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愛者永遠  作者: 桜宮朧
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枯れ枯れの灸花 上

お久しぶりです、桜宮です。

訂正です、前編、後編に分けると言いましたが前編、後編、中編に分けます。

後編はもう少し時間かかります、陳謝…。

たくさんの方に、小説を読んでいただき大変嬉しいですし、ありがとうございます!°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°

〈元和元年 三月二十二日 前編〉

「行く!もうまわしもしとる!」

「…まじかよ。」

半べそをかき、行くと言って聞かなかった。俺は頭を抱えたが本人が行くというなら仕方がない。

「本当に、大丈夫でしょうか?」

「本人が言っているなら、連れて行くしかないでしょ。」

「そうですね。私が手をつないで行きます。」

「ありがとうございます。」

こうして、風雅さんが手を繋ぎ梓を見ていてくれた。

「黙って出発すれば良かった。」

「ま、まぁ…そうだけど、それはそれで不機嫌になったら困るよね。」

「…そうですね。」

梓の案内で進まなくては分からないのだが、小さい故に遅かったので結局俺がおんぶ…のつもりが肩車を要求しやがった。

「高い!おっ父に肩車されたのと似とる!」

「背丈は違うだろうよ。」

「景色が似とる!」

「そう。…落っこちないでよ?お前、小さいから見つけるの大変そうだから。」

「平気やで!落っこちても自分で登ってこれる!」

「…落ちたら頑張ってね。」

「うん!」

「…絶対、うんじゃないと思うよ…」

「何か言いましたか?霞さん。」

「何も…」

暫く歩き、俺は「あ」と声を漏らすと霞さんが驚き尋ねた。

「ど、どうしたの?驚いた…」

「こいつ、宿に置いて行こうかとか言いましたがこの近くだとこいつの村があるんじゃないかと。そこに寄ってお爺さんに会いませんか?」

「…確かに言われてみれば。」

「じゃあ皆に伝えてください。」

「分かった。」

霞さんは皆に、俺は梓に言った。

「村に案内できるか?梓。」

「村!案内できる!もう少しで着くと思う。」

「あ、そうなんだ。じゃあ、行こう。」

梓が生き生きと案内してくれ、村に着いた。

「…温泉がたくさんある、栄えた村なんだな…。村か?これ。」

「爺ちゃんのとこにも案内する!こっちやお。」

「あぁ。」

梓を一旦下ろし、案内された。着いた場所は大きな屋敷だった。

「…お前、もしかして村長の孫か何か?」

「そうやお!」

村に行こうと言って正解だった。首と胴体がさようならするとこだった。

「とりあえず、中に入るか。」

「入って入って!」

招き入れられ、梓は奥の部屋へと俺らを案内した。中に入ったのは数名。残りは外で待機している。とある部屋に着くと梓は思い切り襖を開けた。

「ちょ…」

「ただいま、爺ちゃん!妖退治屋の人、連れてきた!」

俺は梓に爺ちゃんと呼ばれた者に視線を移した。口の周りに白い髭をたっぷりと生えていて開いてるのか開いていないのか分からない優し気な瞳。

「は、初めまして。突然の訪問、すみません。」

「貴方方が、妖退治屋ですけ。遠路はるばるようこそ。突然の訪問、この子からここに最初、来るよう言われなんだですけ?」

「あ…全然。山に直接行こうかと思ったのですが、ここの近くならその子の村もあると思い、来ました。」

「はぁー…、やっぱ忘れとったのか。機転を利かせてくださり、あんやとごぜーみす。」

「いえ。」

この人、梓と全然言葉が違うなぁなど考えていると、立っているのもなんだから座れと促された。座った後、少しだけ話を聞くことになった。その時、先ほどの疑問が解決された。

「うちの名前は(やいと)と申します。生まれは金沢、育ちはここにごぜーみす。この子は父の影響でここの訛りですが、うちは生まれの訛りが残っとる故、言葉がちごうがや。」

「あ、そうなんですね。俺は、円城寺寿と申します。」

「おいらは霞左衛門です。」

ここに居る者は全員名前を告げた。外にもいると伝えておいた。

「それで、今回は山にいる妖の討伐ですよね。」

「…あぁ、ほうや。そうだけども、やっぱ隊員ちゅうのは男が多いがけ?」

「まぁ…はい。」

「やっぱ、そうですじー。…討伐してほしい山はぁ、男人禁制でしてぇ、本来ならば入ってはならんのですが今回ばっかりはうちが許可する。やさかい、この先はうちについてきてくださりませんか?」

「分かりました。」

「爺ちゃん!爺ちゃん、今足が悪いんでしょう?やったらわっちが案内する!」

梓は杖を持ち立ち上がろうとした灸さんに話しかけた。

「ここの付近なら杖つけあじゃまない。梓はここでぇ、待っていなさい。すぐに戻ってくるさかい。」

「やだ!わっちも行く!梓、小さない。爺ちゃんの役にも立てる!」

灸さんは杖をたんっと床に叩きつけた。その音に梓はびくっと怯えた。

「小さいも女も男も関係ない!梓は山に行ったらだちゃかん!かとう待ってなさい!」

先ほどの穏やかな声とは打って変わり、怒気を含んだ声で梓に言った。こめかみには青筋が立っている。

「あ、あの私が梓さんと一緒に居ます。それなら、良いですか?」

風雅さんが灸さんにそう話しかけた。すると段々落ち着き、こくんと頷いた。

「…じゃあ、行ってくるから。風雅さん。」

「はい。」

灸さんの後を歩いてるその時も、後ろからわんわんと泣き声が聞こえた。外に出て、例の山へと向かった。黙々と歩いていると灸さんが口を開いた。

「こういう場合はぁ、いつも妖退治屋に頼んどるんだ。陰陽師も、退魔師も信用しとらんさかいな。」

「…そうなんですね。」

「退治してくれるのは、ありがたいのだけど…退治終わりに渡す報酬の金が少ないだの、聞いとったのより、妖がでかいだの、文句ばっかりで頼むのが嫌になったがやぞ。」

「それは、酷いですね。」

俺は社交辞令の如く返事を返した。それでも爺さんは話し続ける。

「ほんな中でぇ、巡り合えたのが妖退治屋やった。名前も聞いたことのない退治屋でぇ、どうやろうと心配やったが、何よりもそこの当主の懐の深さに惹かれたんだよ。」

「…当主?」

現在の当主かと思ったが、年齢的に合わない。そしたら、前当主だと思うが会ったこともなえれば存在も知らない。俺は少し首を傾げると霞さんが声を発した。

「もしかして、万世殿ですか?」

「あぁ、ほうや。懐かしい名前や。」

「誰。」

「確かに、寿君は会ったことない人だよ。ずっと前に消息不明でね。だけど今は、ちゃんと生きてるよ。兄者が屋敷で見た、と言っていたからね。」

「へぇー…」

何で消息不明になったのかは知らないけど、そんな人がいたんだと俺は思った。

「…ぱったりと来んくなってしもて、心配ながやぞ。また、会いたいて思うとるのだが、もう…会えんやろうね。」

「会えない?爺さん、まだ生きられるでしょ?会えるんじゃないの?」

「再会なんぞ、奇跡に近い。そやさかい、信じて待つが、期待はせんようにしとる。そやけどな…」

と、例の山の麓に我々はついていた。爺さんは振り返り先ほどの言葉の続きを紡いだ。

「やっぱどっかでぇ、期待を持ってしまうがやぞ。そやさかい、こうして退治の事は君たちを呼んでしまう。」

泣きそうな柔らかい笑みを見せ、山のほうに体の向きを変えた。ぱんっと音が鳴るくらい手を叩き合わせた。

「今回ばっかりは男が入ることを許いたまえ。」

そう言い、腰に差していた小刀で何かを斬った。

「……」

「どうか、お気ぃつけてたいま。うちは屋敷に戻るさかい。」

「分かりました。必ず、朗報をお伝えします。」

爺さんはこくんと頷き、全員が山に入るまで見送ってくれた。


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