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今の生活に不満はないのに タイムリープしろと君は言う  作者: KIZOOS
第二章 タイムリープ初日【マサト15歳・西暦199X年4月某日】
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39 未来から下着知識を持ち帰り

 取りつくろうというわけでもないが、言い足すマサトの声は、努めて陽気になっていた。少々わざとらしかったかもしれない。

「――更衣室って、遠いんだっけ? 毎回、移動するのもめんどくさそうだよね」


「うん。廊下の突き当たりなんだよね。クラスの子とかいるしさ」

 ケイコは、ブルマーの上部をつかみ、グイッと持ち上げ、シャツのすそを中へ押し込みながら答えた。

(だから、そういう行為を、男の目の前でやらんでくれよ……)

 マサトはソワソワする。

 自分は席に座っているため、ケイコの腰の辺りがちょうど視界に入るので、なおさら気まずい。


 いかにも「中年男」のスケベったらしい目線で、内心、自己嫌悪だが。

 十五歳で、まさに女子の第二次性徴が爆発している感じで、紺色のブルマーは、ケイコの大きなお尻ではち切れそうだ。


 ブルマーを勢いよく上げ過ぎて、ケイコの左の太ももの前側に、白い線がスッとはみ出る。中に履いた下着が見えてしまったのだ。いわゆる「はみパン」である。

「!」

 マサトが目をそらす。

「ひえっ」

 すぐ気づいたケイコは、慌てて、ブルマーの股ぐりに指を入れ、ゴムのふちを下へ引っ張って、それを隠す。

「――見た?」

 探るような目つき。意外と、ケイコのまつ毛も長い。

「……あっ、いや、かげになってたから……」

 マサトは、紳士的な模範解答で応じた。見てないとは言ってない。


 ケイコの表情は、警戒や恥じらいを含んではいたが、怒ってはいないようで(そもそも、今朝の件はともかく、今のはマサトは悪くない)、おかっぱ頭をカリカリかいて苦笑し、

「めんどくさいんだよね、これさ。パンツはみ出てないか、しょっちゅう確認しなきゃいけないし」


 マサトとしては、女の子が「パンツ」とか、そういうことを男に無防備に話さないでほしいところだ。

 ただ、ケイコの低い声で話されると、何だか独特な「男気」があり、妙にマッチするから不思議である。

 それに甘えるわけでもないが、つい、マサトも話に乗ってしまう。

「下着とブルマーって、形状が同じだもんね。同じ形の服を重ね着してるんだから、普通に考えても、そりゃズレるだろって、男でも思うよ」


 それを聞いたケイコは、唇からフッと息をもらして、明るく笑う。女子的には、言われてうれしいコメントだったのかもしれない。

 マサトも、「大人」だからこそ、これが言えたのだ。リアル中学生男子には、難しかろう。照れて黙ってしまうか、あるいは、しもネタっぽく茶化すのが、関の山だったに違いない。


「そうなのよ。不便なんだよねー。早く廃止してほしい」

 口をとがらせるケイコ。

 そこへ、マサトは、ふと、考えついたことを提案してみる。

「今すぐ廃止は難しいだろうから、下着の方を、細いやつに変えてみたら?」

「えっ、細いって?」

「……ごめんね、ちょっと、男から女の子には言いづらいんだけどさ。ビキニみたいなショーツ、あるじゃない」

 意味が分かったのか、ケイコの顔が少し赤くなり、

「ああ、でも、大人の女の人が履くやつだよね?」

「んー。学生用でも、売ってると思うんだけどね。もちろん、男の僕は詳しくないけど」

 ケイコと目を合わせっ放しだったので、マサトが視線を下げると、体育着のシャツ越しに、ケイコの胸のふくらみが見え、

(おっと)

 罪悪感で、ササッと腹の方へ目をそらす。

(その下は、もう、ブルマーだもんな。やっぱり、この時代の女子の体操服は、目のやり場に困るぜ……)

 体操服シャツはサイズ大きめ、厚い布地だ。

 ケイコの胸も、ふくらみの輪郭は崩れており、その辺一帯が全体的に盛り上がっている。

 それはそれで、刺激的な眺めだった。


 ケイコは、

「そうか。お母さんに聞いてみようかな」

「それから、色も、紺か黒にすればさ、はみ出しても目立たないんじゃない?」

「なるほど! 白いパンツだから目立つのか。ブルマーと同色にするのも手か」

 と、ケイコの声が小さくはずむ。名案だと思ってもらえたか。


 なお、これらは、タイムリープしてくる前に、「社会人」となってからのマサトが、女性向けのサイトで得た情報であった。

 具体的には、「ティーバックのショーツは、ズボンに形がひびかないための物」、「黒いズボンを履く時は、ショーツも黒にすれば透けない」という内容。

 それを、ブルマーの「はみパン」対策へと応用させてみたわけである。


 その時、廊下で誰かが走るような足音が響き、二人の意識もそちらへそれた。

 これを合図のようにして、

「じゃ、あたし、そろそろ練習行くわ」

「ん。僕も放送室行くか」

 マサトも立ち上がる。

 いつしか、三年B組に残っている者も、二人だけになっていた。


 ケイコが、くるりと背を向けて、自分の席へ戻り、カバンを取ってきた。

 マサトは、それを横目で追いつつ、教室の前のドアへゆっくり向かい、ケイコを待つ。

 ケイコは、

「今日は、走り込みが数本あんだよねえ。晴れてるからなー。暑くなりそう」

 てくてくと、マサトの右隣に寄って来ながら、小さく愚痴る。ケイコは陸上部である。

 ケイコのシャツ越しの左肩が、マサトの右腕辺りに軽く当たる。ケイコの方が、マサトよりもやや小柄なのだ。


 教室の明かりをパチパチと消してから、

「――なあ、よければ、帰りにアイスでも一緒に食わない?」

 ふと、マサトは誘っていた。

 もう少しケイコと話したいという気持ちと、「暑い・アイス」という連想が、この一言になったようだ。

【続く】


ちょっと「楽屋話」を書きますと。


当初案では、もう少し先の場面で、体育の授業前に、忘れ物を取りに来たハナエと、マサトが一対一でバッタリ会う予定でした。教室で。

(体育は二クラス合同。男女は、それぞれの教室へ別々に集合して着替えている。マサトは、ゆっくり着替えていた。)


で、ハナエの「はみパン」をマサトが指摘し、ついでに「紺色のビキニショーツを提案する」という流れだったのです。


実は、小説の執筆に先行して、既にさし絵まで描いていたんです。

もったいないので、ここに載っけちゃいます。幻の場面となりました。


挿絵(By みてみん)


ただ、学年一の美少女は、おしゃれに気を使うので、滅多に「はみパン」をしないと思われ。

ずっと、そこに違和感がありまして。


(これ、女性陣は怒り心頭かもしれないんですが。

クラスでトップの美少女ほどスキがなくて、その手のミスが少なかったという記憶は、多くの男性の共通体験ではないでしょうか?

女性にしてみれば、「いや、そもそも見るなよ!」という話でしかないでしょうけど。)


そうしたら、第37話でハナエが予定外の「退場」をしたため、じゃあ、「はみパン」場面も今話に全部くっつけちゃえ、と決めました。


ええと、ケイコさん、ごめんなさい。

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