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聖女

今日は、レモンドと神殿を訪れた。

たっぷり寄付金をもってきた。

あの時の元凶の塊である賢者に近づくためだった。

先生の考察通りビーを破裂させたのかどうか、事実を確認するために、通うことにした。

神殿を味方につけるためにも支援金はさっさと支払って見学という名の調査をした。

神殿はかなり広大で立派な建物だった。

神を信仰しているということで、神の銅像が建てられている祈り部屋に通された。

そこには見覚えのある顔があった。

ピンク色の髪型をした少女。

熱心に祈っていたようだが、僕が同じ部屋に入ってすぐに胸に手を当てて、崩れるように倒れた。

まだこんな小さいのに、魔力共鳴を起こすのか…。

神殿内を案内してきた猊下とやらは、慌てていたが僕は手で制すと、スタスタと彼女に近づいて行った。

片膝を床につけて、彼女の胸の前に手をかざすと魔力を送って調整をした。

すぐに症状は落ち着いて、呼吸も整ってきた。

すると彼女は起き上がり自己紹介をしてきた。

「あの、助けてくださりありがとうございます。私はエマと申します。こんなすぐに治療できるなんて賢者様でしょうか…?」

回帰前と同じようなセリフに少し笑ってしまった。

「いえ。私は賢者ではありません。」

「あっそうだったんですね!失礼いたしました。貴族の方でしょうか?助けてくださったお礼に、どこか怪我や痛むところがあれば治療させてもらえませんか?」

聖女はそう言った。

痛むところか…

ビーは僕の心が痛いと叫んでいると教えてくれたな。

だけどここは、ビー以外に触れられたくはない。

「僕のせいで魔力共鳴を起こしたのだから、魔力を送るのは当然のことだしお礼はいらないよ。」

横にいた猊下は僕のことを大公だと紹介しようとしたが、やめてくれと止めた。

聖女と関わるつもりはない。

「祈ってるところ、邪魔して悪かったね。では」

踵を返して、猊下と共に部屋を出ようとしたが、聖女が腕を掴んできた。

「おっお名前だけでも教えていただけませんか…」

正直、ビー以外の女の子に触れられても何にも感じなかった。むしろ不快に近い感情が湧き起こってきた。

「聖女様、簡単に触れてはなりません。大公閣下ですよ」

言わなくていいのに猊下が紹介をした。

「たっ大変失礼いたしました。大公閣下にご挨拶申し上げます。ご無礼をお許しください…!」

ばっと手を離すと、慌ててエマはカーテシーをした。

「そんな畏まらなくていい。もう一度言うが、僕が原因で君は倒れたんだ。申し訳なかったね。それでは急ぐのでここで。猊下、違う部屋を案内してください。」

早口でまくしたてると、僕はレモンドと共に部屋を出た。

猊下は支援金を打ち切られるのを恐れたのか僕の機嫌を損ねないようにかなり気を遣ってきた。

いろんな部屋を紹介してくれたが、結局賢者には会えなかった。

「先ほど聖女が、賢者という名前を出していたが、そのような人はいるのか?」

思い切って猊下に尋ねると

「はい。大賢者様は9才という若さにも関わらず大きな魔力をもち、ここでは怪我人の治療をしてくれています。今日は聖女様が治療をしてくれる日なので、違う日に大賢者様は来ることになっています。」

と答えた。

なるほど、だから賢者と聖女はまだ会えてないんだな。

ビーに目をつけられては困るから、二人で仲良く愛し合ってもらえないだろうか…。

ビー曰く″みんなヒロインに一目惚れする″らしいし…。

賢者を殺すなんて簡単だが、それでは根本解決にならない。

面倒ではあるが神殿に通って、レモンドと調査を続けることにした。


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