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今の生活に不満はないのに タイムリープしろと君は言う  作者: KIZOOS
第二章 タイムリープ初日【マサト15歳・西暦199X年4月某日】
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29 一階突き当たり 「放送中」ランプ

 放送室の場所は、不思議と、鮮明に覚えていた。

 思い出深いから、というのはある。さらには、分かりやすいというのもあろう。校舎の一階を、奥へ奥へと進んでいけばよいだけなのだ。

 途中、一度だけ外に出て、短い通路を渡り、別のむねに移る。全く迷わなかった。ほとんど、現役時代と変わらぬ足どりであった。


「ほうら、一発で着いたぜー」

 マサトは、自分の顔がみるみるほころぶのを自覚した。

 日当たりが悪く、薄暗い廊下で、「放送中」の四角い明かりがともっていた。ドアの上に設置された表示ランプである。


 ノックして、中に入る。

 左手に、もう一つのドア。上半分は透明のガラス張りで、中が見える。ガラス越しに、男子生徒一人と目が合う。C組の高屋たかやだ。


 ノブを回し、ドアを引いて、マサトが中へ入る。

 中にいた高屋が吹き出した。色白で短髪の、にこやかな男であった。

(ああ、こういうの、いかにも中学生っぽいなあ)

 ちょっとしたことで、簡単に笑ってしまうところが、である。懐かしい感覚。

 つられて、マサトも笑ってしまう。が、もちろん、すぐに謝る。

「ごめんなさい! 今日、僕が担当だったのに」

「スーさんが遅刻なんて、珍しい」

 高屋が、いつも通りのソフトな口調で答えた。

 いや、いつも通りとは言っても、マサトにとっては、高屋の声を聞くのは「三十年ぶり」になるのだが。高屋とも、中学の卒業式以来、全く会っていないのだ。

 なお、「スーさん」はマサトのあだ名である。名字「鈴坂すずさか」にちなんでいる。

 ほとんど、放送部内でしか使われてはいないけれど。


 ここは、四、五人入れば満員となる、細長い部屋だ。

 窓がないため、空気がよどんでいる。匂いも独特だ。

 周りの壁には、全体に、防音のため、小さな穴が、等間隔にあけられている。

 「有孔ゆうこうボード」と呼ばれるものだ。


「済みません。ちょっと寝坊と、家でもバタバタしてて」

 当たりさわりのない言いわけを、適当に並べると、

「いいよいいよ」

 高屋は首を振って、室内の機材を指差し、

「えっとね。CDは、もう入れてあるからね。冒頭あいさつは、今回は二件。紙はここね。じゃあ、俺は教室戻るね」

「えっ」

 マサトはあわてる。

(いや、いや。今、いなくなられたら困るって!)

 校内放送をする手順など、覚えているわけがない。何しろ、三十年も前のことなのだ。


 掃除が始まるチャイムが鳴ったら、まず、職員室から預かった原稿を読み上げる。全校生徒への連絡事項だ。次に、音楽を流す。

 これが大まかな流れであり、一応、それは覚えている。とはいえ、機材の細かな操作方法は、とっくに忘れた。

 今、放送室で一人にされたら、途方に暮れるしかない。

(高屋に、ここにいてもらうには――)


 その時、チャイムが鳴った。登校時刻を告げる本鈴ほんれいである。

 とっさに、マサトは知恵を働かせ、

「ちょっと、急いで来たから、まだ落ち着かないんだ。手順をミスるかもしれないから、掃除の時間が始まるまで、残ってほしいんだけど。駄目かな?」

【続く】


「朝の放送」の記憶は残っているのに、なぜか、「朝に校内の掃除をやってた」記憶が全くないんですよ、私。

情けないことに。


ネットで世間の現状を調べても、掃除は「放課後に」やってる学校ばかりで。

作者の母校も含めて(事務員さんのブログによると)。


でも、卒業文集を読んでいったら、何と、朝の掃除のことを書いてる作文を発見! いやー、助かりました。探せば、いるもんですねえ(笑)。

少なくとも、昔の我が母校は、朝清掃だったようです。


まあ別に、フィクションなんだから構うことはないんですが、やっぱり、すっきりはしますよね。

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