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愛者永遠  作者: 桜宮朧
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三本の秋海棠

お久しぶりです、桜宮です。


二か月くらいお待たせし、申し訳ありませんでした( TДT)ゴメンヨー

私生活が忙しかったり、家のネット回線(現在は復旧)が切れたりと色々ありました…

どちゃくそ久々ですが、続きをお楽しみください°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°

また続きが遅れるかもですが、ご了承ください…

〈元和元年 三月二十六日〉

巳の刻より、ちょっと早めに辰の刻に出発することにした。朧ちゃんと霞ちゃん、それから当主様と光ちゃんが見送ってくれた。

「じゃ、行ってきます。多分、夜には帰ってこれるから。」

「ぜってぇ、帰ってこい。盈月。」

「分かってるわよ。だって、ここでもう一回みんなとご飯食べたいもの。」

「…そっか。」

「え、盈月さん。本当に刀一振りで良いんですか?もう少し、何か。」

「たかが寺に行くのよ?大丈夫よ、霞ちゃん。」

「で、ですよね…。」

「連絡がありましたら、鷹を飛ばしてください。東郷爺の鷹が常に飛んでいると思うので。」

「分かったわ。ありがと、光ちゃん。」

あたしは皆に手を振り、帯解寺に向かい出発した。

  ◇

〈退魔屋敷にて〉

鏡が映すのは本当の余ではない。猫の面をかぶり、浅ましく生き続ける偽の余。今の余は、これが正しい生き方だと思う。…傍らに置いた刀をじっと見つめた。

「…刀を握るのは、何時ぶりだろうか。」

余はそう呟きながら、隣に置いてある刀を見つめた。…刀は嫌いだ。雅も趣もない。ただの鉄の塊。

(てめぇは刀を握ってりゃあ良いんだよ。家督もてめぇに継がせる気はねぇよ。)

「……」

大嫌いな(やつ)の声がする。自業自得のくせに、余を呪い殺すつもりか。

「…黙れ、亡者が。」

刀を持ち、出雲と蓬莱が待つ場所へと向かった。向かう途中、寺の前を通った。横目で眺め、相変わらずの景色が広がっていた。…今度、墓参りでもするか。淡々と歩いて四半時、天禰たちが待つ場所に着いた。

「遅いなぁ~京。のんびりと支度してたのか?やっぱ身分の高い方は嫌いだ。」

「…お主達が早いだけ。どれだけ余と戦うのが楽しみだったんだ?」

「ずぅぅー…っと、前からに決まってるよ。京。」

「そうか。」

天禰は微かに笑うと、刀を抜き余に向かってきた。

「先手必勝!」

「……」

こやつは、低い姿勢から一気に上へ斬り込むのが得意なのか。なるほど。刀同士の鈍い音が辺りに響く。そういえば、神楽の姿が見えない。…あぁ、隠れているのか。それも、あそこか…。天禰と鍔迫り合いしながら東のほうをちらと見た。簪の輝きが見えた。

「…分かりきったことを。」

ふっと力を抜きその拍子に天禰は転び、飛んできた簪も避けた。

「あはは。痛いなぁ~…。やっぱり、この作戦駄目かぁ。」

「もう少し、殺気を消したらどうだ。」

「…僕は、殺気を消すことなんて出来ないけど…神楽はどうなんだろ。」

「…得意だろうな、だが、後ろにいることは知っているよ。」

そう言い振り返ると簪を構え、余を刺そうとしている神楽と目があった。

「!」

「あまり女性に触れたくない。」

神楽は勢いそのまま天禰に覆いかぶさった。

「っ…天禰!大丈夫?」

「…うん、大丈夫。神楽は?怪我ない?へーき?」

「私も大丈夫よ。」

「……」

互いに心配する姿を見て、余は何故か興ざめした。刀を鞘に納め天禰達に背を向けた。

「何だよ。どーしたんだよ」

「飽きた。帰る。」

「は⁉ふざけるなよ!僕たちはまだ腹の虫がおさまってない!」

「…余は、あまり戦いが好きでは好きではないのだ。平穏で、静かに、生きたいだけだ。」

「戦いが、好きじゃない?何を言っているのか、理解できないよ。そんなの噓でしょ?だったら!僕たちの村を焼け野原にしたんだよ!」

余はその言葉に反応し振り返った。そう言えば、余がもしこの者たちと出会っていたのならば、どこかで会うたことがあるという気持ちになると思うが、全くない。

「天禰、神楽。」

「なんだよ。」

「…お主たちが会うたと申している男は、本当に余なのか?」

「……はぁ?」

天禰と神楽は互いを見つめ、首を傾げた。そして神楽は天禰を抱きしめたまま、言葉を紡いだ。

「遠くに貴方がいましたが、その姿そっくりにございました。猫の面をつけ長く黒い髪でした。ほんに、貴方と瓜二つ。」

「他には」

「…他…。後は、何の躊躇いもなく、村の者を殺していきました。あの凄惨な光景は、忘れられません。」

余は自分の手を見つめた後、天禰達を見た。

「余が…この世で、自らの手で、殺したのは二人しかいない。」

脳裏に、鼻腔に、あの日が甦る。木の焼けた匂い、金臭い匂い、柔らかい甘い匂いが。

「帰る。お主たちがこれからどうするかは己で考えよ。」

彼らに背を向け、屋敷に帰るとしよう。

  ◇

あいつのふざけた態度に苛立ちを覚えた。今まで怨み、何だったんだろ。そう思いながら僕はその場に大の字で寝っ転がった。

「天禰、どうする?これから。」

「…わかんない。目的、なくなったしね。」

あいつがもし、復讐する相手じゃなかったら僕たちはあそこにいる意味ない。そしたら大好きな神楽と限りある余生を別の場所で過ごしたい。神楽といれば、僕は何もいらない。

「…やっぱり京は飽いて帰ったか。」

と、草陰から晴家が出てきた。僕は起き上がりじろっと睨んだ。

「いつからいたんだよ。」

「ずっと、見よったばい。で、気は済んだか?」

「済むわけないだろ!飽きたってなんだよ。飽きたって!」

「京、相変わらず舌足らずなんばい…。京ん飽いたはこれ以上やってん意味がなかちゅう意味や。」

「は?」

「そう言えば、京も言うたかもしれんがわいたちが会うたちゅうんはほんなこて京なんばい?」

「それは…」

「それと、こりゃすっかり聞き忘れとったけどわいたちん村が襲来により崩壊したんは、一体いつなんや?」

僕は、素直に答えた。千六百六年と。すると晴家は考えるような素振りを見せた。

「…なんだよ、考え込んで。」

「あんな、出雲、蓬莱。」

「?」

「そりゃ、物理的に無理な話や。」

「・・・は?」

その言葉に、耳を疑った。それに、なんでこいつさっきから知ったような口ぶりなんだよ。

「晴家さん、その…物理的に無理とは…」

「…こりゃ京からあまり他人に話すなと言われとーとばってんな…」

「何を、ですか?」

晴家は腕組みをして眉をひそめた。

「そん頃、京は…身内争いばしとったんだ。やけん、京がもう一人おらん限り無理な話なんや。」

「「……」」

「妖が蔓延る場所や。だいかが京に変化して、わいらん村ば襲うたんも納得でくる。」

そう言われたら、頷くしかない。何の違和感もないもん。

「では、その誰かというのは…一体。」

「そこまでは分からん。これから、見つくるほかなかじゃろう。」

「…ねぇ、万世とかは怪しくないの?あのおっさん。」

「天禰…。それは貴方が消したいからでしょ?」

「でも!」

「決めつけで怪しかと思うてしもうたら、全てが怪しゅう見えてくる。あまり決めつけず、探し当てよう。」

「……」

「天禰、不貞腐れない。」

「だってぇ…」

「帰るぞ、わいら。」

晴家は呟くと、スタスタと歩いて行ってしまった。

「…神楽…」

「なーに?」

「手、繋いで。」

「良いですよ。」

やっぱ、もう少し、ここに居たほうが良いみたい。僕たちの親を殺したのは誰。

  ◇

〈同刻 峠道にて〉

「やだ!もう!道のり長い!」

あとどのくらいで着くかも分からなくて、根を上げそう。てかもう上げる。冬場とはいえ、暫く歩けば熱くなってくる。と、道の途中、石階段をふと見つけた。

「…この先、何かあるのかしら…」

ちょっと気になっちゃって、あたしは登ってみた。そこは廃墟とかした神社だった。かつては、たくさん信仰されていたんだね。あたしは、神社の前でお辞儀をし、少し休ませてもらうことにした。

「う~ん…何だか通り雨もきそうだわ。ごめんね、もう少しいさせて。」

ボーっと空を眺めているとやっぱり雨が降ってきた。と、視界の端できらりと何かが光を帯びた。雨に濡れるのは嫌いだけど、気になるし。数歩、歩いて近づくと、そこには耳飾りがあった。それも、見たことがあるやつ。

「……」

あたしは何故か地面を掘り起こそうとした。落とし物として、捉えらることができるのに。その時、後ろでぱきりと枝を踏む音がした。わざとらしくもあり、自然でもある音。…振り返ると、万世様が立っていた。あたしはさっと耳飾りを隠した。

「おや、奇遇だな。このような場所で何をしている?」

「それはあんたもでしょ?」

「……」

立ち上がり、手を伸ばせば届くほどの距離まで近づいた。

「ねぇ、万世様。」

「何だ。」

「いつ見ても、あんたって良い男ね。二枚目とでも言うのかしら。」

「急になんだ。」

「…いい男だけどさ、何か足りないのよね。」

「足りない…?」

「えぇ。例えば、耳飾りとかつけたらどうかしら?」

その瞬間、あたしを睨みつける顔から、口は動かさないけど、目を丸くし舌打ちをした。

「…埋めとけばよかった。」

何か呟いているけど、雨の音で聞こえなかった。あたしは構わず、耳飾りを見せた。

「これ、見覚えない?そこで拾ったんだけど。うっかりね、土を掘り返したら…」

「黙れ。貴様も、消さねばならぬな…。」

「…かかってくるなら来なさいよ。あたし、万世様より強いもの。」

そう挑発すると、迷わず刀を抜いた。あたしは、万世様にあげた耳飾りを耳につけ、刀を抜いた。

「…ねぇ、戦いの前に質問させて。」

「何故しなくてはならん。これから土に還る者よ。」

「する理由は!あたしと苺依ちゃんが好きな、大好きな万世様はどこなのか知りたいの!」

彼はにやりと気味の悪い笑みを浮かべ、すっとあたしの後ろを指した。…うん、分かってた、けど、信じたくなかった。これで、心置きなく、貴方を語る者と、戦える。

「…いざ、参る。」

「っ。」

まず、二刀流じゃない。右手で戦ってるし。彼の刀があたしの刀とぶつかり鈍い音を響かせる。…一撃が軽い。踏み込みも甘いし、とにかく振り回す感じ。これで良く、万世様を語れたわね。

「どうした。反撃せぬのか。」

「…やる気が失せたのよ。だって、万世様の戦い方じゃないもの。」

「な。」

一瞬、青年のような声を発した。雨の中でも分かりやすかった。けどすぐに、あの低い声に変った。あたしを押しながら、言い訳をつらつら言う。

「我こそが万世だ!万葉も、火影も!我を万世だと信じてる!」

「…それはどうかしら。もう、気づかれてるんじゃないの?だって、光ちゃん。あんたの事嫌いじゃない。」

「あの女は我の娘ではない!」

「それを言うなら!万葉も、火影ちゃん?…知らないけど。その子達だってあんたの子じゃない!」

ぐっと押し返し、距離をとったのち、叫んだ。すると彼も反論した。

「それは誰が証明する!」

「苺依ちゃんとかよ!」

「はっ!証明にならぬな。」

「どうしてよ…!」

「奴は死んだ。」

「え……」

あたしは、耳を疑った。いつの間に、苺依ちゃん…亡くなったの?さよならも、言えなかった…。俯き、唇を噛んだ。

「我を証明する者はもうこの世にはいない。」

「…あたしが生きて、伝えてやるわよ。後世に!」

キッと睨み、下から上へ、斬り込んだ。やば…躱された。なら突き技!…それも躱された。躱すのだけは、上手いのね。…ずっと目が合わない。どうして見ないの…!攻めるのを止め、対峙した。

「あんたこそ!反撃したらどうなの⁉」

「……」

「…何か言ってよ!」

そう言うと、彼はふっとあたしと目を合わせた。刹那、赤い瞳に見えたけど、すぐに黒に戻った。

「何故、そこまで想うことができるのだ。我は疑問で仕方ない。…愛するとは、どういう感覚なのだ。我には、一切分からぬ。」

トンっとあたしを突き放した、次の瞬間。わき腹に熱さが走った。触れてみると、手が真っ赤に染まり、ずんとした痛みが来て、その場にしゃがみ込んだ。

「っう!う……」

虚ろに目の前を見ると、彼はいなかった。…後ろね。後ろに、いる!振り返りざまに、刀を真一文字に振った。だが、彼には当たらず、そのまま仰向けにふらっと倒れた。万世様はあたしの上にまたがり、見下ろした。

「もう終わりだな。水樹。」

「……」

あぁ…どっからどーみても、万世様じゃない。表情は違うけど…優しい気な瞳や、白髪交じりの漆黒の髪。

「あ奴の元へ逝けるのだから、喜ばしいことではないか。…喉を一突きか、掻っ捌くか、どちらの死に方が良い。」

…どっちでもいい。どっちにしろ、愛おしい人の皮を被ったあんたに殺されんだから、不服だけど、幸せ。そっぽを向き、言葉を紡いだ。

「…どっちでも、良いわよ。万世様に殺されるなら、あたしは幸せに逝ける。」

ぽつり、呟くと、からんと刀を落とす音がして彼を見た。耳に近くに手を置き、顔を近づけてきた。

「この死に方が、良いんだろ。」

そう言った、瞬間。口づけをしてきた。あたしはびっくりしたけど、頭を包まれていて、振りほどけなかった。だが、がりっと万世様の唇を噛んだ。

「っ。」

袂で、唇を拭いながら痛みを堪え、起き上がった。

「…あの人の口づけは、もっと熱くて優しかったわよ…。今のあんたの口づけ、何も感じない。」

「…当然だ。愛を持ってした口づけではない。貴様を、殺すためのキスだ。」

「え…?」

次の瞬間、あたしは気持ち悪さが急に込み上げ、体熱くなる。…あ、毒だ、これ。気づいたときはもう遅い。内臓が焼かれた痛みが駆け巡り、立ってられなくなり、どさっと倒れ込んだ。

「やはり人間は毒に弱いな。殺すのに、手っ取り早い。」

「…あ…っう…」

…やっと、やっと掴めたのに…情報…。あんたにも、逢えたのに…。

「万、世…様…」

立ち上がることはもうできない。けど、這うことなら出来る。せめて、せめて…。あたしは手を伸ばして、近づこうとした。

「…滑稽だな。届く距離ではないのに。」

知ってるわよ、そんな事。…けど、もう届きそうなのよ。あんたの、あんた達の傍に。

「苺、依ちゃん…万、世様…」

また、三人一緒だわ。あんた達の話も、聞きたいし、あたしの話も、聞いてほしい。

「…あんた達の子供、すっごく…似て、た。」

…あぁ、眠い。瞼が、そっと幕を閉じた。 

   ◇ 

鼻腔に抜けるは、雨に濡れた地面…じゃない。この匂い、花?ふっと…永い事閉じられた感覚のある瞼を開けると、一面花畑。と、両肩に重さがあった。交互に見ると苺依ちゃんと万世様だった。…穏やかに瞳を閉じた二人。あ、手…繋いでる。温かい…。あたしももう少し、眠ろう。二人に、起こされるまで。

  ◇

わき腹からの大量出血に、毒が全身巡ってもここまで這えるのか。…つくづく人間とは分からないものだ。

「我が主、口内は大丈夫でしょうか。」

「…花蘇芳、我を誰だと思ってる。あんな毒如き効かぬわ。」

「やはりそうですよね。いらぬ心配、申し訳ありません。」

「よい。」

…愛、か。愛なんぞ、もうここにはない。対象も、我にはいない。あの女は、いないのだ。

「帰るぞ。」

「御意。」

骸に背を向け、歩き始めたが、ふともう一度振り返った。…心臓部分を、ギュッと握りしめた。こいつは最期まで、我を狂わす。…あぁ、この手で殺せて、清々するわ。

「…花蘇芳、適当に埋めてやれ。我は先に帰る。」

「御意。」

通り雨で良かった。血も、足跡も、消えてくれる。周りも、誰も見ておらん。

                                    (続)

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