表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/9

アフタートーク:歴史の味、未来の一杯

(エンディングテーマ曲の余韻が消え、スタジオの照明が完全に落ちた後。場面は再び、不思議な調和に満ちた休憩室「SalondesÉtoilesPerdues」へ。先ほどの幕間よりもさらに照明は柔らかく、落ち着いた雰囲気。テーブルの上には、先ほどの飲み物に加え、それぞれの個性を映した料理が並べられている。湯気が立ち上るもの、彩り鮮やかなもの、豪華なもの、素朴なもの…。対談者たちは、すっかりリラックスした様子でソファに座ったり、テーブルの料理を眺めたりしている。)


岡本太郎:「(テーブルの上の、原色が爆発するような大皿を指さし)さあさあ、食え食え!『太陽のプレート』だ!まあ、俺がさっき、そこの厨房で適当にこねくり回して作ったんだがな!エネルギーだけは保証するぜ!」


(料理:赤や黄色のパプリカが大胆にカットされ、スパイスで真っ赤に焼かれた鶏肉、緑色の奇妙な形のズッキーニなどが無造作に盛り付けられている。見るからに刺激的。)


丹下健三:「(岡本の皿を見て苦笑しつつ、自身の前に置かれた端正な重箱を開け)…私は、少し落ち着いたものを。日本の『モダン懐石』を、ピンチョス風に仕立ててみました。見た目の調和も、味のうちですからな。」


(料理:小さな器に、季節の野菜を使った色鮮やかなテリーヌ、炭火で炙った魚介のマリネ、丁寧に巻かれた出汁巻き卵などが、計算された美しさで並べられている。)


豊臣秀吉:「(満足げに頷き、金箔が散らされた豪華な器が並ぶ盆を指し)うむ!これぞわしからの差し入れ、『太閤御膳』じゃ!日の本の海の幸、山の幸の粋を集めてみたわい!まあ、遠慮なく食すがよい!」


(料理:伊勢海老の具足煮、鮑の酒蒸し、旬の魚の刺身、色とりどりの野菜の炊き合わせなどが、目にも眩しい小鉢に盛られている。)


レオナルド・ダ・ヴィンチ:「(自分の前の、大きな木の皿を穏やかに示し)私は、故郷トスカーナの素朴な味を。『ルネサンス・プレート』とでも名付けましょうか。焼きたてのパンに、良いオリーブオイル、チーズ、そして果物…思索の合間には、こうしたシンプルなものが一番です。」


(料理:香ばしいパン、芳醇な香りのオリーブオイル、数種類のチーズ、プロシュート、そして瑞々しいイチジクやブドウが、自然な配置で盛られている。)


岡本太郎:「(秀吉の御膳を見て)おおっ!こりゃまた派手だな、古狸!さすが、見栄っ張り!」


豊臣秀吉:「(岡本のプレートを見て)むむ!なんじゃこの毒々しい色は!食えるのか、これは!?」


丹下健三:「(レオナルドの皿を見て)…実に合理的で、美しい盛り付けですな、先生。」


レオナルド・ダ・ヴィンチ:「(丹下の重箱を覗き込み)こちらも、細やかな手仕事と美意識が素晴らしい。日本の職人技は、実に見事です。」


(それぞれ、他の対談者の料理に手を伸ばし、味わい始める)


岡本太郎:「(秀吉の伊勢海老にかぶりつき)んん!うめえじゃねえか!見かけ倒しかと思ったぜ!」


豊臣秀吉:「(岡本の鶏肉を恐る恐る口にし)むっ!?…辛い!しかし…なんじゃ、この力が湧いてくるような味は!悪くないわい!」


丹下健三:「(レオナルドのパンとチーズを味わい)…素材の味がしっかりしている。シンプルながら、深い味わいですな。」


レオナルド・ダ・ヴィンチ:「(丹下の出汁巻き卵を口にし、目を丸くして)…これは…なんという繊細な味わいでしょう!卵だけで、これほどの表現ができるとは…!」


(和やかな笑い声が部屋に満ちる。食事をしながら、対談の感想や、お互いの時代への興味など、よりくだけた会話が交わされる)


岡本太郎:「しかし、あの小娘あすかのこと、なかなかやるじゃねえか。俺たちをこうして集めやがって。」


丹下健三:「ええ。最初は驚きましたが、実に刺激的な経験でした。特に、異なる時代の視点に触れられたことは、大きな収穫でしたな。」


豊臣秀吉:「ふん。わしの時代の常識が、未来では通用せぬことも多いと知ったわ。まあ、わしのやり方が一番だとは、今でも思っておるがな!」(豪快に笑う)


レオナルド・ダ・ヴィンチ:「(ワインを飲みながら)人間の本質は、時代を超えても、そう大きくは変わらないのかもしれませんな。悩み、喜び、創造し、そして過ちも犯す…我々は皆、学び続ける旅人なのでしょう。」


岡本太郎:「(丹下に)おい、丹下君!今度、俺のアトリエに来いよ!もっと面白いもん見せてやるぜ!」


丹下健三:「(少し驚きつつ)…それは、光栄ですな。是非。」


豊臣秀吉:「(レオナルドに)レオナルド殿!わしの城に来れば、黄金の茶室で茶を馳走してやるぞ!あんたの絵と交換、というのはどうじゃ?」


レオナルド・ダ・ヴィンチ:「(微笑み)それは魅力的なお誘いですな、太閤殿下。機会があれば、是非。」


(楽しい時間は続くが、ふと、部屋の空気が変わる。壁のタペストリーが微かに揺らめき、どこからともなく、美しい、しかし少し物悲しい、星のきらめきのような音が聞こえ始める。)


岡本太郎:「…おっと、そろそろお開きの時間らしいな。」


丹下健三:「…名残惜しいですが、仕方ありませんな。」


豊臣秀吉:「ふん。元の時代に戻って、やり残したことを片付けねばならんわ。」


レオナルド・ダ・ヴィンチ:「…ええ。探求の旅は、まだ続きますからな。」


(彼らは、ゆっくりと立ち上がり、互いに顔を見合わせる)


岡本太郎:「じゃあな!達者でやれよ、お前ら!」(ぶっきらぼうに手を振る)


丹下健三:「皆様、実に有意義な時間でした。また、どこかの時空で。」(丁寧に一礼する)


豊臣秀吉:「さらばじゃ!この秀吉との出会い、末代までの誉れと思え!」(威厳たっぷりに言う)


レオナルド・ダ・ヴィンチ:「(穏やかに微笑み)皆様の未来に、幸多からんことを。Arrivederciアッリヴェデルチ…また会いましょう。」


(星のきらめきの音が強まり、部屋全体が柔らかな光に包まれる。一人、また一人と、その姿がゆっくりと薄くなり、光の粒子となって消えていく。最後に残ったレオナルドも、静かに微笑んで目を閉じると、その姿は掻き消えた。)


(部屋には、食べかけの料理と飲み物が残されたテーブルだけが静かに存在している。窓の外には、ただ美しい星空が広がっている。)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 やっぱり岡本太郎のインパクトが強かったですね。  それ故に一時は丹下健三が彼の咬ませ犬扱いになるんじゃないかと心配しました。実際は岡本太郎が演出上些かお馬鹿扱いされた感じでしたけど。(笑)  この…
岡本さんってバタイユとも おともだちなんでしたっけ。 あすか様が得意そうな人物ですよね。 栗本慎一郎さんあたりも、ゲストに 迎えたらおもしろそうだと思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ