戦機であるレイルバインに鉄壁のバリアが必要とされた経緯があります」


「なるほどね」


「なお、これはオーランド特有の事情であり、残る二つの次元断層――インザクアとアンダーソンのコア攻略戦では、また別の難題が立ちはだかるのですが――」


「話はここまでみたいだ、セシル。どうやら(やっこ)さんのお出ましらしい」


 レイルバインの進路上に、複数の小型機に交じって一際大きい機影が見え隠れし始める。


 その機体は、一言で表すなら要塞だった。空飛ぶ城、戦艦と言い換えてもいい。


 全長10メートル弱のレイルバインに対し、その大きさは目測で500メートル程。おおよそ正四面体の形状をしており、四つの頂点には全方位三百度対応と思しき可動砲台が砲門を構えている。


 また、各面の重心にはカタパルトが設けられているらしく、先刻のセシルの言葉を裏付けるように、撃墜された分の攻撃端末が順次そこから補填されているようだった。周りを取り巻く光点(攻撃端末)の数があまりにも多いため、あたかも赤いオーロラのようなベールを全身に纏っているかのように見える。


 その圧倒的威容を前に、光一はセシルに再確認する。


「……で、あれに関する詳細な戦闘データだけは、まだないんだよな?」


「はい。オーランドを構成している力場の核が内部に存在する、ということ以上の情報はありません。従来の調査方法では、そこまでの情報収集が限度だったようです。HSの完成に加え、常に移動するコアの位置を最近ようやく検知できるようになったことも、今回作戦を実行に移した理由の一つです」


「かと言ってさ……威力偵察もなしに、ぶっつけ本番で攻略作戦決行とか、正直正気の沙汰じゃねえよな!」


 不平をぶちまけながら、光一はレイルバインを敵陣に向かって突進させる。


 雨(あられ)のように降り注ぐ破壊光線を紙一重で(かわ)し。


 針の穴を通すように正確無比で最適なルート選択を瞬時に行い。


 進行方向上の不可避な敵のみ、最低限の動作で抜刀したレーザーブレードで切り伏せ。


 目標に近付くに連れ激しさが増し集中する火線(かせん)を、ツインブレードを回転させ弾き返すことで極限まで耐え凌ぎ――



「ここだ、セシル!」

「バリアフィールド高密度圧縮、全面展開……!」



 オーランド・コアの正面に躍り出ると同時、レイルバインが発するバリアフィールドの層が格段に厚くなり、それまで必死に回避していた破壊光線の直撃を受けても全く物ともしなくなる。


「よっしゃあっ! こっからが正念場ァ!」


「カウントダウン開始。防御のことは気にせず、攻撃に専念してください」


 まずは直近のカタパルト部に光一は狙いを定める。該当部位に接近しながらブラスターを構え、照準セット、通常出力で数発発砲。


 全て着弾。しかし砲撃はエネルギー防壁に阻まれ、目標には傷一つ付いていない。


 透かさず光一はレーザブレードを抜刀。着弾と同じ箇所に斬撃を見舞うが、やはりこれも防壁に弾かれて終わった。


 光一は舌打ちする。


「どうする? 向こうさんもバリアを持ってるみたいだぜ?」


「――解析完了。各頂点の砲台基部にあるジェネレーターが、シールドとも兼用になっているようです。砲台を叩けば、敵防御シールドの出力も低下すると思われます」


「OK。やるのは一基でいいのか?」


「それはやってみないと分かりません」


「そりゃそうだ……!」


 光一は機体を転進、最初に目に留まった砲台へ進路を取る。


 向かい来るエネルギー弾を真っ向から受け流しつつ、光一はブラスターのチャージを進める。


「充填完了……行けぇぇぇっ!!」


 目標の至近距離でブラスターのフルパワー照射をぶちかますレイルバイン。(またた)く間に融解する敵砲台。続けて誘爆するジェネレーター。


 爆発に巻き込まれぬよう一時離脱した光一は、再度カタパルトに目を向ける。


「どうだ!?」


「交戦開始から一分経過。――駄目です。敵防御シールドは(いま)だ健在の模様」


「くそ、やっぱ全基潰す必要があるのか? ったく、MAXブラスターの連発は利かないってのに……!」


 考える時間も惜しい。光一はすぐに次の砲台の撃破に向かう。


「うおおぉぉっ!」


 バリアフィールドの強度を信じ、光一は減速せずに猛スピードで機体を砲台に突っ込ませた。レイルバインの体当たりを受け砲身や砲塔がひしゃげるも、更にその奥にあるジェネレーターにはあと一歩届かない。


 続け様に光一は、先の攻撃で生じた装甲の(へこ)みにレーザーブレードの刀身を叩き付ける。


 何度も、何度も……何度も何度も!


 そうして無理矢理広げた装甲の裂け目に通常出力のブラスターを数発撃ち込むと、光一は脇目も振らずに次の砲台を目指す。直後に後方でジェネレーターの爆発を確認。


「今度は!?」


「既に二分経過。――敵防御シールドが消失する兆候、依然ありません」


「ちっ! 勘弁しろよ……!」


 ブラスターの冷却時間(クールタイム)はまだ終わってない。さっきと同じやり方では、到底制限時間内に間に合わない。


(一々剣を振りかぶってたんじゃ(らち)が明かねえ……!)


 光一は意を決すると、機体を加速させながら、レーザーブレードを握る両手を前に突き出し、剣身を立てるように構えさせた。同時に膝を曲げ、身体を屈めつつ、前方宙返りの要領で姿勢制御した機体を車輪の如く高速回転させる。


「必殺! レイルバイン、ローリングカッタァァァァッ!」


 巨大な回転(のこぎり)と化したレイルバインは第三の砲台に激突。砲身ごとジェネレーターを真っ二つに両断し、見事これを粉砕した。


「ど、どうよ。即興の思い付きにしちゃ、なかなかの威力だろ……?」


 目を回しながらドヤる光一に、顔色一つ変えていないセシルが素直な賞賛を送る。


「素晴らしいです、光一。二基目のタイムスコアを大幅に更新し、その約半分の時間で三基目の破壊に成功しました」


 そう言って、彼女は目を伏せる。


「……ですが――」



 突如、機内にけたたましい警告アラートが鳴り響く。

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