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愛者永遠  作者: 桜宮朧
38/51

黒種草を視て 中

前回のお話の前書き通り、中編です。

本当に直前の変更でごめんなさいm(__)m

ここから本気で大事な情報です!!

今回のお話、ほんのりBLというよりがっつりふわっと(?)BLなので、

苦手な方はお控えください。まぁ、好物だよという方はお楽しみください。

〈元和元年 三月二十五日 中編〉

夕餉も湯も済ました後、万世様の部屋に向かった。丁度襖が開いていたからひょこっと顔を出し声をかけた。

「…あの、万世様。」

「ん?どうした、盈月。」

「少し…お話いい?」

「良いよ。」

「えっと、ちょっと移動しても良い?」

「分かった。」

万世様を引き連れ、庭に出た。辺りはとても静かで、人気がなかった。好都合だわ…。大きな池のところまで来て。万世様を見た。

「…あ、あのね…お話っていうのは…その…」

「…その?」

ゆっくり、深呼吸をして、俯き、その言の葉を紡いだ。

「あたし、貴方が好き。もちろん、断ってくれてもいいわ。あたしの勝手な、気持ちだもの。だから、」

「盈月…。」

「な、に?」

顔を上げると、万世様は顔を真っ赤にしていた。今まで、見たことがなかった。

「…嬉しいよ、盈月。うん、すごく。我も…君を好きになっていいか?」

「……」

あたしは、思ってもみなかった結果に涙が溢れた。抑えても、抑えても、雫は零れた。万世様はそっと、あたしを抱き締めてくれた。

「盈月。」

「好きに、なってくれるのよね。ずっと、ずっと。」

「うん。」

「…初めて、満たされる。」

あたしより、背の高い万世様。その胸にすっぽりと収まった。と、万世様があたしの頬に触れ、目線を合わせた。

「盈月…。」

「…ん。」

「好きだ。」

万世様の唇に触れ、頬に触れ、そっと口づけを交わした。永く、短い、時間。けど、廊下で足音がしてきたから、万世様の部屋に戻ることにした。夜は一緒に寝ることにした。寝っ転がりながら、他愛もない話をしていた。

「え!それ…本当なの…?」

「あぁ。我は、苺依と祝言を挙げる。けど、それは愛も何もない儀式みたいなものだよ。苺依の事は、可愛い妹としか見れないんだ。情愛や、そういうのは抱いてない。」

「…そう…。」

「でもな、苺依は我の事をどう思っているのかは分からぬ。ただ静かに側に居て、淡々と日々を過ごしているものだから、本心が見えなくてのう。」

「苺依ちゃん、幸せそうよ?少なくとも、あたしの目から見たら。」

「そうか?」

「うん。あ、そうだ。貴方にね、想いを告げれたのは苺依ちゃんが背中を押してくれたのよ。」

「知ってるよ、その事。」

「え?」

「昨日の夜、苺依が言ってきたんだ。明日、盈月から話があると。」

「そうなの⁉苺依ちゃん、万世様に言わくなて大丈夫よねって言ってたわよ。」

「本当か?苺依にしては、珍しいな。約束を破るとは…。」

「…まぁ、あたしは気にしてないわよ。それより…」

あたしは起き上がり、万世様の上に乗っかった。

「ど、どうした?盈月。」

「もっかい、口づけしたい。良い?」

「…お前が満たされるまで。」

…貴方と口づけをして、どのくらい経ったんだろ。体も熱くて、ぼーっとする。あたしはふと、自分の名前を万世様がいつの日か、褒めてくれたことを思い出した。

「ね、万世様。」

「何?」

「前、あたしの名前…素敵だって言ってくれたわよね?」

「…あったな。」

「あたしね、自分の名前…嫌いなの。盈月って新月を意味してて親曰く、由来は“新月のように早く消えますように”って。物心がつき始めたときに聞いちゃって驚いたし、悲しかった。」

「そんな由来だったのか…。」

「愛されてないのは知ってたけど、まさか初めからだったとはね。だから、貴方が良い名前だって、言ってくれたの物凄く嬉しかった。」

「なぁ、盈月。」

「…ん?」

「新月の次って、満月だよな?」

「そーよ。」

「だったら、愛がなくて消えそうなお前をたくさん愛して満たして、満月にしてやる。また消えそうになったら満ちるまで、愛してやる。我は、ずっとお前の傍に居る。好きで居続けるよ。」

「…万世様…」

幸せな気持ちそのまま、眠りについた次の日。万世様は先に起きて道場に行ったらしい。あたしは顔を洗うために井戸へ向かう途中、苺依ちゃんに会った。

「おはようございます、盈月さん。」

「おはよう、苺依ちゃん。」

と、一瞬、苺依ちゃんが驚いた表情をした。

「…盈月さん、首元…怪我なされたのですか?」

「え⁉あ…」

昨日の万世様の噛み痕だ…。気をつけなきゃ…。

「私は、やられたことないのに…」

「ん?どうしたの?」

「いえ、何も。後で薬いりますか?」

「ううん、平気よ。大丈夫。」

「そうですか。」

「…そーいえば、今日の朝餉何?すごく楽しみだわ。」

「もうすぐできますよ。ですので、兄上を呼んできます。」

「あ!じゃあ、あたしと行こーよ。すぐ顔洗っちゃうから。」

「…分かりましたわ。」

さっと洗った後、二人で道場に向かったけどずっと苺依ちゃんの表情が暗くて少し心配だった。

「ね、ねぇ苺依ちゃん。」

「何でしょうか?」

「悩み事、ある?」

「ありませんよ。あるわけ、ないです。」

「そ?あたしばかり相談聞いてもらっちゃってるから、苺依ちゃんもあったら言ってね。」

「…私は誰かの悩みを聞いたり、解決したりするのが役目なので、お気になさらず。私はそうやって、育てられましたから。」

「そ、そうなの?」

「はい。私は産まれてこの方、世の中を知りません。別荘で産まれ、盈月さんがここに来る一日前にここに参りましたが、その時も籠だったので。外は見れませんでした。」

「…ねぇ、苺依ちゃん。」

「はい?」

「今度、お出かけしない?あたしと万世様と、苺依ちゃんで。」

「…良いですね。お出掛け、したいです。」

苺依ちゃんはふわっと微笑み、ぴたっと足を止め空を仰いだ。

「どうしたの?」

「もし、子供が産まれたら自由に生きてほしいです。兄妹同士で、夫婦にならなくてはならないという鎖を断ち切って、幸せに、生きてほしい。」

「…苺依ちゃんの望みを、叶えてくれたら嬉しいけど…その子達次第じゃない?」

「ですね、きっと。でも、もし血の繋がる者に恋をしたら、相思相愛でいてほしい。片想いは、苦しいですから。」

「……」

「ねぇ、盈月さん。」

「何?」

「もうすぐ、私は祝言を挙げますがずっと、兄上を好きで居続けてください。私はただのお飾りですので。」

にこっと、作り笑顔のような感じで、胸がきゅぅっと締まった。やっぱり、万世様を好きになって、良かったのかしら。微妙な空気が流れる中、道場に着いた。万世様はあたし達に気づき、竹刀を仕舞って梅の間へと一緒に向かった。それから、一年後、二人の祝言が挙げられた。白無垢を着た苺依ちゃんは一層綺麗だった。淡々と、時間は過ぎていつの間にかお開きだった。あたしは、万世様ではなく苺依ちゃんの部屋に向かった。着替えてるかも、って思って襖越しに声をかけた。

「…今、大丈夫そ?」

「…盈月さん?どうかしましたか?あ、、まだ着替えてないので襖を開けて大丈夫です。」

「あ、じゃあ失礼します。」

からっと開けると、綿帽子は脱いで鎮座してる苺依ちゃんがいた。あたしは少しお話して万世様の元に向かうつもりだったから、座らずに話した。

「何か、御用がありましたか?」

「えっとな、話なんだけどね…この話、明日でも良いかなって思ったけど、早めに言おうかなって。」

「?」

あたしは、自分のしたいことを話した。苺依ちゃんは目を丸くし、寂し気な表情を見せた。

「どうして、そんな考えに…至ったの?そんなことなら、ここでも学べるわ。」

「…うん、知ってるわ。知ってるけど、外に出て、今より知識を深めたいの。」

「帰って、来てくれますよね?」

「それは必ずよ。帰ってきて、苺依ちゃんたちとお出掛けするんだもの。」

「盈月さん…」

「万世様にも、話して来るわ。」

「はい。」

苺依ちゃんはにこりと微笑んだ。…帰ってくる、ね。この二人の傍に居て、分かった。

「苺依ちゃん、本当に万世様が好きなのね…」

あたしが万世様に話しかけると、必ず表情が曇ってる。最初は、理由が分からなかったけど、今なら…分かっちゃう。万世様の部屋に着き、さっきと同様の行動をした。けど、もう少しで着替えを終えそうだったから、入れてもらった。

「…して、話とは何だい?盈月。」

「…あたしね、妖をもっと知るために…旅に出たいの。」

「え?」

「ここで過ごすうちに、もう少し妖を知りたいって思うようになったの。だから、お願い…。」

「ここに居ても、知れるぞ?妖の事は。」

「苺依ちゃんにも、言われた、けど…外でもっと知りたいの!」

「……」

万世様は、もちろん困惑した顔をしていた。あたしから目線を外し少し悩んだ後、もう一度あたしを見た。

「本当に、行きたいのか?」

「…うん。」

万世様はあたしに近づいてきて、そっと頬を包んだ。

「行かないで欲しい、と言ってもお前は行くのか?」

「うん。」

「盈月…」

とんっと押し倒され、覆いかぶさるよう万世様は抱きしめてきた。

「大丈夫、帰ってくるから。苺依ちゃんとあんたの子を見るまでは死ねないわ。」

「…出発は、まだ先にしてくれ…」

「うん、うん。」

万世様は口づけをしたそうだったけど、流石に祝言後だったから駄目って断った。それでも駄々をこねて、唇以外ならって言ってあげた。

「…好き。」

「あんた、何回言ってる?」

「何度でも言うだろ、本気で、好きなのだから。」

そう言いながら、ぐっと足を持ち上げられ…って、この体勢まずい!

「ばかばかばか!それ以上は駄目‼」

にっと万世様は笑い、脛にそっと口づけをした。変なことされると思ったあたしが馬鹿みたい…。恥ずかしくて、顔を覆った。

「苺依、どうだった?」

「…え?」

「行ったんだろ。」

「普通、だったわよ。」

「そうか。」

「万世様。」

「何?」

「苺依ちゃんのこと、幸せにしてあげてね。愛には正解や、正しい形なんてないから、貴方なりに、好きでいてあげて。」

「…分かった。」

あたしはそれから、二年後くらい。旅に出る日に差し掛かった。大切なものを風呂敷に詰め込んで。そして、出発日。まだ少し暗かったけど万世様と苺依ちゃん、それか

「少し、寒いわねぇ。」

「…体調には、本当に気を付けてくれ。それから、多分…お前が帰ってくるであろう時期には、別荘にいるかもしれない。だから、」

「分かったわ。けど…すっかりあんた達の子供が大きくなったときに帰ってくるかも。長めに、旅をするつもりだから。」

「そっか…。そうだ!忘れるところだった。少し待ってくれないか?」

「ん?良いわよ。」

そう言うと、万世様は屋敷に戻って行った。その間、苺依ちゃんたちと他愛もない話をしてしばらくしてから、戻ってきた。その手には、本を持っていた。

「これ、盈月に見てもらいたくてな。苺依とも話し合った、子供の名前。」

「どれどれ?」

本を受け取り、その名を見た。三つの、名前に丸をつけられてた。

「…いいじゃない、どれも。素敵な名前。」

「良かった。」

「苺依ちゃん、あたし男だから妊娠とか分からないけど…頑張ってね。絶対会うんだから。」

「ありがとうございます、盈月さん。…初めに産まれてくれるのは男子か女子かは分かりませんが、産まれてきたらちゃんと育て上げます。」

「二人共、子供好きだもんね。絶対、良い子に育つわ。」

「楽しみです。」

「…あ。ね、万世様。」

「ん?なんだ。」

あたしは左についていた、自分の耳飾りを外し万世様の右耳につけた。

「必ず帰ってくるって証。あたしが帰ってきたら、返してね。」

「…うん、分かった。」

「じゃ、行ってきます!苺依ちゃん、万世様。」

それから、十年間。旅に出た、けど…そこからの記憶がない。約束、破っちゃったかも…。ごめんね、万世様。

                                 (続)

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