第3話「ドラゴン、納期を守らない」
──神様の手違いで最強になった俺、異世界でも社畜気質が抜けない件──
街へ戻る途中、空が急に暗くなった。
見上げると、雲の上を巨大な影が横切っていく。
「……え、ドラゴン?」
どこかで雷鳴。空気が焼けるような音。
城壁の方から悲鳴が上がった。
「非常警報!西門方面に飛竜出現ー!!」
兵士たちが走り回る。
商人は荷物を抱え、子どもは泣き出す。
地獄のような混乱。
「初日でこれかよ……納期、早すぎない?」
心のツッコミが止まらないが、逃げ遅れた人たちの姿が目に入った。
胸が、少しだけ熱くなる。
(見捨てられねぇな……)
足が自然に動いた。
草原の外れ、黒煙の中へ。
⸻
◆災厄級モンスター「ブラックドラゴン」
近くで見ると、ヤバい。
でかい。
鳴き声の圧だけで心が折れそう。
「ぐわぁぁぁっ!!!」
地鳴り。衝撃。
けど、逃げなかった。
「神様の手違い……こういう時に使うしかないな」
両手を広げ、魔法を同時展開。
「ファイア・ウォールッ!! ウィンド・シールド!!」
炎と風の結界が交差し、火の粉が舞う。
だがドラゴンのブレスはそれを一撃で砕いた。
「おいおい、強度バグってるだろ!」
吹き飛ばされ、転がりながら思わず叫ぶ。
土煙の中、黒い影が迫る。
(ヤバい、死ぬ……!)
その瞬間、頭の奥に声が響いた。
《──久しぶり。生きてる?》
「この声、神様!?」
《うん。観察してた。すっごく社畜っぽく頑張ってるね》
「今それ言う!?ドラゴン来てるんですけど!?」
《あー、あれね。テスト個体。魔法の制御レベルを測るやつ》
「テスト!?警告しろよ!!」
《まぁ落ち着いて。魔法は“混ぜる”と強くなるよ。火と水とか、風と光とか。試してみて》
「え、そんな仕様説明ここで!?」
しかし時間はない。
試すしかない。
⸻
◆初の複合魔法発動
「火と風……合わせるってこうか!?」
両手を交差させ、集中する。
炎が風をまとい、渦を巻く。
「ブレイズ・トルネード!!!」
轟音とともに炎の竜巻が立ち上がり、
ドラゴンの片翼を焼き裂いた。
「うおおおおおおおお!!」
《おお、成功! やればできるじゃん!》
「いや褒めるな!死にかけなんだよ!」
だが一撃では終わらない。
怒り狂ったドラゴンが突進してくる。
真一は反射的に地面へ手をついた。
「土と水……合わせて……!」
瞬間、地面が隆起し、泥の壁が立ち上がる。
そのままドラゴンの足元を絡め取った。
《マッド・バインド発動確認。センスあるね!》
「実況すんな!!」
ドラゴンがもがく中、真一は最後の一撃を構える。
胸の奥が、熱く、痛いほど燃える。
(神様……もう一度、誰かを救えるなら……!)
手に宿る光。
全属性が一瞬で混ざり合い、眩い閃光になる。
「フルエレメント・バーストッ!!!」
白い爆光が空を裂き、
ドラゴンは咆哮を残して消し飛んだ。
しばらくして、静寂。
風だけが草原を撫でていく。
「……終わった、のか?」
体中ボロボロ。けど、生きてる。
周囲の人たちが駆け寄ってくる。
「す、すごい!一人でドラゴンを倒したのか!?」
「こいつ……何者だ?」
「ただの……社畜です。」
そう言って、笑った。
⸻
◆エピローグ
夜、神様がふたたび現れる。
星空を背に、少しだけ真面目な顔。
《あのドラゴン、本当はテストの予定じゃなかった》
「……は?」
《別の世界から流れ込んだ異物。君がいなければ街は消えてた》
「マジかよ……」
《ありがとう。あの時、助けた子どもがね。今日、あの街で笑ってたよ》
胸の奥が、また温かくなる。
「そっか……それなら、よかった。」
神様はふっと笑う。
《君、ほんとに変わらないね。
仕事みたいに、命も真面目にこなすタイプ。》
「悪い癖でね」
《でも、その癖が世界を救ったんだよ。》
光が再び真一の手の中に宿る。
“神の加護”が強化された印だ。
「……ありがとう。じゃあ、次は残業代、くださいね」
《やだよ、それ経費外♡》
「経費の概念やめろォ!!」
草原に響く笑い声。
二つの太陽が沈み、夜空に星が瞬く。
──神様の手違いから始まった物語。
その“手違い”が、今夜も誰かを救っている。
⸻
✅次回予告
第4話「ギルドでの評価、そして“加護持ち”の噂」
ドラゴン討伐の翌日。街中が騒然。
だが本人は「書類提出期限」を気にしていた──!?




