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第17話 ヤンデレへの道を阻止?

推しが、私の手を取ってエスコートしてくれている。

エスコートしてくれている。

夢だろうか。

《僕はちゃんと出来ているのかな》

ぎこちなく歩く推しの″慣れてない感″も、たまらなく可愛い。

「あの…こちらはマロニエの木です。」

推しの目をじーっとみていたら

「あっ…あの、マロニエはこちらで…」

ほんのり頬を赤らめながら、目を逸らしてあわあわとマロニエの木の方向を手で示してくれた。

はっと我に帰ってから木を見上げた。

私の推しはなんて可愛いんだろう。声も可愛い。というか二人きりとかなんてご褒美なんだろう。

「今は初夏ですので…赤みがかった白色の花が咲いています。実の殻にはとげがありますので、落ちていても触らないようお気をつけください。」

赤く染まったほっぺたとか、なんて美味しそうなんだろう。

私にも子供ができたらこんな感覚になるのかな。

可愛すぎて食べたい!だなんてよく聞いたことがあるけど、私の両親もそんなことを言っていたのかしら…。

「あ、あの公女様…」

あっまたやってしまった。

「ええ、教えてくれてありがとう。」

にっこり笑うと照れたように推しが笑ってくれて、心臓が止まりそうになった。

深呼吸してから、気を取り直して本題に入った。

「友達に、なってくれる?」

少し首を傾げて膝を曲げて、まだ私より身長が低い推しと目線を合わせた。

「ぼっ…僕でよければ、お願いします」

《嬉しい…初めての友達だ》

そうだった。推しは魔力が高くて恐れられていたから孤児院でも友達ができたことがなかったんだ。

ツーンと鼻の奥が痛くなった。

「じゃあ、友達のハグね」

ギュッと抱きつくと

「あっ」

と小さい声をもらしていて、どうしようもなく愛しくなった。

可愛いが、すぎる。

こんな小さくて可愛い子が、本当に絶倫ヤンデレになどなるのだろうか?

ヒロインにかかわる男性は全て死ねば良いだなんて思うところを想像できない。

ヒロインを監禁したいだとか、声が出なくなるまで抱き潰してやるとか…

SNSでそういうシーンのショートムービーをみたときはドキドキしたし、色気に痺れてしまったけど、もし私が友人として愛情をかけていったら、たくさんそばにいることで孤独感や寂しさがなくなればヤンデレにならないかもしれない。

ヤンデレ好きとしては残念ではあるが、推しには幸せになってほしい。

ヒロインと心から結ばれることができたら、きっと幸せになれるよね…。

私はそっと体を離した。

それにしてもどうして魔力共鳴による、衝撃がなくなったんだろう。

「あ、あの友達って他にはどういうことをしますか?」

まだ頬が赤いままの推しは私に聞いた。

「そうね。街へでかけて服を見たり、お茶をしたり、観劇をみにいったり、あとは私の家で遊んだりね」

「…!!」

推しの目がキラッキラと輝いた。

期待の眼差しが、なんて可愛いんだろう。

「興味ある?」

ふふっと微笑んだら、はにかみながら推しは頷いた。

あーーーー11歳でよかったーーー

こんな幼くて純粋なところをみれるなんて貴重すぎる。切り取りたいこの笑顔!なんでカメラやスマホがないんだ。

あっブルシエル様なら開発できるかも。

でも、あと1年で学園へ入ることになるし…

今は心に焼き付けて、推しと遊ぶ時間を楽しもう。

決意新たに、推しとの二人タイムを終わらせたのだった。



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