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作者: 葉沢敬一

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 今年の夏は蝉の鳴き声がしない。そもそも幼虫から羽化するのに素数年かかることが知られている。


 そして、SNSでは某東アジア人が昆虫を土からほじくり返して片っ端から食べているから減っているのでは無いかという噂が流れている。


 私は昆虫学者で、蝉の研究もしているのだけど、大学構内の緑地で掘り返しているとは聞いてない。一方、蝉が見当たらない。


 林で、幼虫を掘って探していると、妙な幼体が出てきた。


 手のひら大の少女。薄く青白い裸体で、私は戸惑った。


 なんだこれは。マンドラゴラを掘り当てたのかと思った。


 まるで妖精のような姿を見て、その場で写真を撮り、採集箱へ入れた。


 なんだかわからないけど大発見だ。まあ、人間みたいなニンジンや大根が採集されることもあるので、それじゃないかなとは思ったけど。


 研究室に帰って保管することにする。殺すことはしない。どんな姿に成長するか気になるからだ。

 じっと見ていると目が覚めたらしい。置いておいた蜜を飲み土に潜り込んだ。


――先生、なんすか、それ?


 学生が質問する。わかるか、ボケ。


――知らんが珍しいものだ。様子観察するから慎重に扱ってね。


 しばらく観察していると、地上に出てきた。


――先生、羽化するようですよ。


 木に留まって表面が固くなってきた。なるほど。


 学生に、講義に出ないといけないから見ておいておくれと言いつける。


 しばらくして、講義を終えて帰ってきたら学生が首から血を吹いて事切れていたのを見つけた。


 木には人の姿の抜け殻があった。

 ということは羽化した「それ」が襲ったのか?


 研究室の片隅で、

「ジジジジ、ジーワジーワ」と「それ」がでかい音で鳴き始めた。


 とっさに捕虫網で捕獲。床に倒れている学生の死体を前に途方にくれた。

――どうしよう……

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