三之五
二之六にて、挿絵を追加しております!
よろしければ、御覧ください~!
「何も言い返されへんやろ葵はん、あんたは! 怒りたいんはこっちや、キレ散らかしていいんは俺のほうや!」
「……何故? 何故いつも遅いノロマな貴様が、何故怒りの権利を主張する?」
「当たり前やろ、俺は小春ちゃんのお兄ちゃんやからな……!!」
「兄、兄、兄、ねぇ――」
「……ムカつくな。葵はんが言いたいことは大体わかるで、古い付き合いやし」
「……ならば疾く去れ。小春、こちらへ」
小春はがっちりと兄に掴まれているので、そう言われても……と上目を使った。
「こちらもどちらも、小春ちゃんは元々俺が面倒見てたんや。……帰るんは、俺の下やろ」
「……では言わせてもらうが猫よ。貴様が兄というのなら、貴様が小春の守護者と言うのなら、貴様は有り得ざる愚を、取り返しのつかない過ちを、どういう言い訳で退けるつもりだ!。……――小春はもう、この世に証が無いんだ……!! 小春の帰る家は、此処以外にもはや、どこにもない! それを招いたのは、それを許したのは、貴様だろうが、猫!」
「わかってる、わかってる……!! だからこうして迎えに来たんやんか! もう二度と手は離さへん、二度とあの怪異に近づけさせへん!!」
「どうやって!?」
「――生き延びるのは、逃げ続けるんは、得意や」
「……どこまで愚かなんだ」
「……誰もかれもが、あんたみたいにべらぼうな力を持っとるわけちゃうやろ」
「分を弁えろ、猫よ。貴様に小春は守れない」
冷ややかな、葵の声だった。
「あの頃のように、今までのように」
兄が、喉を鳴らす。小春を抱き締める力が、更に強くなる。
「ああ、そうだな……。では貴様に、一つ、試練を与えよう」
「……葵さん?」
小春の声は届いていないようだった。
「そこから逃げ出せたのなら、貴様も、小春を守れるやもしれん。では、鏡の国で、己の無力さを見つめ直すがいい」
遠くで、大きな扉が開く音がした。葵が顔を向けた向こうから差し込んだ光は、まるで銃弾のようにこちらへ飛び込んできて、兄の額を真っ直ぐに穿つ。
大きな身体は、小春を置き去りに地面に崩れ落ちた。
「お兄ちゃん……?」
触る身体に息はある。
ただ険しい顔つきで、兄は眠りに落ちた――――。
それは、骨董屋が閉ざす宝物殿に納められた、一つの大きな姿見。
装飾はまるで西洋のお屋敷に置いてありそうな代物だが、列記とした日本屋敷の逸品だ。
歴代の所有者、そう、女たちの輝かしい日を記録した大きな姿見。
映る姿は美しく、艶やかな姿は香しく。
いつまでも、いつまでも、その日を見せ続けろと、見せ続けてと、砕かれた日々の欠片合わせ。
磨き抜かれた硝子は、嫌なほどに美しいだろう。
そうだろう、そうだとも。だからそれは、あなたに美しさを示す。
「あの頃は、昨日から今日まで、生き続けているのだから」
そう、鏡は繰り返す。
それは、骨董屋に依頼された、世紀を超えた呪いの姿見。
所有者の女たちは、姿を消した後、酷く衰えた姿で吐き出されたらしい。
中は硝子迷宮。永遠の合わせ鏡は、あなたを狂わせるに相応しい。
約一か月程度更新をさぼ……さぼぼぼしてしまい申し訳ありませぇん……!!
今週からまた、頑張っていこう!
えふご同人の原稿あるけど……あひゃひゃひゃひゃ。




