9 それなりに楽しそうな あの頃の僕
マサトはしばらく呆然としていたものの、やがて、少しずつ冷静になり、頭が働き始める。
(今は、夜の十時過ぎか……)
本棚の時計を見る。
あすの朝にタイムリープするのだとしたら、今夜中に対策を立てなければなるまい。
(残り時間は少ないぞ。まず、何をしておくべきか)
とりあえず、中学校の卒業アルバムを開いてみる。クラスメイトの顔と名前を、覚え直そうとしたのだ。
三年B組。
クラスの個人写真、集合写真、思い出写真……。
当時の自分の写真も見たが、友達と、それなりに楽しそうに写っていた。
(何だ、結構、充実してたんじゃないか。別に、今さら、やり直さなくてもなあ)
ページをめくっていくと、体育祭の写真に目が止まる。
「――」
片想いしていた、クラスのマドンナ、ハナエさん。歯を見せてニカッと笑って、カメラ目線で立てた親指。結んだ黒髪、白いハチマキ、紺色のブルマー。
(ハナエさん、どうしてるかなあ。中学出たら、名門の女子校行って、それ以降は知らんしなあ)
中学在学中は、余り言葉を交わしたこともない。
(おっ、僕は紅白リレーで写ってるな)
短距離走には、少し自信があったのだ。もっとも、写真では後方のビリを走っているが。
(タイムリープしたら、この卒業アルバムの内容も、微妙に変わっちまうわけか)
中三の初夏の修学旅行のページを見つつ、そのことに気づく。民宿の前で撮った、クラス集合写真。マサトは、端の方で無難に写っていた。
(次は、中学の卒業文集でも読んでおくか)
時間がないので、仲の良かった友人数名と、ハナエと、あとは、中学校生活をバランス良く振り返っている「情報量の多い・コスパの良い」作文を幾つか読んだ。
【続く】
リレーの件は、作者の実話です(笑)。
紅白じゃなくて、学級対抗リレーでしたけど。
紅白リレー(色別対抗リレー)は、主に運動部の精鋭が出る、締めの花形種目でした。