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今の生活に不満はないのに タイムリープしろと君は言う  作者: KIZOOS
第一章 タイムリープ YES or NO【マサト45歳・西暦202X年】
6/67

6 ヒロインが出てこない人生

 手のひらサイズの女性は、間をあけずに返答した。マサトに、半端な期待を持たせないためかもしれない。

「済みません、それも不可能です。私どもが魔力で操作できるのは、主に時間だけ。タイムリープ開始までに本人の頭に蓄積された記憶は、時代を逆行しても消えませんし、消せません。そもそも、それではリープの意味がないですし」

「なぜですか」

「この世界にたった一人だけ、タイムリープ以前の記憶を持った者が、言わば『異物いぶつ』として新たな次元へと突入するからこそ、時空を後ろへ動かせるのです。何も変更がない状態では、時空は固まっているため、いかなる魔法でも戻すことは出来ません」

 マサトは少し、ひらめいて、

「……よく分からんけど、魚が一匹、水の中から跳ねて、川の流れを後ろへ戻るみたいなことかな。魚が水の外に出ない限り、川全体に変化は起こらない……」

 小さな女性は、うなずいてほほえむ。

「絵としては、イメージしやすい例えかもしれませんね」

 互いに、三秒ほど見つめ合う。出会ってから、初めて、この小さな女性に少しだけ共感できた気もした。


 が、だからといって、マサトの言い分は変わらない。

「でもね、それを踏まえても、なお、あなたがたのやり方は間違ってると言わざるを得ない。人生は一度きりで、時間は止まらない・戻らないからこそ、とうといんですよ。僕の人生は、アラサーの時に正社員になった瞬間がクライマックス。ここが名場面。そして、僕の人生にヒロインは登場しない。まあ、物語としては相当に地味だし、つまらないでしょうよ。だけどね、そんなつまらない物語でも、主人公は僕なんですよ。本人は、現実と折り合いを付けながら、自分なりに納得して生きてるんです。あなたのやってることは、それを茶化す行為ですよね」

「いや、茶化してはいないかと……」

「茶化してるじゃないか! 何がタイムリープだ!」

 こらえきれず、マサトは怒鳴っていた。


 一分弱の沈黙のあと、手のひらサイズの女性は、羽根を振って浮かび上がり、立ったマサトの目の高さで静止した。

「いずれにしましても、おわびすべき点は謝罪しましたし、御説明すべきこともお伝えしましたので、私はそろそろ失礼しますね」

 ここまで言った時、小さな女性の表情は変わり、あわれむような笑みを浮かべて、先を続ける。

「あと、一方的に言われっ放しなのはシャクですので、私からも、マサトさんに一言、物申ものもうしてもよろしいですかね?」

【続く】


次回、妖精の痛烈な反撃。

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