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今の生活に不満はないのに タイムリープしろと君は言う  作者: KIZOOS
第二章 タイムリープ初日【マサト15歳・西暦199X年4月某日】
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44 カプセルトイより女の子ッ・当たり前!

 我に返るように、マサトは謝罪する。

「……ごめん、しゃべり過ぎた」

 ケイコの口もとから、笑みは消えていたものの、表情に冷たさはない。

 ゆっくり、かぶりを振る。おかっぱ頭の髪が、シャシャッと揺れて、薄暗くなりかけた夕方の空気に、針のような残像を見せた。


「身近な大人の人で、そういう人がいたの?」

「まあ……うん、それに近いかな。本で読んだ内容とかもあるけど」

 マサトは肯定する。まさか、タイムリープの件を、匂わせるわけにもいくまい。

「男の子にも、いろいろあるんだね。――あたしも、いっぱいしゃべっちゃったし」

 ケイコがとりなす。

「いや……」

 マサトは下を向く。


 直後、カタンという音がしたので、振り返ると、ケイコが両腕で自転車を支え、足で、後輪のスタンドを横にしたところだった。

「そろそろ移動しよっか。ずっと、ここにいるのもね」

 確かに、そのとおりだった。スーパーの入り口付近である。結構、目立つ。

「そうだな。アイス食わなきゃ、だし。本来の目的、忘れちゃ駄目だよな」

 と、マサトは向かいの商店街を指差し、

「あの酒屋さんの前で、アイス売ってたと思うんだ」

「前?」

「アイスだけ、外で売ってるの」

 店名も覚えている。たしか「かねくら」だ。子供の頃には、母に連れられて、よく行った。

(中学の頃は、まだ、潰れてなかったと思うんだけどなあ)


 スーパーと商店街の間には、駐車場も兼ねた広めの道路があり、三十メートルは離れている。ここからでは、お店がよく見えないのだ。

 商店街の屋根にも、のきの辺りにヒラヒラした飾りが垂れ下がっており、目隠しになっている。


 二人で、道路を横切る。マサトの右隣で、ケイコが自転車を押して歩く。

 道路の中央に、植え込みとベンチがあり、そばには、「ガチャガチャ」が二段重ねでズラリと設置されている。小型の自販機だ。

 どれも、さび付いている。百円玉を挟んで、ハンドルを回すと、カプセルに入ったおもちゃが出てくる仕組みだ。


 ガチャガチャ自体は、タイムリープ前の「現代」にもあったが、すっかり大企業に乗っ取られ、やけに洗練されてしまった印象だった。

(このころのガチャガチャは、どこの会社が作ったのかも分からない、怪しげな商品であふれてて、楽しかったよなー)

 通り過ぎつつ、端っこの一つをちらりと見てみたら、ピストル型の腕時計があった。カッコいい。マサトは小さく、フッと笑う。

(まさに、ああいう奴だ。見本以外の商品も入っています、って奴。ピストル型時計を百円で買えるわけ、ないもんな。実際は、変な人形とかシールとかしか、出てこねえんだよな)

 ゆっくり見てみたい気もしたが、今は、それどころではない。横にいる女の子の方が、はるかに大事だ。「一回目」の青春時代には、手に入らなかった場面。

(ガチャガチャなんて、後で幾らでも見られるんだ!)


 二人で、道路の向こう側へ渡る。

 段差の手前で、それに沿って横移動する。商店街の、軒先である。

 左から、床屋、薬局、本屋。その隣が、目指す酒屋であった。

 見上げたら、木の看板があり、店名は、やはり「かねくら」であった。

 透明の自動ドア。店内の棚が見える。酒びんでびっしりだ。


 店先には、冷凍ショーケースが置いてある。ふたは透明。傾斜になっていて、奥が高い。前後にスライドさせて開閉する。

(ああ。懐かしいものばかりだな。こういう、アイスだけ外で売る方式も、僕が大人になる頃には、減ってたよな)

 というより、個人商店が減っていったのかもしれない。


「わあ、アイスキャンデーいっぱいだ。おいしそう」

 自転車を支えたまま、ケイコが上からのぞき込む。

 隣のマサトも、前かがみでケースの中を眺めながら、

「好きなの、一本どうぞ。ごちそうしますよ」

 この時代の相場は、五十円かそこらだったはずだ。高くても百円。

 ところが。

「ねえ、でもさ、さっきから気になってたんだけど、あの……ごめんね」

「えっ」

 急に謝られて、マサトは面食らう。

 膝を曲げた姿勢で、右のケイコを見る。すると、まゆ毛の両端を下げたケイコと視線が合う。

「水を差すみたいで悪いんだけど。うちの中学って、校則で、買い食い禁止じゃなかったっけ?」

【続く】


ピストル型の時計、欲しかったですねえ。当てたかった。

「遊べる時計・玉だってちゃんと出る・カッコいい」などという宣伝文句でね。あおる、あおる(笑)。

見本の写真では、たしか、銃の握りの所がデジタルウォッチになっててね。


自販機一台につき、一個ぐらいは、入ってたのかしら。

そうだとして、どこで作ってたんだろう。

地方の町工場? それとも中国製?


まあ、でも、いわゆる銀玉鉄砲に(これも、今の若者は御存じないでしょうな)、時計をくっつければいいんだから、技術的にはそんなに難しくもないんですかね。

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