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第九話 ミミットの訓練

 ある日、俺がペルダと一緒に訓練しているとなにやら視線を感じた。視線を感じた方に顔を向けると、視線の正体はミミットだった。ミミットがとても興味ありげにこちらを覗いていたのだ。

 しっぽをブンブン振ってる……可愛いな。


 このまま放置しておいて、あの様子を見るのもこれはこれで楽しいので悪くないが、それは悪いのでとりあえずこちらに呼ぶことした。


 「ミミットちゃん、こっちおいで」


 ペルダが呼ぶと、恥ずかしがりながらも駆け足でこちらへやってきた。


 「どうしたんだ?俺たちの訓練に興味があるのか?」


 ペルダはミミットに問いかける。

 するとミミットが縦に首を振ってうなずく。


 ミミットは今年で八歳、そろそろ自衛のすべを持っておくのも悪くないだろう。この機会に身に着けておいて損はない。

 ということで一緒にミミットも訓練することになった。


 まずは、剣術の練習だ。体力もつけることができるし、こちらを先にやらせて体力づくりの一環としてやらせるのも悪くない。

 まだ体が小さいので、ミミットには短剣ほどの大きさの木剣を渡す。


 まずは素振りからだ。もう十歳のミミットならば家事である程度は筋力もついているはずだし、もしかしたら良い素振りが見れるかもしれない。ミミットは木剣を頭の上に振り上げ「えいっ!」という声と同時に振り下ろす―――


 へにゃへにゃ~

 ……あ、あっれえぇー?想像以上にしょっぼい、剣がのっろのろに振り下ろされたし、女の子だからしょうがないのか?あまりの様にペルダも口がぽっかんと開いたままになっている。さすがのペルダもかなり驚いている。

 とりあえず仕切り直して、今回はお手本を見せながら解説して振らせてみる。


 「ミミット、足は肩幅に開いて片方の足を少し後ろに置く。勢いで振るんじゃなくて、力を伝えるように、最初は肘を少し曲げたまま振り下ろしても伸ばさないで、剣に振り回されないようにするんだ。」

 「は、はい。わかりました」


 ペルダの説明を受け終えたので、ミミットももう一度仕切り直して剣を言われた通りに振ってみる。


 「え~い!」


 ふにゃふにゃ~

 ……あ、あっれえぇー?デジャブかな、あんま変わらん。そういえばミミット、メイドになったばっかりのころ、要領が悪くてなかなか家事が身につかなかったよな。しょっちゅう皿割ってたし。


 すると、もうそろそろお昼ご飯の時間になるので、ペルダは先に家で料理を作ることになった。俺とミミットは庭に残って続きをすることに。


 はっはっは。ならしょうがないな、俺が素振りを手取り足取り腰取り、教えてあげるしかないな~。グっふっふっふっふ。


 すると突然、家の外から羊が家の庭へやってきた。

 この村は自然に囲まれてるので、このような動物が来る事態は日常茶飯事のようなものだ。


 なのでミミットも俺も驚かずにその様子を見るが、特に気にせずに訓練の続きを始めようとすると、羊はミミットの場所までのそりのそりと歩いてきた。


 「え、え、何ですかひつじさん」


 徐々に距離を詰める羊、そして―――


 「にゃっ!何するですか!!」


 羊はミミットの股に頭をくぐらせ、背に乗せた。器用なもんだな~。


 「あ、あの、あのっ助けてくれると嬉し、にゃふんっ!」


 羊の背で股がこすれ、喘ぎ声をあげるミミット

 感じているのか顔がほてっている。あんなに頬を赤らめちゃって、色気を感じるぞ。

 はあ~はあ~してるミミットえろかわいいすぎ、ぜひあの顔のまま俺の指ペロペロして欲しい。


 「助けてくださいごしゅじんさま~~!!」


 すると、ミミットが目に涙を浮かべながらこちらに助けを求めてきた。だが、どうだ?今後もこんなハプニングが起きるだろうか。もうこんなかわいらしいミミットを見れないかもしれないぞ?


 そう思うと、こんなにかわいいミミットが羊にライドオンしながら喘いでいる姿を、俺はもうしばらく眺めていたいと思ってしまった。

 こんなことを思わせてしまうほどにかわいすぎるミミットが悪いのだから。うんうん。


 「ご主人様!さっきから何でしみじみとこちらを見ているのですかぁ!?首を頷けてないで早く助けてくださぁ~~い!!」


 この後、ミミットを十分耐久であのままにした後に助けた。さすがにあれを十分も続けたのが疲れたのか、もうぐったりとして動かなくなった。……すまんね、ミミット。



――――――――――――



 お昼を済ませた俺たちは、ミミットの剣術は今日は一旦諦めて、魔術の練習をすることにした。人には得意不得意があるものだからな。


 とりあえず今日は低級魔法を五属性くらい試してみて、適性がある属性があるか探してみることに。


 「燃えよ灯火、我らに温もりを与えよ、ティンダー!」


 低級の火魔法を唱えた瞬間、ミミットの手の先からわずかに火の種が生まれる。……が一瞬で消えてしまった。その様子にミミットは非常に残念がっている。


 「ダメだったですぅ~」

 「そんなに落ち込まないで、一瞬出ただけでもいいほうだから」

 「本当ですか?」

 「「うんうん」」


 俺とペルダは一緒にうなずく。実際、低級魔法でも最初は唱えるだけで魔法が発現しない人もいる。なので決して噓はついていない。当の本人は喜んでいるようなので安心した。


 このまま続けて他の四属性の魔法も試していく。いちいちやる度に背伸びしたり、耳や尻尾がピーンってなっているのは見ていてとても微笑ましかった。


 そして、ミミットは五属性の魔法を試したところ、発現させることができたのは最初の火魔法と風魔法だ。他の属性の魔法がダメということでは決してないが、とりあえず今試した魔法で適性が特にあった魔法を中心に訓練していくことになった。




――――――――――――



 数時間後、魔法の訓練を続けて日も暮れてきたので晩ご飯の支度をすることに。


 そういえばふと思ったが、ミミットの子猫姿を出会った日から一回も見ていない。なぜ変身しないのだろう?そもそも今の年なら子猫ではないかもしれないが。

 とりあえずミミットにこのことを聞いてみよう。台所へ行くとミミットの姿があったので先ほどのことを尋ねてみる。


 「ミミット、ちょっといいかな?」

 「はい?どうしたんですかご主人様」

 「ちょっと不思議に思ったことがあってさ。ミミットって最初に俺と会った時、子猫の姿だっただろう?最近はあの姿を一回も見ないなって思って。」

 「そのことですか」

 「何か理由があるの?」


 すると、ミミットの表情が暗くなり、ゆっくりと顔を下に向ける。何か込み入った事情があるのだろうかと心配になる。するとミミットが口を開く。


 「……私たち獣人は皆が皆、私のように変身できる獣人ではありません。しかし、獣人は獣化という変身能力を使える方は、獣化によって身体能力を上げることができるんです。私もあの日、襲撃にあって死にそうだったので獣化をしなんとか生き残ることができました」


 なるほど、だからあの日は獣化していたのか。しかし、獣化しないといけないほどの何かがあの森にいたのか?一体何に襲われたんだ?


 「ちなみに何に襲われたの?」

 「……本当にやつは恐ろしかったです。やつは……」

 「ごくり」

 「……ハトです」

 「…………え、ハト?」

 「はい、ハトです」


 凄い緊迫した雰囲気なのに拍子抜けな答えが返ってきた。本人は真剣なんだろうが……言っちゃ悪いがしょぼいな。


 「と、とりあえず続きをどうぞ」

 「はい、私があの日以降獣化をしないのには、ある理由があるんです。まず獣化にはある弱点があってですね。当然獣化は切り札とも言える技です。なのでこの獣化によってある状態になってしまうんです」

 「そ、それは」

 「……はい、とっても疲れてしまうんです」

 「…………それだけ?」

 「いえ、それだけじゃありません」


 あ、良かった。また変な返しが来るのかと思った。今度こそとんでもない理由が明かされるだろう。俺はまた「ごくり」と唾をのみこみ、話に聞き入る。


 「この獣化の後、なんと!」

 「なんと!?」

 「なんと……すごいお腹が空いてしまうのです!!」

 「いやお腹が空くだけか~い!」


 今度は思わずツッコんでしまった。さっきよりも結構変な答えが返ってきて、びっくりした。あんまりスッキリしないな。そのーなんだ?要約するとミミットはお腹が空くから獣化しないのか。なるほどなるほど…………っなわけねぇだろ!


 とりあえず心の中で存分にキレたのでいったん冷静になる。……え、一言だけだから存分にキレたとは言えないって?ちっちっち。もとより可愛いミミット、正直キレたのは、っははぁ~あ、噓さぁ~!心の中でもちょっとは説教したほうがいいかと思っただけだよ~。


 「ま、何はともあれ。それならミミット以外は結構獣化を使うのか?」

 「いえ、私は特別にこの程度で済んでますが、他の獣人は獣化後に身体がボロボロになって動けなくなるそうですよ~」

 「え?あ、そう」


 それって、ミミットが特別って言うより獣化が子猫だからしょぼいだけじゃ?

 まあいいや。理由は知れたし、大体スッキリできたかな。


 でも獣化か。年を重ねていくごとに獣化は強くなるだろうから、他の獣人のように身体がボロボロになるかもしれないから訓練は難しいかもだけど、もしミミットが本当に特別ならその訓練を取り入れるのもありかもしれないな。まあ当の本人は嫌だと言いそうだけど。


 晩ご飯の支度が終わったところで俺たちは席に着く。久しぶりにたくさん動いたミミットは、とてもおなかがすいていたのか、獣のごとくご飯を食いつくしていった。その姿は、あの時獣化した日よりもよっぽど獣っぽかった。


 後日からは、ミミットが体力をつけるためにも毎日走り込みと素振りを少しずつしていくことにした。悲鳴を上げていたが、軽いメニューということで許してほしい。それに訓練に興味を持ってしまったのだからこうなっているわけで、つまり自業自得だ。


 一方、魔法の訓練は楽しくやってくれているみたいで、とりあえず安心した。ときどきドジって火魔法の火種を家に引火させてしまったことは割愛させてもらおう。

ミミット可愛いですね。他の登場人物を待ってる読者様の皆様、もう少しだけ待っててください。では、ミミットと私を温かい目で見つつ引き続きご覧になっていただけると幸いです。

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