学園都市シューレ
未完成品です。
暇な時間にぼちぼち完全させていきます。
春。
新入生たちを、桜の花びらが彩る道が迎える。
500年前に起きた災害で世界の形が大きく変わってしまっても、季節という星のシステムに変わりはない。今ではこの学園都市シューレでしか見ることができない桜の街道は、世界で唯一花見ができる場所として有名な観光地になっている。
災害。現在は崩壊の魔害と呼ばれる500年前の大災害によって、世界地図は大きく歪められた。
かつて隆盛を極めた科学文明は、突如世界中に現れた強力な魔物によって崩壊し、防護壁を築き上げることができた国や都市のみが点在する世界の形へと、急激に変化していった。壁の外には魔物が跋扈し、命の危険と常に隣り合わせな世界。
しかし、魔害へ対抗するかのように、人間の中にも強力な力を持つ者も現れた。彼らは国の防衛を行い、さらには魔物が生まれる元凶である魔王を滅するために旅をする。
人の身で魔力を行使し魔を狩る者、【退魔士】
学園都市シューレは退魔士の原石を育て、排出するための都市である。この世界では、10歳になると魔力を持つか否かの測定が行われ、退魔士の才があれば12歳を迎えた年に学園都市へ集められ教育、及び実習を経て各都市へ配属、または冒険者として魔王討伐の旅へ出ることになる。魔王が居を構える最南端の魔王城より反対側、大陸最北端に位置していることからも、いかにこの都市が人類にとって重要かということを窺い知れるだろう。
そんな人類の重要拠点である学園都市、その魔導船発着場に巨大な旅客魔導船が着陸し、搭乗口が開く。
搭乗橋が展開され、12歳の少年少女にとってはかなりの高さの階段を恐る恐るといった面持ちで降り始めた。すでにホームシックを発症しかけている弱気な少年や、高さのあまり足が竦んでしまっている少女もいる中、騒がしい少年少女が3人。
「プリン返せ!!!!!!!!!」
「いだだだだだだ知らない!!!知らな「うそつけ!!!!!!」あばばばばばば」
「「「「うわぁ…………」」」」
周囲の少年少女、ドン引きである。
というのも、先ほどから赤髪の少年が黒髪の少女に締め上げられている光景が、かなり長時間続いている。しかも、どうやら少女から電気が流れているようで、赤髪の少年がちょっとまずい感じに痙攣し始めている。最初は子供の喧嘩かと放置していた大人たちも止めようという意思を見せるが、帯電している2人に触ることができず、あわあわしているだけだ。
「そこまでにしようね」
他の子供たちに混ざって傍観していた白銀の髪の少年が2人の襟首を持ち上げ、引きはがした。
「周りの人たち見てみな?ドン引きしてるよ?」
「だって!黒衣が!わたしのプリンを!」
「食べたとこ見たの?」
「ぐぅ……」
「ぐぅの音は出たか」
黒髪の少女は言い返せずにいるが、どうやら納得はしていないようだ。
銀髪の少年は赤髪の少年に向き直る。
「で、緋真くんは食べたの?」
「ちなみに全然食べた」
「ほらーーーー!!!!!!!!!!」
「食べたんだぁ…」
銀髪の少年と、話を聞いていた群衆が呆れ眼で赤髪の少年を見る。
はぁ、とため息を吐いてから銀髪の少年が言い聞かせるように話す。
「緋真くんは次零樰の好物が出たら素直にあげること。零樰もそれでいい?」
「「は~い…」」
緋真と呼ばれた少年も、零樰と呼ばれた少女も不服そうではあるが、ひとまずといった風にうなずく。
そのまま銀髪の少年が2人の襟首を持った状態で階段を下る、が、どうやら銀髪の少年が見えない足元で静かな争いを続けているらしく、時々2人の身体が大きく揺れる。
「…ああもうやかましい!」
「「!!??」」
にこやかに諭していた銀髪の少年が2人まとめて地面へと放り投げる。
ガンッゴンッとかなり痛そうな音を立て赤髪の少年、黒衣緋真と黒髪の少女、零樰るちあが階段から発着場のコンクリートまで打ち捨てられ、そのまま痛みで地面を転げまわる。
「ひどい!これが王子のやることかよ!」
「時には粛清も大事だと思うんだ」
「どくさいせいじ!!」
表情だけはにこやかさを保ったまま銀髪の少年、アリス・ノアはゆっくりと話す。
「ねぇ、今緋真くんが言った通り、ぼく王子なんだよね。」
「はい…」
「体裁っていうのも大事だと思うんだ」
「はい…」
「見て?周りの目。特に同じ新入生の目。完全に怯えてるよね?」
緋真と零樰が周りを見渡すと確かに、同い年かつこれから共に友情を深めていくであろう仲間たちの目が、完全に不良グループを見るちょっと怯えた目をしている。なんなら付き添いで同乗していた高等部の生徒の大半も顔を引き攣らせてこちらを見ていた。
「すいませんでしたーーーッ!」
それは完全に息の合った素晴らしい土下座だった。古き良きジャパニーズDOGEZAの文化は、500年たった今も脈々と受け継がれていた。
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「まったく、君たちさぁ」
「ごめんって」
その後、アリスが2人の打撲部位を冷やしつつこれから過ごす宿舎へと向かっている。
赤髪の少年、黒衣緋真はコンクリートにぶつけたおしりをさすりながら申し訳なさそうに呟く。
黒髪の少女、零樰るちあはとても不服そうにおでこをこすっている。
3人は同郷の出身だ。冬の国ノアという、年中雪に覆われた国からこの学園都市へ来た。
その名の通り、アリス・ノアはその国の王族であり第二王子にあたる。王族と言えど有事の際は前線に立ち指揮、及び自らも戦う必要があるため、18歳までの6年間をこの学園都市で過ごすのだ。
余談であるが、黒衣緋真と零樰るちあは平民の出である。
アリスが8歳の時に城を抜けて家出した際に仲良くなった。当時はアリスが王族とは知らず、判明した時には大慌てで各家の両親が謝罪をと城へ訪れ、平謝りをしていた。
当の国王、アリスの父は一切気にしていなかったようだが。
そんなことがあった上、なんと2人とも退魔士適正があったのだ。故に、半分付き人という名目で同じ宿舎への入居で手続きがされたのである。12歳の子供たち的にはただのお泊り気分でしかない。
同年代の子らに比べ落ち着きのあるアリスも、心なしか上機嫌なようだ。
「この後は部屋に荷物を置いて、夕飯を食べに食堂だね」
「わーい!おいしいかなぁ」
「プリンあったらちょうだいね」
「いやだが??」
プリンを強請ったのが緋真、断ったのがるちあである。再び始まるバトル。バチバチ。
視線の交差の揶揄の意味でのバチバチではなく、本当にるちあが電気を纏ってバチバチし始めている。
「あ、あの…」
「ア゛ァン!?」
「ヒッ」
るちあが鬼の形相で振り向く。完全にたちの悪いチンピラである。
緋真やアリスにとっては見慣れた顔だが、たった今声をかけた人物にとってはそうではない。るちあが振り向いた先に居たのは、小さく円を描くように湾曲した角を頭に持つ、桜のような薄ピンク髪の少女だった。勇気を出して話しかけたものの、あまりにも凄まじい形相で睨まれてしまい小動物のように固まって震えている。
「あ…の…その…」
「…かわいい」
「え?」
「かわいいー!!!新入生?この寮に入るの??どこの部屋???」
「零樰ストップ、腕章見てみな」
このシューレでは学生には制服が貸与され、デザインには学園都市内での身分が刻まれる。謂わば最も分かりやすい身分証明書だ。
腕章には学年を。
初等部1年・ピンク/2年・水色/中等部1年・赤/2年・青/高等部1年・白/2年・黒
襟のバッジには種族を。
人間・白/幻人・紫/魔人・黒
さて、るちあが捲し立てたピンク髪の少女。頭部の角から分かる通りバッジの色は紫。腕章の色はーーー
「水色…」
正しく顔面蒼白。るちあの顔は一瞬にして真っ青へと血の気が引いていき、口をあんぐりと開けている。
10秒ほど固まった後、るちあは凄まじく洗練された動作で膝の埃を払い、宿舎の廊下へ膝をつき、両手から頭の順で地面に平伏した。その美しさたるや、全国のサラリーマンが天晴れと拍手する程であった。
「ほんとうに、もうしわけございませんでした」
「あぁぁ!そんな!顔を上げてください!むかいが小さいのがわるいので!ほんとうに!」
「くっ、先輩に自虐をさせてしまった!」
零樰額を地面に擦り付けながら歯噛みをするちあ。むかいと名乗る少女が立ち上がらせようとするも頑なに土下座の姿勢を崩さない。謝罪は、相手が許すと言ってからが本番なのだ!王城で国王が呆れかえるまで五体投地を貫いた父親から、るちあが学んだことである。
とは言えこのままでは何も進まないので、みかねたアリスが尋ねる。
「むかい先輩は、零樰のお迎えですね?」
「あ、はい」
「え?あーーーー!!!!!」
零樰、声がでかい、るちあ。
シューレに置かれている学園は全て初等部2年、中等部2年、高等部2年の計6年制である。
受講可能な講義はそれぞれの段階によって決まっており、2年以内に必須科目と選択科目の合計で一定数単位を取得することで、次の段階へ進級できる。尚、選択科目は1年生も2年生も同じ講習に出席することになる。
その為、シューレでは学園案内や情報交換の観点から同段階の生徒を綯い交ぜにして部屋を割り振る。




