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今の生活に不満はないのに タイムリープしろと君は言う  作者: KIZOOS
第二章 タイムリープ初日【マサト15歳・西暦199X年4月某日】
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30 スライドボリューム こちら放送部

 もしも、申し出を高屋たかやが断って、「いや、やり方は分かるだろ? ここに二人いたら、俺がサボってることになるし、それは出来ないよ」などと返されたら、どうしよう。

 マサトは、そう心配していた。

 仮にそれを言われたならば、正論であるだけに、無理強むりじいするのも不自然である。


 だが、そんなヒヤヒヤとは裏腹に、高屋はイタズラっぽくニヤリとして、

「悪くないかもね。どうせ、もう、朝の会は始まっちゃってるし。掃除、始まった頃に、クラスにこっそり戻ればいいかー」

 と、軽い感じで同意してくれた。

「おお、ありがとう!」

 礼を言うマサトの声は、思わず大きくなっていた。

 高屋も、

「俺だって、さっき佐倉さくら先生から急に頼まれて、野村のむら先生にも言っておくって言ってたし、何も、急いで帰ることもないか。先生同士、事情は伝わってるだろうからね」

 野村とは、高屋のいるC組の担任である。男性の体育教師だ。


「もし、野村先生に怒られたら、僕が途中でトイレ寄ってて、遅れて、放送室着くのがギリギリ間に合わなかったとか言ってくれ」

 マサトが提案すると、高屋がフッと吹き出して、

「そんな……。大丈夫でしょ。でも、分かった、もし言われたらね」


 改めて、目の前の操作卓を見る。

 タイムリープ前の「一回目」の時には、ハイテクのすごい設備に見えたものだった。でも、あれから三十年、工場やテレビ局でバイトしたこともあり、もっと大規模な機械設備も見てきた。

 今、改めて見てみると、まあ公立中学校並みの平均的な設備だよなと思う。

 ただ、レトロな感じがいい。何しろ、カセットテープやレコードを入れる場所もあるのだ。


 操作卓は灰色で、ゆるやかな傾斜がついている。奥が高い。

 何本かの、縦の線みたいな物は、スライドボリュームだ。音量を調節する。

 手前には、マイクが一本、突き出ている。


「それで……。念のため確認すっけど、このボタン押すとスピーカーが入って、マイクがこれで……」

 一から全部質問したら、さすがに怪しまれるので、いかにも、「本当は知ってる」ていで、推測しながら尋ねていく。

「そうそう。このツマミが音量。アナウンスの時は三ぐらい。CDかける時は五ぐらいね」

 と、高屋が素直に教えてくれた。特に、何かを疑っている素振そぶりもなかった。


 今、中学校の各教室では、担任の先生が入り、朝の会をやっている。出欠確認などだ。十分間。

(歌も歌ってたっけ?)

 思い出せない。明日になれば分かるわけだが。


 その間、マサトは高屋から、放送室の機材の使い方を聞き出した。

 ついでに、放送部の当面の活動予定も確かめる。根掘り葉掘り質問するわけにもいかないので、「しばらくは、放課後に部室に行っても、あんまり、やることもないよなー?」などと、何げない雑談をよそおった。

 非効率ではあったものの、それでも、幾つもの情報を得られて有意義であった。


 やがて、掃除開始のチャイムが鳴った。

「……なあ、せっかくだから、これ、半分ずつ読まねえ?」

 ふと思いついて、マサトが聞いてみる。


 せっかく、二人でいるのだ。何か、やってみたい。

 多少は騒動にもなるだろうが、今のマサトになら、余裕で抑えられる気もする。

 ちょっとばかり、自分の力を試してみたくもなったのだ。


 もっとも、もし高屋が渋ったら、取り下げるつもりでいた。だが、高屋も乗ってきた。

「いいね、やるか」

「ちょうど、一個読み終わったタイミングで、僕が放送室到着へ、間に合ったことにしてさ」

「面白い! そんな漫画みたいな偶然、起こるわけないけどね。よく、そういうバカなこと思いつくね」

 と、高屋が笑った。

「バカなこと、って」

 マサトも吹き出す。


 まず、隣に座った高屋が、紙を持つ。

 この紙は、朝、放送室の鍵を借りに職員室へ行った時に、顧問の佐倉さくら先生から受け取るのだ。本日の連絡事項が書いてある。


 マイクをオンにして、高屋がアナウンスを始める。これは全校へ流れる。

「おはようございます。掃除の時間となりました。今日、職員室からの連絡事項は二つです。一つ目は、保健室より。――来週、二十六日に、一年生の内科検診があります。二、三年生も、翌日・翌々日に順次、実施します。診察しやすい、無地の白いシャツを用意しましょう。また、髪の長い女子は、髪をしっかり結ぶようにしてください」

【続く】


当初案では「健康診断」だったのですが、ネットで調べると、「内科検診」とか「耳鼻科検診」とか、科ごとに別の日にやっていて。


ああ、そういえばそうだったなあと、思い出したのでした。

四月、五月は、それこそ二週間おきぐらいに、何らかの検査があった気がします。

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