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愛者永遠  作者: 桜宮朧
30/51

章魚蘭は彷徨い続ける

お久しぶりです、物凄い遅い明けましておめでとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ

やっと一話、出来たので投稿します!

まだまだ続きますので、よろしくですm(__)m

また次話は遅れるかもです(-_-;)

〈元和元年 三月二十日〉

「うっわぁ~…可愛いが二人いる~。」

「相変わらず近すぎるわよ!馨!」

「えぇ~だってしっかりこの目に焼き付けたいじゃない~。」

朝餉が終わった後、馨ちゃんと躑躅さんに火影を紹介した。

「そう言えば、火影ちゃんって翡翠の傍にいた子よね?」

「…恋仲。」

「あ、そうだったの⁉」

「初耳。」

「まぁ、皆さん知らなかったのですか?」

「翡翠はよく一人でいたからね。寿みたいに。」

「もともとどこか余所余所しかったけど、ある日何故かもっと余所余所しくなったなぁ~。」

「確かにね。」

「…私が初めてお会いした時は、とても親し気な方でしたよ?」

「外ではね~。何とか親し気に接しようと心掛けているんだよ。」

「なるほどです。」

「…翡翠様は、本当はお優しい方です。」

「……やっぱり姉妹だねぇ。人見知りな部分がそっくり。」

「あは~確かに~。」

「ひ、人見知りじゃありません!ただ、その…緊張しているだけです…。」

「初めて来た場所ですものね。ここの方は優しいのでそんなに緊張しなくていいですよ。火影。」

「うん…」

「…ねぇ、火影。風雅さんにここを案内してもらったら?風雅さん、とても優しいので火影も慣れると思います。」

「…分かった。」

ちょうどいた風雅さんに案内するように頼んだ。風雅さんに駆け寄る火影を見送った。

「光ちゃん、何だか寂しそうだね。」

「血を分けた妹だからでしょ。仲直りできたのに、明日にはここを出ていくんだから。」

と、私はこっそりと話す二人の会話が聞こえた。振り返りにこりと微笑んだ。

「確かに寂しいですが、妹の身の安全を考えると仕方ないと思っています。」

「光ちゃん…」

「それに、書状など文を送ってくれると思ってますので。そんなに寂しくはありません…。」

すると、馨ちゃんがぎゅっと抱き着いてきた。少し驚いたが安堵する温もりだった。

「私もいちおー妹だったし、甘やかしたくなったら私を呼んでね。」

「馨ちゃん……」

「…すごく良い感じのところに水を差すけどさ」

「何でしょうか?躑躅さん。」

「もしかして鍛錬から逃げたいとか、そう言うのじゃないわよね?」

「ぎくぅ!」

「それなら、暫く光接触禁止令出してもらうわよ?当主様に。」

「ち、ちちち違うもん!ちゃ、ちゃんと鍛錬するもん‼」

「本当かしら~…」

「むぅぅぅ…」

「なんであんたが怒るわけ?」

「信じてくれないから。」

「あんった、いっつもいっつも鍛錬から逃げるじゃない‼さ!鍛錬行くよ!」

「ひえ!光ちゃ~ん助けて~。」

「…え~っと…頑張ってくださいね。鍛錬後、一緒にお茶をしましょう。」

「うぐ…それなら頑張る。」

そして馨ちゃんはずるずると躑躅さんに連れて行かれた。

「くぅふ」

「あら、白銀。おはようございます。」

「わぁふぅ…」

「白銀のご飯を用意しなきゃ。台所に行きましょう。」

「わん!」

  ◇

白銀の朝餉が終わった後、万葉様から大広間に火影と来るように言われた。きっと昨日の事を詳しく聞くのだろう。

「集まってくれてありがとう、二人共。」

「あの、この人数なら大広間ではなくても宜しいんじゃないんでしょうか。」

「まぁ、確かにな。でもここが一番人が来ない故、良いかと。」

「それでしたらここが良いですね。」

火影は相変わらず、私の腕にしがみつき万葉様を睨んでいた。

「…それで今日は、火影の事についてだ。」

「後、翡翠様でしょうか?」

「そうだな。」

「…火影が話しやすいやつからで良いぞ。」

「……」

「火影、私が代弁しましょうか?」

と、火影はふるふると首を振った。

「代弁は大丈夫そうだな。」

私たちはまず、翡翠様の過去について話し合うことにした。火影も万葉様も多少なりと知っているので私は耳を傾けた。

「翡翠様は、その…和泉辺りでそれなりに権力のあった縣家に仕えてました。で、でも歴史に残るようなことはしてないので…徳川家康様みたく有名ではありません。」

「確かに初めて聞いた名前ですね。縣家…。」

「うん、あたしも初めて聞いた。でね、翡翠様は戦争孤児でさ迷っているところを殿様に拾われて最初は一番下の仕事をして、どんどん出世して最終的に小姓となったって。」

「まぁ、すごいですね。」

「確かにあの子は天才と言えるほど、一回教えたことをすぐに吸収出来て、応用も出来るんだ。」

「翡翠様、本当に凄くて、優しくて、大好き。けど、今の翡翠様は変わっちゃった。本当の翡翠様に、戻ってほしい。」

「火影…。」

「翡翠様ね、そんな天才児だから恨まれることも多かったんだって。」

「それが、河豚毒殺事件。まぁ、大きな力によりもみ消された事件なんだがな。翡翠から聞いたのだ。」

「河豚?」

「姉様、知らない?河豚。でもそうよね、あたしも知らない。だってふぐ禁止令があるもの。」

「それなのに、実行した奴らはどこからか河豚を入手し、気づかれないように毒を盛ったのだ。」

「まぁ……」

「これは全部、翡翠に聞いたことだ。実行当時、翡翠は別の所で友人と作業をしていたにも関わらず、突然町奉行の者が現れ、翡翠を捕らえた。最初は何が起きているのか理解が出来なかったが、段々と理解して必死に弁明したそうだ。」

「…奉行所で、話したのに、その人たちは翡翠様の話に耳を傾けなかった。それから翡翠様は、拷問の日々だったって言ってたわ。」

「……」

「けど翡翠様には本当に罪がない。なのに、絶対あると言って聞かなくて吐くまで続けたのに、もう処刑してしまおうという結果になったの。友人さんもずっと泣きじゃくって言ったのに、門前払い。そうこうしている内に、処刑日になってしまったの。」

「あの、翡翠様が生きているのって…その先に何かあったのですか?」

「うん、そうだよ。」

火影はじっと私を見つめた後、ちらりと万葉様を見た。

「翡翠は市中引き回しのち、斬首刑が執行された。他にも数名いて翡翠は最後だった。あらゆる拷問を受け、翡翠はもう疲労していた故、死には何も抵抗がなかったと言っていた…。」

  ◇

〈大和のどこかにて〉

「…久しぶり、元気だった?」

花に埋もれ、殆ど分からないけど俺には分かる。一面桃色の、菊にも似た花。幾重にも花びらを重ねているふんわりとした花だった。踏んづけないように気を付け、俺は座った。

「ここに来ると落ち着くんだ。お前がいるからかな…。」

もちろん、返事なんてない。俺が一方的に話しかけるだけだ。

「さっき、任務が終わってね。帰る途中だったんだけど、せっかくなら会いたくなって。」

俺は胡坐から、膝を抱える態勢に変えた。何も考えず、ぼーっとしていると昔の事を思い出していた。

  ◆

〈翡翠 過去:千六百十三年〉

川特有の匂いが鼻腔を擽った。最期に嗅ぐ匂いがこれだとはな。せめて、幼い日に食べた母の料理の匂いで鼻腔を満たし、死にたかった、なんて僕は思っていた。そんなくだらないことを考えなくちゃ、死が怖くて怖くて堪らない。俺は何もしていない、だけど誰も耳を傾けやしない。

「…殿、せめて貴方に会いたいです。黄泉の国というところで。」

俺は瞳を閉じた。いつでも斬られていいように。切腹くらい、したかった。…どんどんと、血の匂いが濃くなってくる。薄っすらと瞳を開け、川を見ると真っ赤に染まっていた。

「もう、体とお別れか…」

ついに、隣の人間の首が斬られた。どんと鈍い音がした。と、その時。

「その者を解放しないか!」

若い男性の声が処刑場に響いた。役人も俺も、その者に目を向けた。

「何だ貴様は!刑の執行中に!」

「…その者に、刑を与える必要はあらず。本当に罪を犯した者はこの者たちだ。朧!」

そう呼ばれた人は、気絶している二人の男を役人の前に放り投げた。

「儂の言葉を信じられぬというならば、この者たちを拷問してみろ。全て話すぞ?」

「…どうする?」

「信じられぬが…聞いてみるだけ聞いてみるか。」

「そうするか。」

抵抗するその者たちをすぐに縛り上げた。その一連の出来事を唖然と眺めていると、俺を縛っていた縄が解かれた。

「貴様はもういい。」

「え…あ、はい。」

そう言われてもすぐには立てなかった。なんせずっと拷問に耐えていたから満身創痍だった。何とか立とうとした俺の元に、青年が駆け寄ってきた。

「翡翠‼」

「…文造…?文造か!」

おれはひしっとその男を抱きしめた。

「良かった…おら、必死に訴えてたらな、あの方々達が手を差し伸べてくれんだぁ。」

俺は、その救ってくれた方たちを見た。上等な着物からして、俺より立場は上の人間だと分かった。俺は足が痛いのも関わらず、土下座をいた。砂利に何度も頭をこすりつけお礼を言った。文造も一緒だった。

「君は、怪我が酷いだろう⁉そんなにお辞儀をしなくていい。」

「ですが…このようなことは本当に奇跡に近い事です。本当に、どんなにお礼してもしきれません。」

「翡翠…だったかな?」

「はい。翡翠と申し上げます。」

「一旦、儂の屋敷においで。療養の場を設けなくてはいけない、生傷もたくさんあるな…。このままだと膿んでしまう。それに、腹も減っているだろう?文造もおいで。そのほうが良いだろう?」

「そ、そうですね。えっと、良いか?翡翠。」

「お前がいてくれたほうが、すぐに傷が完治するだろう。」

「おらにそんな効果はねぇよ。」

文造はくしゃっと苦笑いしながらそう言った。けど、友人が傍にいてくれれば安心する。それから、怪我が完治するまで屋敷で良くしてもらった。文造もずっと傍に居てくれた。

「…なぁ、文造。」

「なんだ?」

「俺ら、これからどうする?」

「……」

「故郷も、家も、親も、上様も…いない。」

「んだら、ここで働くのはどうだ?」

「ここで?」

「んだ!何かここ、働けるみたいだ。だからさ、このお礼も含めて当主様に言ってみよう?」

「そうしよう!」

そんな感じで完全に完治した後、当主様に直談判しに向かった。色々説明した後、当主様は一言、きっぱりと言い放った。

「駄目だ。」

「え…?」

「な、何でですか?当主様‼貴方様にお礼をしたくて、おらたちは…」

「ここの仕事は、命に関わる仕事なんだ。常に死と隣り合わせ。」

「当主様!我々はもともと、上様の元で働いていた者です!今までも死と隣り合わせでした!」

「…君たちが相手をしていたのは、人間だろう?」

「はい…?」

「ここで戦うは、人間相手ではなく異形の者。俗に言う妖。それも、自我も何もないひたすら襲ってくる恐ろしいものなんだ。」

「……」

「それでも、ここで働くか?生きていく仕事なら、たくさん転がっている。安全ですぐに命を落とさない、仕事がな。」

「…文造…」

「おらは…」

「もう一日、考えてごらん。それでも考えは変わらないと言うなら、雇ってあげる。」

「「はい…」」

俺は文造と話し合った。俺はここで働きたい意志は変わらない。だが文造の表情が重く沈んでいた。暫くの沈黙の後、文造が口を開いた。

「…翡翠、ごめん。やっぱぁおら、死にたくない。せっかく戦で生き残った命なのに、無駄にしたくねぇ。穏やかに生きて、べっぴんな女房を見つけて、安らかに死にてぇ。」

「文造…。…それが、君の意志というなら、俺は止めない。そうだよな…心臓が、何個もあるわけじゃない。体も、代わりがあるわけじゃない。死んだら、そこで終わりなんだよな…。」

「翡翠、おめぇはここで働くけ?」

「うん。恩は仇で返したくないし。命尽きるまで、新たなる主の元で働くよ。僕は、一人で生きることが、分からないんだ。誰かに尽くすことしか、生きることを知らないからさ。」

「…そっかぁ…。ごめん、ごめん。おらも君の傍にいたかった。けど、死ぬのは怖ぇ。」

「良いよ。それに離れたって文通すればいいことだべ。」

「翡翠…」

「お前とはずっと友達だ。」

次の日に、当主様に考えた結果を伝えた。すると当主様は寂しそうに微笑んだ後、頷いた。文造は、元から持っていた荷物をまとめその日には出ていくと言った。

「…もう少し、いないか?ここに。」

「それも良いけど、おらがいつまでもここにいてぇって望んじまう。んだら、さっさと出て行ったほうが、良いんだ。」

「そっか。」

「…またなぁ、翡翠。ぜってぇ書状送るだ。それから、お前より先に、べっぴんの嫁見つけるだ!」

「はははっ!宣戦布告かよ、文造。」

「そうだべ。お前も、べっぴんの嫁見つけたら、すぐに報告しろ?すぐに祝ってやる。」

「分かった。俺も、お前より先に嫁を見つけてやる。」

「約束だべ。」

にかっと微笑み、文造は大きく手を振りながら去って行った。また会える、そう信じていたのに。

  ◆

「…お前ともう少し、話をしたかった。相談に、乗ってほしい…。文造…。」

俺はぐっと膝を抱き締める力を強くした。

「俺は…どうしたいんだろ…。分からないよ。答えが、出そうで出なくてやきもきしている…。火影と、穏やかに生きたいのに…。」

涙が、自然と出てくる。どうしたいのか、なんてほざくなら道を間違わなければ良かった話だ。罪悪感と焦りと、何か…その気持ちがずっとぐるぐると巡っている。

「帰りたくないけど、帰りたい。火影のところに…。けど…けど…」

脳裏にいつもちらつく“別れ”の二文字。そうすれば、火影にもこれ以上の負担をかけずに済むが、傍から見ると自分の保身のために別れたのではと言われそうで怖い。

「…帰る、か。別れも、この先も、会わなきゃ話せないし…。」

俺は、涙を拭い立ち上がった。文造に手を合わせ俺は屋敷へと向かった。

  ◇

〈亥の刻〉

「…当主、書状が届きました。」

「あ、ありがとう。朧。」

「いえ。」

儂は早速、その書状を開いた。

「…あいつからか…。」

「誰でしたか?」

「万世だよ。名前を言うのも嫌だよ。」

「……」

朧はじっと書状を見つめていた。そう言えば、朧はこの男の代にやってきた隊士だ。懐かしいでも思っているのだろうか。

「朧も見るかい?そんなに大した内容ではないけど。」

「あ…いえ、師範…字が変わったな、と。」

「字?変わったなと申されても、儂は産まれたときからこの字しか見ていない故、分からぬが…。」

「そう、ですよね。…師範は、本当に字の綺麗な方でした。紙は高くて無駄遣いはあまり良くないのに、墨で少し汚れたり、字が気に食わないだけでも捨てるような人でした。なのに…」

朧は書状を睨むような、悲しそうな表情で見つめた。

「それは、偽物です。絶対に、万世殿ではありません。それと、その字は普通に右で書いてますね。」

「え?言われてみればそうだが…。しかし右利きの人間が多いものではないか?」

「そうなのですが…万世殿は、左利きです。」

「…!」

もう一度、書状を見ると確かに左利きに者が書いた場合、書きにくい方向から書かれていた。それに、乾ききっていない文字に触れたらさっと掠れている部分があると思うのにそれすらなかった。

「なので、それを補う形で万世殿は戦う際、二刀流で戦っていました。」

「そう、なのか?」

「はい。助けられたときは聢と見ることが出来なかったのですが、目が回復したあと、共に戦った時初めて見ました。あの迫力は決して忘れることが出来ません。」

「…調べる必要があるが…どうすれば。東郷さんはもういないし他にも詳しい者…。」

「それならば、該当する者が一人。」

「真か!」

「はい。ですが、今はどこにいるかは分からないのですが、宜しいでしょうか?」

「構わない。」

「水樹盈月、万世殿と一番交流のある者でした。前までは文通などして繋がっていたのですが、突如連絡が絶たれてしまい、何をしているのかも分からない状況です。」

「ここに在籍していた者か?」

「今でも、事実上はここの隊士です。妖について詳しくなるために修行に出ていると師範は言ってました。」

「…なるほど。」

「書状を鷹に託しても良いですが、たぶん戻ってくるかと。俺のほうでも任務の際、人に尋ねてみます。」

「ありがとう、朧。」

「いえ、貴方様のちからになるならば、この命を賭しても構いません。」

「それは止めてくれ、朧。」

「冗談、ですがその覚悟もあるということにございます。」

「…そうか。なぁ、朧。」

「何でしょうか?」

「儂にとって、お前は兄のようなものだ。だから、こういう場のとき当主ではなく名で呼んでも構わないよ。」

朧ははっと驚いた顔を見せた後、珍しく微笑んだ。

「そうであっても、当主殿は当主殿にございます。名前で呼ぶなど恐れ多いです。」

「…そう、か。」

「では、俺はこれで。」

「うん。」

朧が部屋を出て行った後、書状を詳しく見ることにした。


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