1.交わる視線
お盆休みなので勢いで書きました。
楽しんで読んでもらえたら嬉しいです。
ある時は砂に塗れた廃屋の中で。
またある時は血の匂いが充満する中で。
またある時は雨風吹き荒れる海原の中で。
彼らは必ず出会った。
外見も、立場も、そもそも時代すら違うというのに視線を交わした瞬間に互いに『そう』だと気が付く。
一度だって真面に会話を交わしたことがない。
あるとすれば互いの刃のみ。
それでも心に残った。
垣間見えた目が、いつまでも頭から離れない。
その所為でどの生でも一人で生き、一人で死んだ。
孤独ではなかっただろう。
互い以上に執着する相手が出来なかったのだ。
これは呪いだろうか。
いや、例え呪いだったとしても、解くつもりはなかった。
あぁ、まただ。
その男を目にした瞬間に湧き上がった感情。
知らないはずなのに知っている男の姿にセノは大きく息を吐きだした。
寄りにもよってこの戦場であの男を見つけるとは。
そして、やはり彼は敵方で。
短く整えられた髪と鎧に負けないしっかりと鍛えられた体。
他の誰よりも早く強く先陣を切る姿は敵ながら見惚れてしまう。
じっと見つめていれば視線に気が付いたのだろう。
振り返った彼の眼は、振るわれた刃よりも鋭かった。
視線を感じて振り返る。
理由はないけれど、意識が引かれた。
気持ちが急くままに戦場で武功を上げ続け、気が付けた一つの戦場を任されるに至った。
視線の先には敵の装備を身につけた青年の姿。
細身でありながらもその身に着けている勲章から決して見た目で判断してはいけない相手だとわかる。
知らないはずなのに、知っているその気配。
今回もか、と言葉にはせず胸の奥だけで呟く。
「「……今生こそは、と願ったのにな」」
奇しくも重なったつぶやきは、剣戟の音に紛れて消えた。
少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。
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