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今の生活に不満はないのに タイムリープしろと君は言う  作者: KIZOOS
第二章 タイムリープ初日【マサト15歳・西暦199X年4月某日】
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28 迎え入れ、送り出し 教室、放送室

 ケイコは、胸元の赤いスカーフを指先でササッと整えたあと、

「あと、それはそれとしてさ。さっき、佐倉さくら先生が探してたよ」


 少し離れたところから、別の男子生徒も話しかけてくる。

「そうそう。鈴坂すずさか、今日、放送担当じゃない?」

 マサトは、

(おっ、なんか懐かしい声。誰だっけ?)

 声のした方を振り返ったら、

(おお、田丸たまる!)

 少し天然パーマ状の髪。大きめの耳。

 タイムリープ前の「一回目」では、かなり仲良しだった。「その後」は別々の高校へ進学したが、年賀状のやり取りは数年続いたと記憶している。


「そうなんだよ。遅れちゃって」

 ケイコ、田丸の順で、

「じゃあ、早く放送室行きなよ!」

「チャイム鳴るぞ!」

 せかすような口ぶりに、周囲からも笑いがれる。

(……ああ、二人して、話題を変えようとしてくれてるんだな)

 心遣いに感謝しつつ、

「うん。カバン置かなきゃ。ええと、僕の席は……」

 この後に続けて、「どこだったっけ。動揺して、ど忘れしちゃった」と言おうとしたのだが、

「貸して、ほら!」

 何と、ケイコが、にゅっと右腕を差し出してきたので、マサトは、思わずカバンを手渡してしまう。

 紺色のセーラー服の袖口は、まだボタンが留められておらず、白と紺のしましま模様の布が、だらりと手首に垂れていた。


 マサトのカバンを持ったケイコは、小走りに、窓付近の、前から三番目の机まで行き、

「これ、横に掛けとくよ。いい?」

 と、振り向いてくる。

 あっけにとられながらも、

「あ、ああ。どうもありが――」

「いいから! さっさと行った行った!」

 じれったそうに、ケイコがさえぎる。

「んん。済まん!」

 叫び返して、マサトは走り、前のドアから教室を出た。


「こけるなよー!」

「走れ、鈴坂!」

「急げっ!」

「放送部、万歳ばんざい!」

 などと、クラスメイトのからかうような笑い声が、背中へ浴びせかけられる。

(そうか。僕って、中学時代は、割と、いじられキャラだったっけ?)


 いずれにしても、三年B組の教室では、幸い、マサトは善意に迎え入れられ、善意に送り出された形である。

 結果論だが、マサトの席の場所も、怪しまれずに無事に知ることができた。これは、ケイコに感謝しかない。


「あっ、そうか――」

 中学校の廊下を早歩きしながら、ふと、マサトは気づいた。

 タイムリープする前、妖精はマサトに対してこう言った。「青春時代への未練が、強烈な波動となって放出されていた」と。


 その正体は、もしかしたら。

 成長し、社会人となるにつれ、徐々に周囲から失われていった、こういう優しさ、暖かさなのかもしれない。

【続く】


今話は、作者として予想外のところへ着地しました。

最後の考察など、完全に、執筆時点のひらめきでした(もうけたぜ!・笑)。


また、マサトが自分の席を探す件に関しても、


・当てずっぽうで「ここだっけ?」とカバンを置いたら、クラスメイトが「違うだろ。動揺してんじゃねえよ、向こうだろ!」と教えてくれる


・教卓の上に席順表が置いてある


・三年生に進級したばかりで、出席番号順だった


・一目でマサトの机と分かる何かが、横に掛かっていた


の四案があったのですが、小説本文の形となりました。


ケイコが、当初案よりどんどん「いい人」になってしまうのは、マサトというより作者が、このキャラに甘えたい・癒やされたいからなんでしょうね。

何しろ、執筆前には、「よくも、のぞいてくれたなー」なんてセリフを言わせる予定だったんですよ。

この変わりよう(笑)。

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