手鞠草を愛した女性 中
どうも桜宮です。
めちゃお久しぶりです(*- -)(*_ _)ペコリ
このお話は中編となります(/・ω・)/
〈桜宮のどうでも良い話〉
最近、暑すぎ&雨多くないですか!?お天道様、情緒不安定…
暑すぎでめっちゃ炭酸(甘いやつ)飲みまくってますw三ツ矢サイダーの特濃が一番お気に入りです♪
〈元和元年 三月二十七日:中編〉
門を潜り抜けると、小柄な方がお迎えに出てきた。
「早かったな。京…とそん背中ん娘は何や。ちんちょか。」
「…あの寺に居た。それで、化け猫に襲われたみたいで足首に怪我を負っているから。」
「…そうか。明日は雨でも降るじゃろうな。怪我しとろうが何じゃろうが、女性は好かんかろうに。」
「うるさい。」
「とりあえず、中に入れてやったらどうだ。薬箱持ってくる。」
「分かった。」
小柄なその方が先に入り、私たちも後に続いた。この方、たぶん京様。京様は自身の草履を脱いだのに私の草履を忘れ入ろうとした。それに気づいた白銀が瞬時に脱がせてくれた。
「ありがと、白銀。」
「わう。」
廊下を進んで大広間、道中、お屋敷の庭を眺めた。雅、まさにこの言葉が思い浮かぶほど、綺麗な庭だった。
「…素敵な、庭ですね。」
「余が管理しているからな。手入れも、水やりも。」
「そうなんですか。」
そう言えば、白銀は庭に居るのかしら。中に入れていいかの許可を得ていなかったわ。後で言おうか、それとも庭で待たせておくか悩んでいる内に、大広間へついていた。中に入り、中央辺りに降ろされた。
「茶を持ってくるよう、言ってくる。その間に晴家が来るだろう。」
「あ、はい。」
京様が出て行ったのと同時に、神楽さんが現れた。
「光!」
「神楽さん!」
半分泣きながら、私に駆け寄り抱きしめた。その後、横に座り、手を握ってくれた。
「突然いらしたから、驚いたのよ?それに、怪我って…」
「あ…足首を少し。もう血は止まっていて、瘡蓋なんですが一応手当てをと、あの方が。」
「あの方?…あ、京様?」
「! あの方が、京様なのですか?」
「名前、聞いたことありましたの?」
「以前、みことさんから少し。」
「まぁ。」
久しぶりの再会で、話に花を咲かしているとみことさんと、先ほどの方が現れた。
「ひかり~!」
「みことさん!」
ばっと、私の胸へと飛び込んだ。ぎっと抱きしめた後、私の太ももを枕にして寝っ転がった。
「こら、みこと。そん人は怪我しとーったい。起き上がる!」
「けが?あ、足首…」
「少し切ってしまいました。ほとんど痛みは引いてます。」
「…痛そう…」
「やけん今、包帯するったい。ほら、どいて。それと、姫鶴。そけー立っとらんで入ってこい。」
「ふえ⁉」
ほんわかとした柔らかい声が襖越しに聞こえたと思ったら、ひょこっと背の高い女性が現れた。
「えっと…初めまして。」
「は!初めまして!織戸姫鶴です。」
勢いよくお辞儀をした後、包帯を巻いてくれてる方の隣にちょこんと座った。
「…なんで隣に座る。」
「え、えっと…何となく?小夜ちゃんの隣に座ったほうが、安心するって言うか…ね!」
「あの…」
「なんや?」
「お名前、小夜さんで合っていますか?」
「…そりゃただん愛称。うちん名前は、晴家小夜丸。」
「小夜丸さん…。手当てありがとうございます。」
「慣れとー。気にしなしゃんな。」
そう言い終わると同時に、包帯が巻き終わっていた。素早く片付け、立ち上がった。
「そろそろ京が来ると思う。わいら解散しとけ。」
「「はーい」」
「では、私は行きます。どうかお大事に。」
「ありがとうございます、神楽さん。」
神楽さんが出ていき、みことさんがその後を残惜しそうに出ていき、姫鶴さんはまだ少しいた。織戸さんは何故か少しもじもじとしていたけど、何も言わずささっと部屋を出て行ってしまった。
「…お顔、真っ赤だったわ…」
と、その後すぐに京様が戻ってきた。京様と使用人のような方が後ろにいて、ことっとお茶を置いた後、一礼をし出て行った。
「…手当て、してもらったのか。」
「はい。だいぶ怪我は治っていたみたいです。」
京様は肘置きに肘を置き頬杖をつき、そのまま一口お茶を飲むと口を開いた。
「のう、本当に慈緣に会うたのか?」
「え…は、はい。」
「…もう一人、見えなかったか。」
「もう一人?」
すっと庭に視線を向け、ぼそりと呟いた。
「撫子。慈縁の娘だ。」
「……」
たぶん、慈緣さんの裾を握っていた女の子。顔は見えなかったけど、うん、あの子ね。
「見たか?」
「…はい、手鞠を持った、少女を。」
「様子は」
「え?」
「…怒っていたか、恨めしそうにしていたか、余を、憎そうにしていたか?」
「いいえ、どれも当てはまりません。凄く、穏やかな笑みを湛えてま…」
「嘘だ!」
「!」
「撫子含め、慈緣も、あの地の者すべてが余らを憎んでいるに決まっている。あいつのせいで、殺されたのだから!…撫子が、穏やかに微笑んでいた?嘘を言え!」
「……」
お面の下からも分かるほど、睨みつけていた。苛立ち、後悔、やるせなさ、よく分からないどろっとした感情が、その眼差しに込められていた。
「墓参り如きで、余ら“九鬼”一族がしでかしたことは…許されぬ。」
「九、鬼?」
この方の苗字は“京”なのに、“余ら九鬼一族”というのはどういう意味なんだろう。
「…余ら一族は、決して許されぬ罪を犯した。あの日。」
そう言うと京様は、降り始めた雨のように自分の事を語り始めた。私は、ただ耳を傾けた。
◆
〈九鬼の過去〉
産まれてから余の傍に居たのは乳母であった。そのせいか、両親だと思われる二人の存在の呼び方は、父は当主様、母は柘榴様と呼ぶよう言われていた。柘榴様は余には無関心そうで、当主様は何かと予に突っかかってきた。長い髪は切れだの、刀稽古は休まず年中やれだの言われた。辟易とした毎日だがそうしないと当主様の機嫌を損ねてしまう。
「愚図、のろま、役立たず」
当主様の口癖はそればかり。褒めてくれる人間としたら乳母のみ。ここは昔から妖を退治することを生業としているが、それも名ばかり。困った人がいれば妖のせいにして、退治するからという理由で大金を払わすという、悪徳な商業をしている。その金で、今日も知らない女を部屋に連れ込んでいる。…柘榴様がいるのに。そんな繰り返しの日々から、十年後くらいだろうか。突然、当主様が坂を下りた所にある寺に行こうと言い出した。余は渋々ついて行った。磐長寺は、あの屋敷が建つ前からある寺だ。
「いつ来ても、無駄にご立派な門だなぁ。入るぞ。」
「はい。」
中へ進むと、しん…と静かな空間で緋色の法衣を着た住職様が深々とお辞儀をしていた。
「ご足労いただきありがとうございます。」
丁寧にそう告げた直後、当主様は袂に入れていた扇を取り出し、頭を叩き始めた。開いた口が塞がらなかったが、当主様は淡々と言葉を続けた。
「せっかく俺が来たってぇのに、出迎えはてめぇ一人か?」
「…申し訳ありません、現在弟子たちは修行中でして。」
「あぁ?」
「何でも、ございません。…では案内します。」
「もてなしはしっかりあるんだよなぁ?これで無いっつたら…どうなるか分かってるんだろうな?」
「はい…。」
住職様の肩に腕を回し、そのままずかずかと中へ入ってしまった。余は佇んだまま、どうしようか悩んだ。
「あら、訪問者様」
高く、だが心地よい声が耳元で聞こえ振り返ると、箒を持った少女がいた。…切り揃えられた前髪に、姫毛。上辺だけ掬い撫子色の紐で結ばれた髪が左右で揺れる。腰の少し下まで髪はあった。瞳はまるで猫のようなつり目であった。
「…誰だ。」
「撫子と申します。ここの住職、慈縁様の養子です。」
「はぁ…」
「はぁ、とは失礼な方ですね。そこは普通、己の名を言うべきです。」
…余は渋々、自分の名前を告げた。あまり好きではない名前。
「素敵な名前。」
「そうは思わん。」
「私の感想です。否定しないでください。」
女子と接したことないが、こんな感じなのか?と少し疑問に思った。しかし、これは少し苦手だ。距離を置くため、ふらっと歩き始めるとその者も一緒に歩き始めた。
「…なんだ。」
「寺、案内するのです。」
「構わん」
「人の厚意を無下にするのか?」
「…分かった。」
撫子殿は右手に箒、左手で余の手を握り、案内してくれた。ここの花が綺麗だ、この池には大きな鯉がいるだの、説明してくれた。
「…貴方のお父様?とても横暴ね。」
「ああいう人だ。」
「…貴方は生きづらくないの?あんな人の傍に居て。」
「随分と踏み込んでくるな。」
「初めて会う人って、どうしても気になっちゃって。ごめんなさいね。」
そよりと初夏の匂いを纏った風が吹いた。本当に、不思議な人だ。後に分かったが、撫子殿は余より一つ年上だった。背が低いのと無邪気さで分からなかった。
◆
それから二日後、贈り物を用意した故、持って行けと当主様に命令され渋々向かった。と、門の前で撫子殿が掃除をしていた。丁度いい。渡してしまおう。
「…撫子殿。」
「あ、お久しぶりです。」
「これ、当主様からだ。」
撫子殿は受け取った後、少しすんと匂いを嗅ぐと余に返してきた。
「何だ?」
「これ、食べれないわ。猪肉に山女、それにお酒。どれも口にできないの。」
「あいつ…!」
「その反応ですと、知らなかったのですね。」
「…そこら辺の獣にでも与えておく。」
「折角なら貴方様が食べればいかがです?」
「それは遠慮しておく。」
そういうところころと笑い始めた。もう少しだけ喋った後、近くの洞窟に向かった。これはそいつに与えればいいと思った。
「これ、やる。」
暗がりから人間の男に似た手が伸びて、それを奪うように引きずり込んで、くちゃくちゃと音を立て始めた。最近知り合った、余の良き相談相手、だと思う。…まぁ、こいつが“人間ではない”というのは端から分かっている。
「…明日も、頼まれるのだろうな。」
呟きながら、その場を後にした。応じなければ余に明日などない。
◆
それから贈り物を送る日々が続いたり、新しく隊士という名ばかりの召使が増えた。その中でも一人の者は当主様からの命令なのか、よく余を気にかけていた。頭の切れる奴故、余も信頼をしていた。…今日も、磐長寺に贈り物を渡しに行く。草履を履いていると柘榴様が珍しく話しかけてきた。
「また行くのかい。」
「はい、命令ですので。」
「…それ寄越せ。代わりにこれを持って行け。」
「え?」
「ほれ、早く。包みは同じじゃ。晦冥には気づかれぬ。」
「分かり、ました。」
「…ったく、晦冥もあそこのどこを気に入ったのか。妾には分からぬのう。ここも十分、広いと言うのに。」
「どういう、意味ですか?」
そう聞くと、柘榴様はじっと余を見つめた後、ふいっと顔を背け「忘れろ」だけ言い台所へ向かってしまった。何だろうか、まるで磐長寺の土地を狙っているような言い分だった。少し引っかかったが、贈り物を届けてしまおう。いつも通り、彼女は門の前で掃除をしていた。
「撫子殿。」
「あ。…また、贈り物ですか?」
「そう。だが今日は柘榴様からだ。」
「柘榴様…って、お母様?」
「ああ。」
「…包み、開けてもいい?」
「良いよ。」
風呂敷を開けるとそれは高野豆腐だった。その瞬間、撫子殿は目を輝かせた。
「私の大好物です!皆さんも喜びます!」
「そうか。…そう言えば、今日も紐を変えたのか?よう似合うておる。」
「っ!あ、ありがと、です。」
「のう、撫子殿。」
「はい。」
「ここももうすぐ、秋が来そうだな。紅葉が色づきを始めている。」
「そうですね、秋になれば彼岸花がとても綺麗に咲くのです。…そ、その時は、一緒に見ませんか?」
「良いな。秋が楽しみだ。」
「約束ですよ?」
撫子殿が小指を差し出した故、余も差し出し指切りげんまんをした。そしてまた無邪気な笑みを見せた。…いつからだろうか。その笑みが堪らなく、愛おしく、思えてきた
(続)




