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愛者永遠  作者: 桜宮朧
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想いを言えた赤い躑躅

〈元和元年 三月十八日〉

卯の刻。儂は、やっと目が覚め支度を整えた。朧も既に帰ってきて皆はそろっている状態。朝餉も簡単に済ませ、皆を梅の間に集めた。そして光に、自身の事を話すことの了承を得た。光と共に皆が待つところに行った。

「…光、大丈夫か?」

「は、はい。少しだけ緊張してますが…」

「儂が傍に居る。それに皆は受け入れてくれるよ、きっと。」

「…そうですね、安心しました。」

儂は襖を開け、部屋に入った。皆の者が一斉に頭を下げた。儂はいつもの上座に行き座った。光は儂の右側にちょこんと座った。

「まずは朧左衛門、霞左衛門。及び数名、任務大儀であった。」

「ありがたきお言葉、痛み入ります。」

「ありがとうございます。」

「…して、今日は光の事で話がある。その前に、光から話したいことがあるそうだ。」

光は床に手と頭をつけ、深々とお辞儀して顔をあげた。

「此度は、大変ご迷惑とご心配をお掛けし申し訳ありませんでした。それなのに…私を探してくれて、ありがとうございました。私は本当に、優しい方々に恵まれているなと実感致しました。」

「…光ちゃん…」

「今は泣くの我慢しよ、馨。」

「…当主、それで光さんについての事とはなんでしょうか?」

「あぁ、それで光についてだが、二つある…」

と、光はぎゅっと儂の袂を握った。儂は、そっとその手を握った。

「一つ目は…、光の体内には本来の魂と妖の魂があり、次の新月には妖となってしまうこと、もう一つは…」

儂は、ばくばくと音を立て鳴る心臓を落ち着かせるため、一度深呼吸をした。

「光と儂は、兄妹である」

皆の息を飲む音が聞こえるほど、その場は静かだった。最初に口を開いたのは朧だった。

「…それは…真ですか?」

「あぁ。全部、そうだ。」

朧は儂を見た後、光に視線を向け見比べた。

「確かに…似ていますね。光さんと苺依殿は。」

「じゃ、じゃあ!夫婦となれるのですか?当主様‼」

花宮が質問をしてきた。儂は静かに頷いた。すると、静かだった部屋は一気に賑やかになった。

「あぁ~…良かったです~。」

「東郷さんにも言わなくてはですね。」

わいわいと儂らが夫婦になれることを喜んでいた。と、静かだった寿が口を開いた。

「…体内に妖の魂があるとは、どういうことですか?」

「あ…言われてみれば。」

「そんなことってあるのかしら?」

「でも信じられるわよね、光さんの髪って銀じゃない。」

「…ちゃんと説明する、一旦落ち着け。」

皆が落ち着いたのを確認し、儂はあの者との対談や白銀が話してくれたことを思い出しながら話した。

「…では、もう変えられない運命ということですか?」

「あぁ。」

と、光が口を開いた。儂の袂を握りながら。

「わ、私は…人間としての生が終わるその時まで、皆さんと仲良くしてたいです。どうかこれからもよろしくお願いします。」

「…当ったり前だよ!光ちゃんとはずっとずっと友達だよ!」

「馨ちゃん…」

「困ったことがあればあたしらに言ってよね?ちゃんと対処するから。」

「躑躅さん…、はい!本当に皆さん、ありがとうございます。」

会議が終わり、解散した後花宮は光を抱きしめていた。ほのぼのとした光景に頬が緩んだ。

  ◇

〈同刻、退魔屋敷にて〉

「かあぁあぁあぁ‼」

「…そうか。」

花蘇芳が向こうの事を知らせに来た。…胸糞悪い…全て向こうが手に入れてしまった。どうにか奪うことは出来ないだろうか…。

「…ひくっ…ひっく…」

「……」

こいつはあいつが死んでから泣いてばかりだ。もう、役には立たぬな。

「火影、もういい加減泣くのを止めたらどうだ。うるさくて構わん。」

「…だって…父上、は、母上が…母上が…」

「泣いても生き返らないのだぞ?泣いてももう意味がない。それにもう弔っただろう?」

「で、でもっ!」

「我に口答えか?」

「っ!」

「明日向こうにいる女に接触しろ、命令だ。」

「あ…、は、は…い…」

火影はふらりと立ち、我の部屋を出た。翡翠にでも会いにいたのだろうか。

「…興味ない。」

茶でも貰いに行こうとしたその時、眩暈がした。我はがくんとその場に座った。…もう、時間がないのか…この体が、持たなくなっている…。

「まだだ…。まだ、我の望みは叶えてない。叶えるまで、死ぬわけには行かぬ。」

血反吐を吐こうが、どうしようが我は、望みを叶える。あの望みを。…庭にひっそりと黄色い菊に似て葉がぎざぎざとした花が咲いていた。

  ◇

〈妖退治屋にて〉

「…これで光さんに威圧とかかけない?朧さん。」

「…うっせぇ…」

「何がよ?」

「何でもねぇ…」

「まぁ、とりあえずお疲れ様。朧さん。お昼はあたしが作るから!」

「あぁ、あの約束か。ありがとうな、楽しみしている。」

声色は嬉しそうなのに、表情は変化ないのね。本当、笑わないなぁ…この人。

「…なぁ、躑躅。」

「何?」

「今回も光さんに、手伝ってもらうのか?」

「え?それは、もちろんだよ?だってあたし一人だと食材を炭にしちゃうもん。」

「お前一人で、作ってくれ。」

「・・・へ?」

「確かに、手伝ってもらった料理は美味かった。だけど…躑躅らしさがねぇから、そんなに美味しくなかった。」

「な!あたしは朧さんに美味しいものを食べてもらいたいから、光ちゃんに手伝ってもらったの!朧さんに不味いものなんか食べてほしくないの!」

「それでも良いっつてんだろ!」

「……」

「それでもいい、お前の飯が食いたい。」

「……そういえばさ」

「何だ?」

「なんでそんなにあたしの料理にこだわるの?妖退治屋が作る料理はどれも美味しいのに…」

「……」

すると、朧さんは突然ぐいとあたしの腰を引き寄せた。距離が、近い…心音が聞こえちゃう…

「朧…さん…?」

「躑躅が好きだからに決まってんだろ。」

「……」

私の頬に、何か温かいものが伝った。何で、泣いてるの。私…

「俺は、お前がここに来た瞬間から、惚れていた。けど女の扱い何かこれっぽっちも知らん。だからてめぇと目を合わすと焦って愛おしく思えて、だけど口から出る言葉は上から目線で、申し訳なかった。」

「……」

「躑躅を守りたい、命が尽きるまで傍に居たいと願ったのはお前が襲われているときだった。躑躅の泣く顔を初めて見て、泣かせたくないと思った。……なぁ、躑躅。」

朧さんは、涙に濡れた頬に優しく触れ初めて笑った顔を見せた。

「こんな俺だが、傍に居てくれるか?」

「……そんなの、はいに決まってるでしょ?」

朧さんはぎゅっとあたしを抱きしめた。朧さんは大きいから胸にすっぽりと収まった。彼の心音が聞こえる。温かくて安心感がある。

「躑躅と、ずっと一緒にいきたいと思っていた。」

「あたしも。ねぇ、朧さん。」

「何だ?」

……その後、あたしはちゃんと一人で作った。一応光ちゃんには傍で見守ってもらった。あたしも納得が出来る仕上がりになり、朧さんのところに持っていくと驚いた顔をした。美味い美味いと食べてくれて嬉しかった。

 ◇

〈巳の刻 万葉の部屋にて〉

「東郷さんの墓参り?」

「はい。明日、行ってこようかと…」

「別に良いが、場所は大丈夫か?」

「それは大丈夫です。白銀がいますので。」

光はふわりと白銀を撫でた。もしかして、育ての親が東郷さんであるというのを知ったのか…?

「…そういえば、突然どうした?墓参りに行きたいなど。」

「それは…」

光は東郷さんの事を話し始めた。自分を育ててくれたことを。

「東郷さん、喜ぶだろうね。そうだ、墓にお供えする酒を持っていくか?」

「あ、良いですね。持っていきます。」

「朝に行くか?」

「そうですね、朝餉を食べ終わって支度が終わり次第。」

「分かった。声をかけてもらえれば酒を用意する。」

「ありがとうございます。…では私はもう寝ますね。万葉様も無理せずにお休みしてくださいね。」

「心配してくれてありがとう。あ、そうだ。蓬莱から預かっているものがあるんだ。」

「何ですか?」

儂は布にくるんだ懐古玉を渡した。光は驚いた表情をして見つめた後、儂を見た。

「あ、あの…」

「蓬莱が、光に持っていてほしいと。蓬莱もすごく心配していた。故、もう書状は送ってある。それと、それはお前の部屋にある鏡とは接触させないように。」

「…何か理由があるのですか?」

「え…っと…ま、まぁ玉が鏡にぶつかって割れたりしたら危険だろ?そういうことだ。」

「分かりました、気を付けます。」

「…じゃあ、お休み。光。」

「はい、お休みです。…万葉様、本当に…ありがとうございました。」

「…何、当たり前の事をしたまでだ。お前はここの仲間であり儂の、妻になる者だからな。」

「……」

彼女は、ふんわりと微笑んだ。懐古玉を抱きしめながら。…また、平穏で当たり前の日々を送れると思うと、安堵する。

                             〈続〉

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