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二之二

一之四、にて挿絵を追加しております!

よろしければぜひご覧ください~!

「お願いします!! 助けてください!! もうずっと熱が下がらなくて、目も見えなくなって!! やっと授かった我が子なんです!! このままじゃ死んでしまいます!! お願いします、お願いしますううう!!」


「お、落ち着いてください。お医者様にはみせま」


「見せました!! もう一ヶ月は経ってるんです!! その間にも何度も何度も見せました!! でも熱が下がらないです!!」


「入院とかは」


「言いましたけど断られたんです!! もうここしか……もうここしか、ううう、ううううううう!!」


 それは、突然の来訪者というわけではなかったけれど、一瞬にして嵐をつれてきた。

 いつのまにか吹雪いていた外を縫い潜り、このミセへ手を掛ける。

 彼らが聞いた一の鈴、それは来訪の予告。直になる二の鈴が、客の到着を告げる。

 小春にとって二人目の客――その女性は、どうやら妖ではない。

 胸に子どもを抱いた雪塗れの母親。

 小春の唇が、無意識に力に引かれた。


「わかりました。お話を聞きます。一旦奥へ行きましょう……ここは冷えますから。小春ちゃん、ごめん、お茶持ってきてもらえる? 温かいやつね!」


「はい――わかりました!」


 泣く母子を連れ、輝夜が応接間へと道を示した。

 小春が背を向ける一瞬に盗み見た顔――、あの女性は安堵だろうか、少しばかり頬に赤みが差していて……そして、笑っているように見えた。

 目の奥が冷える――――。

 はやく、お茶を持っていこう。


「なるほど……。もう三回も、病院に」


「はい。始めはインフルエンザだと……その次はアデノウイルスだと……。検査は全て、陰性で……」


「それは大変でしたね……」


「あの、なんとか、なりますか? 熱を下げるだけでも……いいんです。このままだと、死んじゃう……!! うう、うううう」


「あ、ああ。落ち着いて……とりあえず、一旦見てみますね……」


 小春は、扉越しに立っていた。

 両手にはお盆を持ち、そこの置かれた湯呑二つからは湯気がゆらゆらと立っている。

 小春は、ただ立っていた。

 その目は、なんの色を示すのか。


「――ああ、これは」


「わかりますか!?」


「……お母さん。一つ、事前にお聞きしたいことが」


「は、はい」


「……うちのミセを、何処でお知りに?」


「え――? 病院から帰っていると……男の人に声を掛けられて……。どうすることも出来ないなら、ここに来るといいと、地図を……」


「……なるほど。それで、赤ちゃんの様子ですが――――」


 ああ、いけない。そろそろ入らないと、怪しまれちゃう。

 小春はそのまま手を振りあげて、入室の合図をした。


「すみません、お持ちしました」


「ああ、小春ちゃん。ありがとう、こちらに置いてくれる?」


「はい」


 しゃがんで二つ、湯呑を置いた。


「あら、小春ちゃんのは?」


「え?」


「――あの、娘は、どう、なんですか?」


 小春はお茶を置くと、部屋の隅に移動した。

 お盆を両手に抱えて、息を殺して立つ。

 目の前には二人の風景だ。恐らく、私は、邪魔だ。

 どうせなら部屋を出たほうが正解だろうけれど、あえて注意を引くのは不正解だ。

 輝夜さんがさらに怪しむかもしれない。それだと間違いだよね。

 だから、ここで、立っていよう。


「……ああ、はい。娘さんの容態ですが、これは普通の病気ではありません。こちらに来て下さったのは、正しいですよお母さん」


「……!! では、娘は!?」


「これは――呪い、です。火熱……人間の免疫システムに関与させる、いわゆる解熱剤では下がりません。ですので、お医者様がある程度の予想を立て、対症療法を施して下さったのは正解なんです。どうぞこれからも、不調があればまずはじめにお医者様を頼ってください」


「は、はい……」


「小春ちゃん」


「……はい!」


「ごめんね、そこの後ろの箪笥、一番右の上から二つ目の引き戸に入ってる薬を五つ持ってきてくれる?」


「わかりました」


 言われたとおりに開き、机の上に置いた。

 そうして小春は再び下がる。


「お母さん、これをお母さんが寝る前に一日ひとつ、娘さんに飲ませてください。一瓶全てが一日分です。もし用法を誤れば……脅すようで気が引けますが、いいますね。娘さんは死にます」


 母親は、息を呑んだ。


「でも――信じて来て下さって、本当によかった。娘さんは助かりますよ。賢明なお母様を持てて、娘さんも……さぞお喜びでしょう」


「ああ、ありがとう、ありがとうございます……!!」


「今日はお帰りになったら早速飲ませてあげてください」


「はい! ……あ、あの、お代は……?」


「お金のお代はいりません。――そういうミセではないのです、我が骨董屋は。娘さんが良くなった頃に、お手紙でお送りいたします」


「わかりました!! 本当に……ありがとうございます!!」


「はい、それでは、お大事に」


 母親が扉を開けると、雪は病んでいた。

 あんなに吹雪いていたのに、いまでは青空さえチラついているようだ。

 輝夜は扉を閉めて、息を吐いた。そして小春を見る。

 何も言うことは無い。というか、何も言えない。

 母親か――――。

 小春ちゃんが無意識に彼女を避けるのも、無理もない、わね。


「さて、骨董屋の仕事――始めますか!」


 片腕をぶんぶん振りながら戻って来た輝夜に、小春は小さく笑みをこぼした。


「はい! 頑張りましょう! あ、ところで……」


 湯呑を下げながら、小春は疑問を口にする。


「呪いって、一体なんの?」


「あ、説明してなかったかしら? まあ、いいわよね。どうせ忘れるんだし……」


 輝夜はやっちゃったーと上を見て、ぼすんっとソファに座った。


「子ども、火の揺らめきの熱、そして外は大吹雪き――――。典型的ね、片火車よ」


「……かた、ひ、ぐるま」


「そう。妖の一つね。ぜっったいに見てはいけない妖なの。見たら最後! 呪われちゃうわ!」


「きゃー!」


 輝夜がしかめっ面で怖がらせようとするので、小春は同じテンションで怖がってあげた。


「と言っても見える人もそんなにいないから、最近では放置気味……が裏目に出ちゃったのね。被害者が増えない内に、あたし達で何とかしますか……リミットは5日ね」


 嗚呼、あの薬の持つ時間が期限のようだ。


「じゃあ、この輝夜さんの華麗な仕事捌きを……小春ちゃんにかっこよく見せつけてあげちゃう!」


「わーい」


 ぱちぱちと拍手をする傍ら、小春は思った。

 かっこいいというか、可愛い……なのでは?

ハリポタスタジオで遊んでたら腰を浅くやりました。

どうして……

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