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愛者永遠  作者: 桜宮朧
34/51

悔悟を抱く翁草 下

桜宮です(`・ω・´)ゞ

後編です!

花粉症、辛いです!(ノД`)・゜・。

追記:もう少しばかり投稿が遅れますm(__)m

   しばらくお待ちください(;´・ω・)

〈元和元年 三月二十二日 後編〉

「と、とりあえず寿君を先に帰してあげて!後始末とか灸さんにはおいら達がやるから。」

「分かりました。」

寿君は怪我が酷かったので長めの木の棒と隊員一人の羽織で担架を作り、先に下山して妖退治屋に帰るよう指示した。太陽は少し傾き、お昼過ぎだと思った。

「…さて、妖は退治終わってる!他に仲間がいる気配もしない!よし、灸さんのとこに…」

「退治はぁ、終わるましたけ?」

振り返ると、いつの間にか灸さんが立っていた。叫びそうになったがぐっと堪えた。

「あ、あの登ってこれたのですか?」

「あぁ、ほうや。いやはや、久々に登ると体に堪える。」

「えっと、報告ならば家のほうに伺って話そうと思っていたのですが。」

「…あいつらがおらんくなったらぁ、やりたいことがあるがやぞ。霞左衛門殿、うちについてきてくだされ。」

「え、あ、はい…。あ、皆は下山して帰って大丈夫だけど、灸さんの家に行って風雅さんに終わった事、伝えてきて。」

「了解です。」

俺は皆が下山するのを見届け、灸さんについて行った。

「…この奥に、行くんですか?」

「…あぁ。」

「あの、灸さん。この先には、何があるんですか?」

「……」

何かまずい事でも言ったかな…。灸さんは暫く黙り込んでしまった。おいらは何も質問しないようにしようと黙って歩いてた。すると、突然また灸さんが口を開いた。

「霞左衛門殿は…妖との恋路はぁ、どう思う。」

「へ?」

「どう思うがや?」

おいらが咄嗟に思いついたのは当主様達だった。まだ、光殿は妖ではないけれど…。

「い、良いと思います。」

「ほうかい。…ほうかい。」

「はい…。」

「…そやけどな、一度すれ違うてしまえあ、もう関係は戻らん。人間も、妖も、ほれはおんなじ。うちはね、誤解を解きたいんだげん。」

「誤解?」

「この先に、昔…惚れた女がおるがやぞ。そやけどぉ、誤解を与えてしもて、何年も逢えとらん。逢いとても、男を全て拒んでしまい、あんな生き物が生まれてしもたがやぞ。」

「え…。あ、あの男人禁制ってそういう理由だったんですね…。」

「あぁ、ほうや。それと、あの生き物たちは…うちの、元家族。これは、私自身が招いてしもた呪いやぞ。うちが最初に死ねあいいがにぃ、死んどらん。ほれは、彼女に謝りたいさかいやぞ。」

おいらは目を丸くし、少し口籠った後一つ質問した。

「…もしかして、万世殿に会うのは諦めると言ったのは…」

「今日でぇ、終わる。呪いも、一族の血筋も。早う終わらせれあ良かったがにぃ、彼女を護衛する奴らが強すぎた。」

「……」

「一縷の望みを賭け、君たちに依頼したがやっぱ彼はおらなんだ。人目だけでも、お会いしたかった。」

そう言い、ぴたっと灸さんは足を止めた。

「どうか、しましたか?」

「着いた。…君はここで待ってたいま。何かあったら名前を呼ぶで。」

「あ…はい。」

灸さんは目の前の木に近づいて行った。それは、一見するとただの木だが木の中に女性らしき姿があった。瞳を閉じ眠っているようだった。

「…(しゅ)()。」

灸さんがそう声をかけると閉じていた瞳が開いた。と、次の瞬間。

「キェエェェエェ‼」

そう叫びながら、幾つもの木の枝が伸び灸さんを襲った。

「灸さんっ!」

動きたかったが、呼ばれていない。ただ見ることしかできないのか…。

「…鐘羅。話を聞いてたいま。…昔のように、うちの、話を…。」

「キィィイィイィ‼」

また木の枝が灸さんを襲った。さっきので既に何本も体に刺さっているのに!

「…ごふっ…しゅ、ら…。ただ、誤解を解きたいのだ…。鐘羅…話を聞いてくれる、だけで…良い。頼む…。」

「キィィイィ…」

灸さんは何とか杖で立っていたが、その場は赤く染まっていた。

「…鐘羅。君の大切な森の…木ぃ伐採したのは、我ら一族では、無え…。うちはぁ、君を好いとったさかい…木ぃ伐るがならば、麓のみ、て言い聞かせとった…。」

「キィ…!」

「ほれでも、信じられんちゅうなら…うちを殺いても構わん。ほれで君が、幸せなら…ほれでいい。」

灸さんはじっと鐘羅さんの目を見て、よろよろと近づいた。

「君はぁ、変わらんね。あの頃の、美しいままだ…。うちはぁ、こんなに老いぼれてしもたよ。」

「……」

「うちはぁ、君を殺せん。今でも、好いとる…から。鐘羅…誤解が解けたか、分からん。そやけどぉ、最期に逢えて…良か、った。」

灸さんは、ふらっと仰向け倒れ込んでしまった。

「灸さん‼」

灸さんは、弱弱しく瞳を開けおいらを見た。

「…福、寿草が…咲き誇るとこ、簪あり…。彼女に…あげたかった、も…の。」

そう言うと、ふっと瞳から光が消えた。鐘羅さんから生えた木の枝がするすると収まった。

「…福寿草…」

探してみよう、灸さんの最期の言葉なのだから。おいらは急いで近くを散策した。福寿草、何となく分かる。

「黄色い花…黄色い花…。」

最悪、雪埋もれてるかもしれない。おいらも犬じゃないから分からん。

「あっちか?いや、こっち!」

もうさっきの戦いで足も痛いし、体力もないけどこれも依頼だ。依頼は最後まで行う。絶対見つける。半時くらい経っただろうか。ふと顔を上げ、汗を拭いていると視界の端に黄色い花が映った。近づいてみると福寿草だった。

「あった~!けど、ここからが大変だな~。よし、頑張ろう。」

四半時、掘ったり掻き分けたりしていると簪らしきものが見つかった。土まみれで福寿草の根っこが絡みついている。

「…申し訳ないけど、このまま持っていくか…。花を無理やりむしるのは可哀そうだし。」

おいらはそれを持って灸さんの元へ向かった。戻ると、さっきまではいなかった女性…いや、女性みたいな姿の者が自分の太ももに灸さんの頭を乗せ、優しく撫でていた。

「…や、い、と…。や、い、と…」

「…あの。」

おいらはそっと近づき、その簪を差し出した。

「…これ、灸さんからのです。花が絡まったままですみません。ですが、無理に外しても花が可哀そうですし、きっと、これ込みで灸さんからの贈り物だと思うんです。」

彼女は振り返り、そっと手を差し伸べた。俺は福寿草の絡みついたその簪を渡した。…彼女の顔は、何故か梓さんに似ていた。

「か、んざ、し…。やい、と、の。」

「…では、おいらは下山します。」

「やい、と…」

おいらは少し下り、振り返った。灸さんの亡骸は彼女の根っこによって包まれていた。彼女は、木の妖だろう。魂が宿って誕生したと思う。本来なら彼女も倒さなければ駄目、人間を殺した妖だから。けど…自分の意志があるしこれ以上は暴走しないと思う。おいらはこれで良いんだと自分に言い聞かせ、村に向かった。

「…あれ、風雅さん。」

「あぁ、やっと下りてきたのですね。」

「皆と帰ったんじゃなかったの?」

「確かに、言われましたが…梓さんのことと、報酬金の事でお話がありましたから。」

「梓?」

「…こちらに。」

おいらは風雅さんに案内されるまま、部屋に入った。

「これは…?」

「…梓さんです、多分。」

「……」

そこにいたのは、丸太だった。正確には子供の着物を着た丸太。そして、さっきまで遊んでいたと思われる日本人形に、鞠。

「先ほどまで一緒に遊んでいたのですが、外で物音がして離れて戻ってきたらこんな感じでした。」

「そう、なんだ。」

「どうしますか…?」

「埋葬、してあげよう。この子も人間だ。だから。」

「分かりました。」

風雅さんはそっと抱き上げた。まるで子供を抱くように。おいらは鍬を拝借し穴を掘った。

「…おやすみ、梓さん。来世では、ちゃんと誰かの子供になれますよ。」

おいらは埋葬した後、手を合した。風雅さんも隣で手を合していた。

「では、帰りましょう。」

「そうですね、風雅さん。」

おいら達は帰路に着いた。ふと、風雅さんがおいらに質問してきた。

「…あの村、やけに静かでしたね。あんなに温泉のある村ならばもう少し旅人や住民がいると思うのですが…。梓さんと一緒に居る時も、二人しかあの村にいないような感じがして…。」

「風雅さん、それで正解だと思います。でも、少し間違っています。…そもそも、あの村には灸さん一人だけだった、とおいらは思うよ。」

「え…?」

「だって、あんなに温泉のある素晴らしい場所なら、風雅さんの言う通り、もう少し旅人や住民がいても良いものだけど、それがいない、ということはもう既に、廃村だったんだよ。」

「……」

「おいら達が呼ばれたのは、せめてもの弔いだったんじゃないのかな。灸さんの。」

「じゃあ、梓さんはどうして…」

「…灸さんが、望んでいた未来…じゃないでしょうか。灸さん、木の妖に惚れていたんです。だから、その人と子を為せたら…そういう願いが梓さん、もとい元々の木に生命が宿ったのでしょう。」

「もしかして…灸さんが、帰ってこなかったのは…」

「木の妖に、会いに行ってそのまま…亡くなられました。でも、誤解が解けただろうし何より、灸さんの表情は穏やかだった。」

「…そうなんですね…。あの、その誤解って…」

「あの村、温泉を扱っているだろう?そのための木を伐りに行くときは麓のみ、って灸さんは言っていたみたいですけど…灸さんの一族の誰かが、もっと欲しいと欲をかいて、あの山に踏み込んだのでしょう。」

「まぁ…」

おいらは立ち止まり、振り返った。小鳥が囀るだけで人の声は聞こえない、その山を見た。

「生きるために、様々な所から命を頂くこともありますが、与えられた分だけで十分なのに…人間はそれ以上を求めてしまう。本当に、不思議です。」

「…欲深いんですね、人間という生き物は。それで、戦が増えるのはごめんですけど…」

「うん、そうだね。…おいら達はもっと、妖から何かを学ばなきゃ駄目なのかな。」

「…そうですね、いつか…共存できる日を願います。」

おいらと風雅さんは山に向けて手を合わせた。

「さて、帰りましょうか。もうお腹が空きました~。」

「ずっと戦っていましたものね。きっと帰れば昼餉が用意されていると思います。」

「わぁ~楽しみです。でも、昼餉というより夕餉になる気が…」

「まぁ、軽くご飯が用意されていますよ。きっと。」

それから半時、歩きすっかり夕方になってしまった。本当に、風雅さんは先に帰ってても良かったのにとおいらは思った。他愛もない話をしながら歩いていると前から人が歩いていた。まぁ、旅人とかもいるだろうし気にせずすれ違った、その時。その人の右耳に揺れる飾りが視界に入った。おいらは立ち止まり振り返った。

「……」

「どうかしましたか?霞様。」

「いや…その、盈月に似た人とすれ違ったような気がして。」

「盈月さん?」

「妖退治屋の隊員の一人だよ。今でも一応、隊員として在籍してる。」

「そうなんですね。…似ている人なんて、二~三人いるんじゃないでしょうか?他人の空似、というのもありますし。」

「…そうだね。盈月、か。また会いたいなぁ…。」

懐かしい友の顔を思い出しながら、おいらは妖退治屋へ帰った。

                                 (続)

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