第8話 レイリーの告白!?
あれから、1年が経った。
ビジューは13歳になった。
そして今目の前に、暗い顔をしたレイリーがティーカップに手をかけたまま何かを言いたそうに黙り込んでいる。
ここは、彼女の部屋の外にあるテラス席だ。
一年前のあの日、公爵邸に帰ってからは、
(なんでわたしあのとき)
といった後悔の海にひたすら溺れては逆に
(なんて可愛い声だったんだろう)
と推しの声を反芻して幸せに身悶えていた。
しかし、このままではなんの進展もなく18歳まで会えないかもしれないという不安におそわれ、作戦を練り直し、推しに近づく前にレイリーを攻略することにした。
彼女が推しを蔑んでいることは許しがたいが、そう教育した両親が悪いのだ。
まだ幼い彼女には自分自身を確立する哲学もなく、親が言うことが絶対になっているはず。
前世毒親に育てられた私にはわかる。
洗脳されているのなら、こちらが洗脳してしまえばいい。
レイリーは貴族主義で育てられたからこそ、公女である私のことを崇拝しているに等しい。
高貴な存在だと心の底から信じている。
身分など、人の本来の価値を決めるにふさわしいものでは全くないのに。
私はあれからレイリーと距離を縮め、頻繁にお互いの家を行き来する関係になった。文通はもちろんのこと、お菓子を作っては一緒に食べてお茶をした。街へ出掛けてはレイリーに似合うアクセサリーや、お茶菓子をプレゼントした。
最初は腹立たしかったし、推しに近づくために利用してやろうかと思ったが、案外素直で純粋な心を持っているレイリーを可愛いと思うようになった。
身分で人を判断してはいけないと伝えたことも
『平民にも分け隔てなく接することができる公女様はまるで聖女様のよう』
と私をさらに心酔するためのきっかけになった。
あとは推しが傷つけられないためにも、私が昔から大魔法使いに憧れていて、魔力の強い人を見ると惹かれてしまうことを伝えておいた。
呼び方も公女様からビジュー様に変わった。
また、伯爵家に行った際にたまたま母親から傷付けられたところを目撃してしまい、上手く助けたこともあった。
前世の自分と重なったこともあるが…、助けたいと思うにはレイリーのことを好きになっていたのだ。
案外ちょろく洗脳されたのは自分自身かもしれない…
「ビジュー様に、隠してたことが、あります。」
ようやく口を開いたレイリーは少し震えていた。
《これで嫌われてしまったらどうしよう》
何かを打ち明けることで、私から失望されることを恐れているようだった。
1年も更に鍛錬したことで、だいぶ人の命の叫びが聞き取りやすくなった。
(これは…もしかしなくても…推しにまつわることでは!?)
《だけど悪いことを隠していてはだめだとビジュー様は言ったわ》
《勇気をだすのよ》
ティーカップから手を放し、震える手を押さえるように両手を胸の前で握りながら、涙をこらえているレイリーを見ると、なんだかこっちまで悲しくなった。
「実は…」
彼女の意思を尊重したくて、待っていたが…なかなか口火を切らないので助け舟を出すことにした。
「私も聞きたかったことがあるの」