再びこの手に
「何と醜く、忌々しい」
宇宙空間に浮かぶ一つの惑星を眺望しながら、男は恨めしげに呟いた。
男がいるのは、衛星軌道上に位置する人工天体、その一角にある展望室。
彼の眼前には、青、緑、橙の三色に、不規則にその外観を変える構造色の天体がある。
かつてこの星は、美しい青色で、生命溢れる豊かな自然環境を有していた。
(それが、今ではご覧の有様だ)
得体の知れない三層の次元断層に覆われた件の星は、最早地表の状態も定かではない。
太陽系第三惑星――地球。
その成れの果てが、目の前にある不気味な色をした天体だった。
そして、今や見る影もないこの星に、在りし日の姿を取り戻す。
その大望こそが、この男を突き動かす終生の悲願であった。
「――時は満ちた」
意を決するように言った男の背後には、いつしか三人の少女が並び立っていた。
姉妹なのか、髪型や背丈に若干の違いはあれど、その面立ちはどこか似通っている。
彼女たちの内、真ん中のポニーテールの少女が最初に口を開く。
「各次元断層に合わせた機体の最適化、既に完了しています」
続いて、その右隣に立つショートの少女。
「シミュレーターの準備もOK。いつでもトレーニングを開始できるわ」
最後に、残ったツーサイドアップの少女がおずおずと切り出す。
「ふぁ、第一候補者のコールドスリープ、目下解凍中、です。し、進捗率は、現時点88パーセント」
「よし」
満足そうに頷くと、男は再度、変わり果てた地球を真っ直ぐに見据える。
「今一度、あの星をこの手に……」
熱に浮かされたように独り言ちながら、男は玉虫色の地球に向かって右手を伸ばし、それを掴むような所作をする。
やがて、握り締めた拳を胸元に掲げ、男は三人娘を振り返った。
「彼が目を覚まし次第、私の元へ。計画を第一フェーズに移行する」




