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今の生活に不満はないのに タイムリープしろと君は言う  作者: KIZOOS
第二章 タイムリープ初日【マサト15歳・西暦199X年4月某日】
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31 若さあれば、笑い転げ

 続いて、マサトがマイクに顔を近づける。

 紙を、隣の高屋たかやから受け取る。

「……っ」

 既に、高屋は、ほほをふくらませ、早くも笑いをこらえている。


 一方のマサトは余裕だ。

(フッ)

 もし、タイムリープする前の「リアル十五歳」だったなら、間違いなく、マサトもつられて笑っていただろう。中学生とは、そういう年頃である。

 しかし、今のマサトの「中身」は中年男性である。この程度を真顔でやり切ることぐらいは、たやすい。


 さあ、マサトのアナウンス。

「……二つ目は、生徒会執行部からです」

 この瞬間、放送を聞いている全校の生徒、教師は、「ああっ、声が変わった!」と驚いているはずだ。

 それを想像すると、

(愉快だなあ)

 と思う。

 調子に乗って、

「ハア、ハア」

 わざと、荒い息をマイクに入れるマサト。「今、ギリギリ間に合いました」という演出であった。明らかに、ふざけている。

「ブッ!」

 隣に座る高屋が、こらえ切れずに吹き出した。

 高屋は、口を両手で押さえて、椅子に座ったまま、体をくの字に曲げて、「クククククッ」と、背中を震わせている。


 それを横目に、さすがのマサトもニヤついてしまったが、以後は真面目に、原稿を淡々と読み上げた。


「……来月、五月九日は生徒総会です。質疑をしたい人は、発言通告用紙がありますから、一階の生徒会室まで取りに来てください。――本日の連絡は以上です。特別教室の掃除を担当する人は、廊下を走らず、静かに移動しましょう」


 マイクをオフにして、CDをかける。

 これは、掃除中のBGMとなる。静かなクラシックが多い。今日の一曲目は、「二台のピアノのためのソナタ」だ。モーツァルトである。


 マイクが切れ、笑い声がれる心配がなくなると、高屋が、大笑いする余り、椅子から転がり落ちてしまった。

「あはははははは……!」


 マサトも、「わははは!」と、大声で笑う。もっとも、半分は、お付き合いで笑っていた。

 高屋は、完全にツボにハマったらしく、

「あはは! スーさん、ま、真顔……で、ふふふっ、荒い息、ふはっ、ひひひひひ、ははは!」

 笑いが止まらず、くねくねと、床をのたうち回る高屋。苦しそうだ。


(ああ、タイムリープ前、昔は、僕も一緒になってゲラゲラ笑い転げてたなあ。若いなあ……)

 高屋の純粋さが、まぶしかった。

 中身が「四十代」のマサトは、すっかり感性が衰えて、枯れてしまっている。良く言えば、落ち着いたのだ。

 もはや、この程度のことは、笑い転げるほどには、おかしくない。寂しいけれど。


 その笑いがおさまった頃に、放送室の電話がルルルルと鳴った。

「ほーら、来た来た」

 と、マサト。さすがに、これは予測できた。大人の世界では、まあ当たり前の展開だろう。

「ゲッ、佐倉さくら先生かな。ヤバいかな」

 高屋の表情に、不安の色が浮かぶ。とはいえ、笑い過ぎて、顔はだらしなくゆるんでいるが。


「まあ、大丈夫だろうさ。僕が出るよ。言い出しっぺは僕だし」

 マサトは冷静に答えて、壁掛けの電話の、受話器を取る。

 この電話が、たとえ佐倉先生からだったとしても。

 マサトにとって、相手は三十代の「若造」である。余り、恐れる必要はないだろう。

【続く】


小中学校時代、授業中に毎日騒いでいた作者は、典型的な悪ガキでした。

歴代の先生方も、あの手この手で私をこらしめましたね。


・放課後に呼び出し


・親に電話


・保護者会で名指し


なんてのはかわいい方で(そうか?)、


・クラスメイトに「あいつとは口をきくな」と命じる


・学級通信に載せる


・席の机を、黒板にくっつける


・「謝罪に来ない限り、お前のクラスではもう授業をしない」と宣言される

(クラスメイトから「早く謝って来てよ」と嫌味を言われてつらかった。うまい手だよね)


などなど。

それほど、当時の私がひどかったわけですが。


まあ、これだけネットが普及した現代では、どの指導法も一発アウトでしょうけどね。


でも、先生方も、子供から見くびられたら終わりだし、大人の意地で、懸命に戦略を立ててたのでしょう。

大人になった今は、その気持ちもよく分かるんですよね。

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